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第48回 京田辺市内の全小中学校へのネットワーク導入



1999年3月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第48回 京田辺市内の全小中学校へのネットワーク導入

今回は、京都府京田辺市 [注1] の青少年野外活動センター [注2]
(以下センター)内にある情報教育推進室を訪ね、京田辺市教育委
員会の中島唯介(なかじま ゆうすけ)さん、およびインターネッ
ト関連機器の導入・保守に当たっておられる株式会社ジェプロ [注3]
の三輪吉和(みわ よしかず)さんからお話をお聞きしました。

なお、この情報教育推進室は、京田辺市の全小中学校(小学校9校、
中学校3校)に対してインターネット環境を提供する本拠地となっ
ているところです。


*小中学校のネットワーク化

私(以下Y):お久しぶりです [注4]。京田辺市では、’96年8
月というかなり早い時期に全小中学校へのLAN構築およびインター
ネット接続を完了されたようですので、まずはそれにいたる経緯な
どを教えていただけますか。

中島さん(以下N):京田辺市では、’91年から3年計画で毎年1
つの中学校に22台のコンピュータを導入する計画を進めていたので
すが、利用状況が思わしくないため、導入のあり方を再検討する必
要がありました。中学校の技術家庭科の教師をしていた私は、「ど
うすれば学校教育にコンピュータを生かせるのか」と考え始め、情
報収集のためにパソコン通信(NIFTY SERVE)の各フォーラムを読
むようになったのです。

 そして、世の中がパソコン通信よりもインターネットの方に流れ
ていることに気づき、インターネットの情報収集を始めました。情
報を集めれば集めるほど、パソコン通信よりもインターネットの方
が子供の教育に役立つと確信しました。自分が筆無精だから [注5]
分かるのですが、限られた人の参加する「ミニBBS」は発展性に乏
しく、入ってくる情報にも限りがあるのです。

 コンピュータ導入に関する具体的な構想「京田辺市の全小中学校
に複数のPCを置いて、自由にインターネットが利用できる環境を作
る」(以下、小中学校間ネットワーク)としては、かなり早い時期
に固まっていました。そこで、’93年に田辺町(当時)の教育委員
会へ「この構想の実現には、コンピュータの管理・運営などを担当
する専任者が必要」といった内容を含む計画案を提出したのです。
その後、’94年4月、私は田辺町教育委員会の情報教育専任として
着任しました。

 当時はまだ、国内のプロバイダとしてはAT&TとIIJとInfoWebぐら
いしかない時代で、専用線接続が基本でした。そのため、環境作り
にかかる費用は、いまとは一桁も二桁も違っていたんです。専用線、
ルーター、サーバーなどは、すべて自前で用意するのが基本でした
から……。その後、「この環境を整えるために、具体的に何をすれ
ばよいか」、「費用はどれくらいかかるのか」などの情報収集のた
め、何度か京都ソフトアプリケーション(以下KYSA)の孝本達哉さ
ん [注6] を訪ねて、技術面の指導を受けました。当時は孝本さん
から、「この構想には億単位の費用が必要だ」といわれましたね。

 また、そのころは、インターネット接続に関する情報を得るのも
容易ではありませんでした。「教育委員会の者ですが、うちの地域
の学校をインターネットに接続したいので、教えてください」と訪
ねて行った私に対して、ていねいに指導してくださった孝本さんに
は非常に感謝しています。

 その後、地元のネットワーク接続の業者さんと環境構築の話をす
るようになりました。それまでは、業者さんというのはコンピュー
タの専門家で、絶対的な存在だと思っていましたが、そうではなかっ
たのです。一般的な業者さんの知識、とくにインターネット接続に
関してはかなり限られたもので、私の持っている知識と彼らの情報
とでは話がうまくかみ合いませんでした。

というのも、私は当初、専用線でIP接続しないとインターネットは
使えないと思っていたのです。UUCP接続の存在も知っていましたが、
「UUCP接続ではWebブラウザ(当時はMosaic)が利用できないから、
IP接続は必須」と考えており、さらに「すべての小中学校にWeb/メー
ル・サーバーを置く必要がある」とも思っていました。後に、ダイ
ヤルアップ・ルーターの存在や、1つのWeb/メール・サーバーを各
学校から利用する方法などがあることを知りました。

 このようにインターネット接続に関する知識を学ぶ一方で、’95
年6月、田辺町では「小中学校間ネットワーク」に1,350万円の補
正予算がつくことになりました。そこで、同年の10〜12月にかけて、
機器およびネットワーク環境を構築する業者さんをコンペ方式で選
定したのです。同コンペでは、まず「教室から世界が見える」とい
うテーマを掲げて、各業者さんからシステム案と価格を記述した提
案書を提出してもらい、次に教育委員会でデモをしてもらいました。
「サーバー1台、クライアント2台を持ってきて、この場でインター
ネットに接続してデモしてください」という具合です。

Y:サーバーとクライアントさえ持ち込めば、インターネットに接
続できる環境が教育委員会にあったのですか。

三輪さん(以下M):教育委員会で準備されたのは、ISDN回線と
NTTのTAだけでした。このコンペに業者として参加したとき、ダイ
ヤルアップ・ルーターを持ち込んだ記憶がありますから。

N:提案書については採用する機器のカタログまですべて添付する
ように指示し、足りないものは事前に再提出をお願いしました。あ
とになって「失敗したな」と思ったのは、イーサネット・ケーブル
の仕様書を作るようにいわなかったことです。そのため、カテゴリ
 [注7] 3のケーブルが交じってしまいました(現在はすべてカテ
ゴリ5)。

 デモは私を含む7名で評価し、各ポイントについて厳しく点数化
した結果、三輪さんのジェプロ(富士通の機器を採用)がエントリ
した「富士通とジェプロのコンビ」が優勝しました。それが、’95
年12月のことです。

Y:コンペ方式でシステム納入業者さんを決めるのは、とてもよい
アイデアですね。


*構築されたシステムの特徴

Y:では、実際に構築されたシステムについて説明していただけま
すか。

M:現在、各学校や教育委員会が利用するWeb/メール・サーバーな
どの各種環境が置いてあるのは、センター内の情報教育推進室です。
ただし、システムを構築した当初(’96年)は、田辺町の中央公民
館に情報教育推進室がありました。センターに移動してきたのは、’
97年4月です。

 システムの展開は、2ステップに分かれていました。第1ステッ
プはジェプロに数台の機器を持ち込んで、利用タイプ別の動作テス
トを行いました。社内で行ったのはインターネットを利用して不具
合情報を入手したり、最新ドライバを入手するためです。第2ステッ
プは、導入機器全部を1か所に集めて、集中的にインストール兼動
作テストをしました。これは、中央図書館の2階を2週間お借りし
て行いました。

 そして、’96年3月に各学校への設置(ネットワーク工事)、4
月に専用線設置、5月に3つの中学校および教育委員会の計4か所
と情報教育推進室をダイヤルアップ・ルーターで接続し、8月にす
べての小中学校と教育委員会の接続を完了しました。

 外部との接続は、当初、InfoWeb(64Kbps)を利用していました。
後に128Kbpsに上がり、現在はWCN [注8] と384Kbpsで接続してい
ます。さらに、京都府総合教育センターへの線(1.5Mbps)も増え、
マルチホーム [注9] になる予定です。こちらは文部省の予算で、’
99年1月には接続できていると思います。

N:合い言葉は「教室から世界が見える」ですから、12の小中学校
と教育委員会すべてに校内LANを構築しています。これは、教室で
自由に使える環境を提供したかったからです。自由に使える場所に
PCがあれば、子供たちは「マルチメディア百科事典」として自ら活
用していきますよ。

 当初は、職員室に1台、図書館など共同で使える場所に2台とい
うように台数が限られていましたが、現在では全小中学校の95パー
セントの教室に対して、カテゴリ5のUTPが導入ずみです。なお、
学校の教室数によってハブのポート数を変えてあります。学級数の
多いところでは、24ポートのハブ2台をスタッカブル・ハブとして
使っています。

Y:それは理想的ですね。

N:これが理想的だと分かる人がなかなかいなくて、われわれは苦
労したんですよ。いま日本の小中学校にPCが導入される場合、通常、
コンピュータ室 [注10] に約50台がドーンと置かれるスタイルです。

 しかし、その部屋はあまり子供たちには利用されません。鍵のか
かる部屋に置かれていては、生徒は自由に使えないからです。たと
えば、夏休みにPCが入っても、秋は文化祭や運動会で先生が忙しい
ために開けず、冬休みが終わってやっと開けられたかと思うとすぐ
に春休みで、新学期は先生が忙しいのでやはり開けられず……で、
「開かずの間」となるケースが多いわけです。

 また、私が中学校で技術家庭科を教えていた経験 [注11] からす
ると、技術家庭科の授業以外でPCが使われることはほとんどありま
せん。もともと、「中学の授業でワープロやお絵描きの使い方を教
えるほどナンセンスなことはない」と思っています。私が、技術家
庭科でPCの授業を行っていたときは、LOGOという教育用プログラミ
ング言語の学習によって論理思考を教えていました。

Y:確かにそうですね。

N:小中学校間ネットワークには、ほかにも、

 (1)各学校にサーバーを設置しない
 (2)クライアントにはPC/AT互換機を利用
 (3)ノートPCと高輝度プロジェクタ、ネットワーク工具を準備
 (4)厳密な保守契約システム

といった特徴があります。

 まず、(1)についてですが、各学校にはWeb/メール・サーバーを
設置しませんでした。これは、同時利用するPCが少ないことや、ネッ
トワーク管理を経験していない現場の教員が「通常の仕事+α」と
して慣れないサーバーの維持管理をするのは無理だと判断したから
です。中央で集中管理した方が、はるかに効率がよいのです。今後、
各学校の管理する台数が増えた場合には、Webサーバーとキャッシュ・
サーバーの設置を検討しますが、メール・サーバーについては一貫
して集中管理を続ける予定です。

M:(2)については、今後、各学校にWebサーバーを置く必要が出た
際に、現在クライアントとして使っているPC/AT互換機にPC UNIXを
入れて、サーバーに仕立てるためです。クライアントの方はより高
性能なマシンを購入する必要がありますが、PC UNIXを入れるサー
バー側は現在クライアントとして使っている程度のスペックで十分
ですからね。

 (3)については、こちらで貸し出し用のノートPCと高輝度プロジェ
クタ、無線LANセット(通称「お出かけセット」)を用意しておき、
運動会などのハブのない場所からもネットワーク化された環境が使
えるように工夫しています。

N:これらの備品は、各学校に1台ずつ置いておくよりも、必要な
ときに数台まとめて貸し出せる方が有効に活用できます。今回、各
学校に置いているPCをはじめとする機器も、すべて教育委員会の備
品で貸与という形になっています。

 (4)については、三輪さんの会社に対して保守契約、SI(システ
ム・インテグレータ)契約を結んでいます。ここまできっちりとやっ
ている教育委員会は、なかなかないと思いますよ。大学や企業では
当たり前のことなんですけどね。

Y:小中学校では、「現場の先生の頑張りをあてにする」ケースが
多いようですね。

N:自分が現場の先生をしていて、「教師が自分の仕事以外に使え
る時間には限度がある」と分かっていますからね。たとえば、
「100校プロジェクト [注12]」のときは、好きな先生がいる学校が
立候補しても、あの状態(接続が完了しない学校があったり、活用
されていなかったり)のところもありましたから。やりたい先生の
いない学校で、できるはずがないのです。

 もっとも、京田辺市の場合(12校)でも、ホームページの作成が
完了していない学校が3校あります。各学校のやり方に完全に任せ
ていて、「強制しない」という方針なので……。

M:電子メールのアカウントは、小中学校の全教職員に発行してい
ますが、ほぼ毎日使っている先生の数は1つの学校に片手で数えら
れるぐらいですね。ただ、最近になって、先生方が、「うちの学校
ではモデム経由でピポパピポと電話をかけなくてもインターネット
が利用できるけど、これってすごかったの?」と思うケースが増え
てきているようです。

 京田辺市の場合は完全に1対1でルーティングしていますから、
それぞれのルーターは無通信状態になったら接続を切ります。ただ、
各クライアントは接続しているつもりですから、利用者はいつでも
メールの送受信やネット・サーフィンができ、専用線感覚で使用で
きます。実際は、トラフィック監視による自動切断が有効になって
いますから、メールを書いている最中や未使用時は電話代がかかり
ません。現在、1番多く使っている学校で、月に70時間程度です。
この回線の費用は3分間7円ですから、月に1万円程度なんですよ。

 また、こちらからはリモートでメンテナンスできるようにしてい
るので、どうしてもpingが通らないときなど、連絡せずに車で出か
けて行くと、「調子が悪いから連絡しようと思っていたんですが、
なぜ分かったんですか?」とびっくりされます。

 さらに、各学校でどのくらい使われているかはこちらにログが残
りますし、MRTG [注13] でも一目瞭然なのですが、当初、現場の先
生方はそんなことができるとは思っていないようでした。最近では、
そのあたりのことも分かってこられたようです。使っていないのに
「使っていますよ」と答えても、すぐにばれてしまうことを……
(笑)。


*学校向けインターネット・サーバーBoxQun

M:センターでは、インターネット・サーバーBoxQun(ボックス君)
に10台のノートPCを接続して研修で活用しています。また、大津市
立平野小学校でも、校内PC(約50台)のインターネット・サーバー
として利用されています。

Y:以前、「Cobalt Qube [注14] と機能的にはよく似ているが、
ファイアウォールの内部と外部を分離してセキュリティ面を強化し
たもの」とお聞きしたものですね。

M:はい。BoxQunは、ジェプロが開発した学校向けインターネット・
サーバーです。ファイアウォールとして利用できるように、また安
く提供できるようにPC UNIX(FreeBSD 2.2.8R)を利用しています。
これに、あらかじめ、Apache、Squid [注15]、sendmail、qpopper/
YATserver、poppass、NAT、IP Filter、Samba、Netatalk、ISC版
DHCP、fmlが入っており、イーサネット・カードを2枚差しにした
マルチホーム・マシンです。ですから、1台目をファイアウォール
役にして、2台目をファイアウォールの内側に設置するという使い
方もできます。

 BoxQunと似たCobalt Qubeはファイアウォールの内側、あるいは
外側で使うかのどちらかに適しており、FreeGate 1000 [注16] は
大学などの部門サーバーとして適しています。Box Qunはその中間
的な存在として、小中学校に1台置けばよいように工夫したもので
す。名前の由来はQuickening(簡単に)からきており、実際の発売
は’99年3月を目標にしています。

 これを作るきっかけになったのは、長年学校のネットワーク構築
を担当してきて、「現場の先生方に便利なものを提供したい」とい
う気持ちからでした。既存の市販サーバーは高コストですし、管理
できる教員が不足しています。その点、BoxQunではすべてWebベー
スの日常管理機能が提供されており、中身がUNIXであるため、リモー
ト・メンテナンスも可能です。

Y:OSがPC UNIX(FreeBSD)であること、また学校利用を十分に考
慮したWebベースでの管理という点がとくによいですね。広く普及
することを、応援しています。


*小中学校のインターネット環境を点から線へ、線から面へ

N:京田辺市の場合、ここまでの環境は作ったものの、現場の小中
学校の情報教育はまだまだこれからという状態です。ほかの市町村
と同様、技術家庭科の多くの先生方は「PC-9801で一太郎の使い方
を教えるのが情報教育 [注17]」と思っています。

M:われわれが「学校や会社でインターネットが利用できる」といっ
た場合、内部でネットワークが構築されていて、すべてのPCからイ
ンターネットが利用できることでしょう。組織において「インター
ネットが利用できる」という意味は、ネットワーク化された環境が
あることが前提になりますよね。その部分が理解できない先生方が、
まだまだ大多数なのです。

N:インターネットが普及したことにより、「自宅にある1台のPC
からプロバイダにPPP接続してインターネットを利用する」ことが
「インターネットを利用する」ことと思い込み、この費用と学校に
おけるインターネット接続費用を同じレベルで考えている自称「イ
ンターネット知ってます人間」が増加しています。そういう人は、
「専用線を利用して、校内LANからインタ─ネットを使う」という
スタイルをまったく理解せず、いくら説明しても「そんなにお金が
かかるはずがない」と分かってくれません。これには、一番苦労し
ましたね。

M:実際、複数のPCから同時にインターネットが利用できる環境が
必要だと認識している学校は、まだまだ少数です。『UNIX USER』
の読者の子供たちが、小中学校に行ったときのことを考えてほしい
のです。そのとき、先生からどのような情報教育が行われるかを考
えると、黙っていられないと思います。

N:今後、本当の意味での「インターネットが利用できる環境」を
作る学校にとって、われわれが構築したシステムは参考になるはず
です。

M:最近、「校内LANを構築するためには、どのようにケーブルを
ひくのか」、「ルーターはどのように設定するのか」などを、編者
の1人として本にまとめました [注18] 。工具の使い方から部品の
種類まで、写真とイラストで紹介しています。この本を書き始めて、
改めてこういう本がいままで存在しなかったことに気がつきました。

N:いま、全国の小中学校では、100校プロジェクトに参加してき
たような先生方が、周りの先生方を巻き込んで「点」を「線」にし
ようと頑張っています。その「線」が「面」になることで、初めて
多くの子供たちによい環境が提供できるようになるはずです。全国
には小中高、養護特別学校を合わせて約4万もの学校があります。
まだまだこれからですね。

Y:なるほど。今日は興味深い話を、どうもありがとうございまし
た。


[注1]  京田辺市

京都府の南部に位置する京田辺市は、’97年4月に京都府綴喜郡田
辺町から市制に移行した。同市の人口は約5万3000人で、同志社大
学の田辺キャンパスもある。京田辺市教育委員会のホームページは、
http://www.tanabe-be.tanabe.kyoto.jp/ である。


[注2]  青少年野外活動センター

専用線を持つ公的な宿泊施設であるため、各種セミナーや合宿には
最適な場所である。市外に住む家族、団体も利用できるが、青少年
のための教育施設なので、団体に19歳以下の青少年が含まれている
必要がある。住所は、京田辺市大住竜王谷9-1。


[注3]  株式会社ジェプロ

ジェプロ(JEPRO)は、Japan Education system PROductsの略であ
る。ネットワークを教育に活用するソフトウェアを開発している会
社。


[注4]  お久しぶり

筆者は、センターで実施された『東海スクールネット−先生と生徒
のための合宿』(’98年8月25〜27日)に講師として参加したとき、
中島さんにお会いしている。


[注5]  自分が筆無精だから

中島さんによると、UNIX技術者の方々を見ていて一番感心したのが、
「素早くメールの返事を書かれる方が多いこと」だそうだ。メーリ
ング・リストなどで、こちらが読んでいる間に、しっかりした返事
を返されている人が多いらしく、「これだけの時間で、よく文章を
理解して、自分の意見を書いて送るなあ」と、いつも驚いているそ
うだ。


[注6]  孝本達哉さん

ルート訪問記の第2回(’95年3月号)の取材では、KYSAの孝本さ
んのところを訪問している。そのとき、「インターネットへの接続
には莫大な費用がかかるし、自力で接続しようとすると技術力も必
要だ。いま、多くの担当者が、『インターネットは、それだけの費
用をかける価値のあるものだ』ということを上司に分かってもらう
ために苦労している」とお聞きしたが、その直後、インターネット
が大ブレイクした。


[注7]  カテゴリ

ネットワーク関連で使われる場合は、より対線(UTP:Unshielded
Twisted-Pair wire)の種類を表す。品質の低い方から順に、カテ
ゴリ1〜5までの5種類あり、カテゴリ3は16MHz、カテゴリ4は
20MHz、カテゴリ5は100MHzの帯域幅を保証、つまり伝送特性を満
たすことが条件である。このあたりについては、『100 BASE
Ethernetの理論と実装』(Robert Breyer/Sean Riley,イデアコラ
ボレーションズ/森島 晃年,アスキー出版局)で、大変詳しく解説
されている。


[注8]  WCN

World Computer Networkの略。大阪メディアポート(OMP)の専用
線の名称。WCNは、OMPが関西全域に網羅した2万キロを超える光ファ
イバ網を活用している。また、NSPIXP-3(WIDEプロジェクトが行っ
ているインターネット相互接続点)が設置されている大阪局を中心
とした2階層スター型ネットワークによるシンプルな構成なので、
ハイ・スループットで利用可能。


[注9]  マルチホーム

上流サイトを複数持つこと。マルチホームによって、1つの上流サ
イトにトラブルが発生しても、残りのサイトを利用してインターネッ
トへの接続性が確保できる。また、上流サイトどうしの接続関係を
調査することで、目的のサイトへ最も近い上流サイトを選択して通
信することが可能。


[注10]  コンピュータ室

このような部屋を作るには、部屋の工事費で2,000万円前後、エア
コン関係で2,000万円前後、そしてPCが1,500万円前後かかり、合計
すると約4,000万円必要となる。


[注11]  教えていた経験

中島さんは、現在、教育委員会に所属しており、教育委員会と教職
員との関係は以下のとおりである。公立の小中学校の設備や運営は、
市町村の教育委員会に管轄されている。一方、教職員は都道府県単
位で雇われている(政令指定都市の場合には市単位でも雇われる)。
そのため、教職員の指導は都道府県の教育委員会であり、各学校の
事務やその学校の設備などすべてを管轄するのは府の教育委員会の
下にある地方教育局のさらに下の各市町村教育委員会となる。すな
わち、教職員は自分が雇われている組織以外で働く、いわゆる派遣
社員といえる。


[注12]  100校プロジェクト

通産省と文部省が協力して全国111の学校などに必要な設備を置き、
インターネットを学校教育に活用しようという試み。’95年春に2
年間の予定でスタートし、さまざまな成果をあげて’97年終了した。


[注13]  MRTG 

Multi Router Traffic Grapherの略。監視対象のルーターに対して
SNMP(Simple Network Management Protocol)でポーリングし、ト
ラフィックの推移をグラフィカルなWebページとして生成するフリー・
ソフトウェア。ほとんどのUNIXとWindows NTで動作し、Perlを使っ
ているためにカスタマイズが容易である。なお、同ソフトウェアは、
GNU General Public Licenseに基づいて配布されている。


[注14]  Cobalt Qube

Cobalt Networksが発売しているオールインワン・ネットワーク・
サーバー。’98年11月号の『日経インターネットテクノロジー』で、
「ブラウザで運用・管理ができる小さなLinuxネットワーク・サー
バー」というタイトルで紹介されている。ユーザーズ・グループの
ページは、 http://cobaltqube.org/ 。


[注15]  Squid

WWW Proxy(代理)サーバーの定番ソフトウェア。Proxyサーバーと
は、一般的に「クライアントからの要求を受け付け、実際にサービ
スを提供しているサーバーにその要求を出し、結果をクライアント
に戻す」という仲介的な役割を果たす。

Proxyサーバーの中で、URLによるアクセス要求を受け付け、HTTP、
FTP、SSLといった各種プロトコルを利用してインターネット上のサー
バーから情報を中継してくれるものをWWW Proxyサーバーと呼ぶ。
BoxQunではSquidを、Proxy+キャッシュ+フィルタリングに使用し
ている。ちなみに、Squidとは「ヤリイカ」という意味。


[注16]  FreeGate 1000

FreeGateが発売しているオールインワン・ネットワーク・サーバー。
ネーム・サーバー、IPルーターなどの基本機能と、Web/メール/
FTPサーバーなどのアプリケーション、さらにファイアウォール、
VPNなどのセキュリティ機能をコンパクトな筐体にパッケージング
している。日本では、ネットワンシステムズが日本語版を出荷。


[注17]  一太郎の使い方を教えるのが情報教育

筆者は、中学3年生の技術家庭科問題集の「それぞれのキーはどの
ような意味があるか?」という設問に対して、「ESCキーは作業を中
断するキーである」という、驚くべき模範解答を見たことがある。


[注18]  本にまとめました

三輪さんたちがまとめられた書籍については、

http://www.nes-k.gr.jp/manual/index.html

参照。主に、校内LAN工事の具体的な説明、ケーブルの種類、サー
バーやルーターの設定の解説、工具の使い方から部品の種類までを
写真とイラストで紹介している。


以上



(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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