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第29回 キーワードは「お金と人と情報」



1997年6月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第29回 キーワードは「お金と人と情報」

今回は、千葉大学総合情報処理センター [注1] の戸田洋三(とだ 
ようぞう)さんを訪ね、千葉大学の学内ネットワークや地域ネット
ワークの情報交換の活動などについてお聞きしました。


*学内ネットワークは3種類の相互接続

私(以下Y):こんにちは。今日はよろしくお願いします。

戸田(以下T):こちらこそ。千葉大学の情報処理センターは「研
究開発」、「情報処理教育」、「ネットワーク」、「業務」という
4つの部門に分かれて仕事を分担しており、私は「ネットワーク」
部門に所属しています。

ですから、私自身が具体的にどこかのマシンを管理しているという
わけではなく、千葉大学のネットワーク運営にかかわっています。
そのようなところに取材に来るということは、「ルート訪問」のルー
トというのは、広い意味でのシステム管理関係者を指している 
[注2] のですね。

Y:本連載のルートとは非常に広い意味でのシステム管理者を指し
ており、毎回相手によって聞くことが変わります:-)。 今回のよう
にネットワークの運営を担当されているルートさんの場合は、運営
法などを聞かせていただくことになりますね。

T:なるほど。では、まず千葉大学のネットワークについてお話し
します。学内は、

 ・複合ネットワーク
 ・ATM [注3] ネットワーク
 ・事務管理ネットワーク

の3種類が相互接続して構成されています。

 「複合ネットワーク」は伝送速度100MbpsのFDDIネットワークで
あり、ここにルーターを介して部局LANが接続します。現段階では、
学内のほとんどの部局LANが複合ネットワークにつながっている状
況です。このほかに学内3キャンパス(西千葉、亥鼻、松戸)に設
置されているテレビ会議設備、内線電話も複合ネットワークを利用
しています。

 「ATMネットワーク」は、もともと電話の効率化・高速化のため
に考えられたATMを利用したネットワークであり、本学では伝送速
度155Mbpsで通信しています。 ’97年3月に設置され、それ以降に
新設された部局LANはたいていこのネットワークに接続されていま
す。

 「事務管理ネットワーク」は事務系の通信に利用するネットワー
クなので、研究用とは別系統に構築され、各キャンパス(西千葉、
亥鼻、松戸、柏)を結びながらATMネットワークとも接続していま
す。

 対外接続は、現在、複合ネットワーク経由になっており、TRAIN
[注4](東京地域アカデミックネットワーク)とSINET [注5](学
術情報ネットワーク)という2つのネットワーク組織に加入してい
ます。[新規注]


==========
[新規注]  TRAIN

TRAIN は 1999年3月いっぱいで解散しました。接続組織の多くは 
SINET への移行を行なったようですが、OCN や ODN, IIJ など商用
プロバイダに移行した組織もあります。(1999.8.9 戸田洋三)
==========


海外を含めてほとんどはSINETを通りますが、TRAIN経由での
み接続している組織(たとえば東京都立大学、東京商船大学など)
との通信は、TRAIN回線を通ることになります。また、本学ではす
べてIPに移行したので、現在はN-1ネットワーク [注6] は利用し
ていません。N-1を廃止しようというのは、全国的な流れのようで
す。




 ネットワークの管理面において、情報処理センターでは対外接続
と学内幹線部分しか行っていません。各研究室というか、部局(学
部あるいは学科など)単位で幹線ネットワークへの口が用意されて
いるので、ここが責任分界点になっています。「部局LANは自分で
きちんと管理してね。それを幹線に接続すると、学内外と通信でき
るようになりますよ」というスタンスでやっています。もちろん、
管理者不足という状況があるので、適宜お手伝いはしています。

 余裕がないのでこのような方針になっていますが、お金と人が豊
富にあれば、完全に末端まで面倒を見ることもできるし、回線状況
の24時間監視体制や講習会の開催など、さまざまなことができるで
しょう。現在は、部局ごとのシステム管理者との情報交換の機会と
して、意思疏通を目的とした会を定期的に持っています。

Y:学内のシステム管理者どうしが顔見知りになっておくためにも、
そのような機会は必要ですね。


*対外接続はTRAINとSINETに接続

T:対外接続に関して補足すると、千葉大学はTRAINのリモートNOC
[注7] になっており、192Kbps(’96年3月現在)で東京大学大型
計算機センターに接続しています。[新規注]

==========
[新規注]  対外接続

千葉大学では TRAIN 解散に先立つ1998年4月に TRAIN への接続を
廃止し、OCN への接続を行ないました(standard, 1.5Mbps).  
(1999.8.9 戸田洋三)
==========

 さらに、SINETのノード校にもなっているため、16の組織が千葉
大学経由でSINETに接続しています。SINETのノードがここにあると
いうことで、われわれは何も回線を借りないで接続できるのでラッ
キーです。また、本学のすぐ隣には東京大学生産技術研究所千葉実
験所があり、この中に学術情報センター [注8] 千葉分館がありま
す。

 いままではイーサネットを使ってSINETと接続していましたが、
SINETが加入組織に対してATMのインタフェースを提供する新しい構
成を導入したので、 ’97年3月につなぎ替え作業を実施しました。
1日目の試験接続では調子がよかったのに、2日目に本格的に設定
を変更しようという段階になると、なぜか通信ができなくなってし
まいました。そこで、取りあえず既存のイーサネットをFDDIに置き
換えただけの状態にして、ATM接続は後日再挑戦することになりま
した。

 SINETに関しては、知りたい情報がなかなか出てこないという問
題点があり、中の構成がよく分からないので、もっと情報をオープ
ンにしてほしいと思っています。「情報を公開してほしい」とだけ
いっても、われわれがどういう情報を必要としているか分からない
かもしれないので、「必要な情報はこれだ」という具体的な内容を
伝えようと思っています。まず知りたいのは、SINETの千葉大学ノー
ドに接続している組織の具体的な名前ですね。16組織が接続してい
るそうなのですが、ノード名一覧が公開されていないのでよく分か
らないのです。

 さらに、SINET内部の論理的・物理的構造についても、もっと公
開してほしいと思います。国内は通信できるのに海外とは通信でき
ないという状態になったり、通信できるサイトと通信できないサイ
トがあったりして、「何だろう?」と思っていたら、原因はSINET
内部の経路情報が乱れていたためだったということがありました。
もっと内部事情が見えていれば、よけいな気苦労をしないですむこ
とが多いような気がします(もっとも、最近はトラブル続きでかな
り慣れてしまいましたが)。

Y:SINETから必要な情報が公開されることを願わずにはいられま
せんね。[新規注]

==========
[新規注]  SINETからの情報の公開

最近は http://www.sinet.ad.jp/  があります。(1999.8.9 戸田洋三)
==========


Y:戸田さんのそのほかのご活動を教えてください。

T:学内ネットワークの管理という本業に加えて、MBone [注9] 
の活動やCERT [注10] のドキュメントの一部を勝手に翻訳したりし
ています。このMBoneとは主に動画や音声を使った会議システムに
使われるマルチキャスト・バックボーンで、CERTはコンピュータ緊
急対応センターのことで、JPCERT [注11] という日本の組織も存在
します。


*「地域ネットワーク」の試みについて

Y:千葉の「地域ネットワーク」にもかかわっていらっしゃるとの
ことですので、そのあたりについて教えていただけますか。

T:千葉県内には地域ネットワーク関係の活動がいくつかあるので
すが、私がかかわっている範囲では「千葉地域インターネット連絡
会 [注12] 」という名前の連絡会があり、これは「物理的な接続ま
ではお手伝いできないが、情報交換する機会は提供しましょう」と
いうスタンスで運営されています。

 もともと、TRAIN関連でネットワーク接続している団体が集まっ
ていたのですが、「学内ネットと地域ネットの関係が混ざってしまっ
たので、2つをはっきり分離して分かりやすくしたつもり」なので
す。とくに「千葉地域インターネット連絡会」の方は、100校プロ
ジェクト [注13] の関係もあって小・中学校などから参加する場合、
フォーマルな組織があった方が出張の理由を説明しやすいというこ
とで目に見える組織としました。

 100校プロジェクトに参加した学校の接続先としては、全国11の
地域ネットワーク機関が使われています。プロジェクトの参加校は、
それぞれ地域ネットワークに参加・接続しており、この中でTRAIN
に接続する組織は29校、そのうちの4組織が千葉大学にあるNOCに
接続されています。

Y:なるほど。100校プロジェクトの各校の接続形態は、どのよう
な感じなのでしょうか。

T:接続形態には2種類あり、Aグループが64Kbpsの高速デジタル
専用線での接続、Bグループが3.4KHzアナログ専用線に28.8Kbpsの
モデム接続です。接続装置としては専用のルーターを用意し、各学
校にはサーバー用PC UNIXまたはワークステーションとクライアン
ト用PCがそれぞれ1台ずつ導入されました。

 初等教育でのインターネット利用に関しては、千葉大学でも教育
学部の方で力を入れており、その1つがインターネットの教育利用、
学校教育全般について情報交換を行っていて「南総里見八犬伝 [注14]」
が名前の由来となっている「八犬伝@発見」プロジェクト [注15] 
です。

  そのほかに「千葉地域インターネット連絡会」では、千葉県特殊
教育センターによる院内学級でのパソコン通信の活用についての試
みが紹介されるなど、地域ネットワークの技術情報の交換と千葉地
域の相互接続の現状に関する情報が交換されています。

Y:学術ネットワークに接続したい場合は、商用プロバイダとは違っ
て、ある程度の技術力を身につける必要がありますからね。

T:しかし、学術ネットワークであっても、インターネットへの接
続環境を構築するために必要なお金をポーンと出すことで、技術力
がなくても接続できるというのが理想ではないでしょうか。現状と
しては学術ネットワーク、たとえばSINETは国の資金でネットワー
クを作っており、商用プロバイダとは違った運用がなされています。

 地域ネットなど、昔から行われているボランティア的なネットワー
クの接続形態においては、基本的に自己救済が原則であり、文句ば
かりいって自分で苦労しないのは論外です。また、学術ネットワー
クには「研究・教育にしか使ってはいけない」という制約があり、
商売をするのは当然ダメですし、日常の無駄話メールも正確にいえ
ば利用目的に反していることになります。それだったら、お金を払っ
て自由に利用できる商用プロバイダの方がよいということにもなっ
てしまいます。ただ、「そのような予算が認められるのか?」とい
う問題はありますね。

 SINETの場合、商用プロバイダとの接続がいつまでも細いままと
いうのを見ても、利用者(接続機関)の希望がうまく伝わっている
とは思えないし、また現状の組織規模で全国一様に接続の面倒を見
るのはちょっと無理があるのではないかという気がします。

Y:学術ネットワークを利用している教育関係機関の方が、「大手
商用プロバイダ [注16] への直結の線も欲しい」といわれているの
を耳にしたことがあります。

T:商用プロバイダ接続ならば、一応接続したい人がそれ相応のお
金を払う形で運用されていますから、受益者負担ということですっ
きりしています。

 大学には情報処理センターのような接続を担当できる機関があり
ますが、小・中・高校にはそのような機関はないので、そのあたり
を顧客にするような商売「初等教育組織ネットワーク・サポート会
社」の需要は高いのではないでしょうか。ただ、これはたいして儲
かりそうにないし、そもそもそういうものに当てる予算は認めても
らえないという話を聞きます。

 地域の学術系のネットワークに貢献するものとして、たとえば千
葉県柏市には「柏インターネットユニオン [注17]」という、柏市
を中心とした地域の小・中・高校、図書館などの公共性の高い組織
のLANを相互接続してインターネット・アクセスを可能にする非営
利団体ができています。そもそもは、この団体の母体となる麗澤大
学で、内部組織をインターネットに接続したいが学術ネットでは
(利用目的などから)問題になるという話が出てきました。そこで、
自組織の接続という目的に付加価値を付けるため、ある程度の赤字
を覚悟して地域貢献を兼ねたプロバイダ・サービスを始めたそうで
す。

 一般的に、何事もお金と人がなければ始まらなくて、技術はあと
からついてくるものです。たとえば、IX(Internet eXchange [注18])
が商売になるならば、NSPIXP [注19] のほかにも、もっといろいろ
出てくるでしょう。地域ネットワークごとにIXを置くという運用も
できるかもしれません。まあ、日本のように狭いところで、そんな
にIXを作ってもしょうがないような気もしますが。[新規注]

==========
[新規注]  IX(Internet eXchange)

最近は商用IXとして JPIX とか MEX とかがありますね。
また地域IXに関連して ix-talk というメイリングリストがあるので
興味のある人は参加してみるとよろしかろう。(1999.8.9 戸田洋三)
==========


Y:「儲かるところには資本が投下され、組織も変わる」というこ
とですね。教育におけるインターネットの価値が認識されれば、状
況は変わっていくでしょうね。

T:そうです。小・中・高校あたりでは、まだまだインターネット
を使うことの価値がほとんど認識されていない状況だと思います。
ただ、大学関係だと認められつつあり、千葉大学では広く使われる
ようになってきていますが、それでもまだ学内ネットワークの利用
規定であるとか、管理をどうするといった正式な規定がない状態で
す(’96年3月現在)。最近、「規定が必要である」と学内委員会
で決定したので、現在、作成しているところですが……。[新規注]

==========
[新規注]  規定が必要

いまだに正式な規定はできていない...(1999.8.9 戸田洋三)
==========

 このような規定の存在が、組織として認められている証拠となり
ます。規定がないと、何か起こった場合に、その場で考えて対処し
ないといけません。大学で、やっと「原則を決めておかないといけ
ないぞ」という認識が高まって組織も変わってきたというのが、現
状だと思います。

 ただ、あまりにもきっちりした規則を作ると、逆に「それに縛ら
れてしまう」という考えもあります。 以前、規定の有無に関して
調査したときに、そのような回答がありました。このへんは、組織
の規模にも関係しそうです。

Y:大学と小・中・高校の運用規定は、同じではいけないのでしょ
うか。

T:大学だと、学生は一人前の大人として突き放して扱えばよいの
ですが、いわゆる初等教育だと、もう少し気を使わないとダメらし
いですよ。

Y:大学生と小学生とでは、インターネットを利用する能力に違い
があるということですね。

T:小学生の方が、能力が高いということも考えられますが:-)。

Y:そうですね。学校教育にインターネットがバンバン利用される
ようになったら、先生の立場というのはどうなるのでしょう。

T:私は楽観的な性格なので、心配はしていません。小・中・高校
生が、インターネットから直に情報を入手できるようになることの
メリットの方が大きいと思います。

Y:今回のお話はすべて、「お金、人、情報」という3つのキーワー
ドでまとまりそうです。今日は、楽しいお話をありがとうございま
した。


 今回のルート訪問は、友人の北村敏子さんの協力で実現しました。
取材当日は、北村敏子さん、金沢工業大学の佐渡秀治さんにも応援
にかけつけていただくことができて、大変感謝しています。みなさ
んと出かけたオマケも、非常に楽しかったです(コラム参照)。

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コラム1 オマケ話

 今回は取材時期が大学の春休み中だったということと、取材に協
力してくださった方々への感謝の気持ちを込めて(実は自分が行き
たかったから人を巻き込んだという声もあるが)、「戸田さんを中
心とした取材協力者との東京ディズニーランド・ツアー」、
「“Network Users' 1997”の見学」というオマケを付けてみまし
た。

Y:オマケの部分についても、今回のテーマである「お金、人、情
報」というキーワードに結び付いてくると思いませんか。

T:ディズニーランドでは、「シンデレラ城ミステリー・ツアー」
のガイドのお姉さんのノリはすばらしかったですね。彼女という
「人」のおかげで、十分に楽しむことができました。

 それから、待ち合わせの時間には大幅に遅刻してしまい、失礼し
ました。千葉大学からは非常に行きにくい場所 [注20] にあること
を知ったのが出る直前だったのです。事前の下準備、すなわち「情
報」の収集が足りませんでした。

Y:「情報収集」といえば、ディズニーランドの開演時間などは、
北村さんがホームページ(http://www.tokyodisneyland.co.jp/)
で調べてくださったんですよね。

北村さん:ええ。ところで、遅刻された戸田さんへの伝言を“The
East Gate Guest Reception”に残して、先に中に入ろうというこ
とになったときに書いた「伝言メモ」は手書きでしたよね。あれは、
もっともプリミティブな形の「情報」だと思います。デジタル・デー
タとは対極的なところにある、あの手書きのメモになぜかすごく安
心しました。

Y:先に入ろうとした瞬間に戸田さんと出会えて本当にラッキーで
した。私は、戸田さんとは初対面だったのですが、ホームページで
写真を見ていたので「あ、戸田さんだ」って分かったんですよ。こ
れも「情報」のおかげですね。

 そして、3月6日、幕張での“Network Users' 1997”では、FSF
注19のブースでRichard Stallman氏にお会いして、サインをいただ
いたり、一緒に写真を撮るという幸運なできごとをへて、今回の取
材旅行を終えたのでした。

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[注1]  千葉大学 総合情報処理センター

千葉大学 総合情報処理センターは西千葉地区にその主要システム
を置き、同センターと亥鼻地区・松戸地区・柏農場は学内ネットワー
クによって接続している。住所は、千葉市稲毛区弥生町1-33 (も
よりの駅は、JR総武線西千葉駅)

総合情報処理センターのホームページは、
http://www.ipc.chiba-u.ac.jp/である。


[注2] 広い意味のシステム管理者を意味している

この連載を読んでくださっている方はすでに気づいていると思うが、
この「ルート訪問」の「ルート」の範囲は、とてつもなく広い。
「あるマシンのルートのパスワードを知っている」ということが、
唯一の共通点であろう。


[注3]  ATM

Asynchronous Transfer Modeの略。

非同期転送モード。B-ISDN(広帯域ISDN)におけるITU-TS(国際電気
通信連合電気通信標準化セクタ)の標準で、音声、画像、データな
どの多種類の情報を、セルと呼ばれるヘッダー付きの短い固定長パ
ケット(53バイト)を必要数割り当てることで統一的に扱う方式。
セルの形式を固定することで、プロトコルを簡略化しハードウェア
で処理できるため、高速な交換、多重化が実現できるなどのメリッ
トが生まれる。

2月 6,7日に 東京の電気通信大学で、情報処理学会 分散システム
運用技術シンポジウムが開催され、昨年度一斉に全国の大学に導入
されたATMネットワークがどのくらい動いているのか、という報告
が発表された。


[注4]  TRAIN

Tokyo Regional Academic Inter-Network

「トレイン」と発音する。東京地域アカデミックネットワークは、
関東甲信越地域の大学などを中心として、その相互協力のもとに運
営される学術ネットワークとして、'92年12月に発足した。TRAIN 
と外部との接続は、ゲートウェイを介して東大大型計算機センター
内に設置された対外接続用セグメント上で WIDE、SINET などの広
域ネットワークと相互接続している。

==========
[新規注]  TRAIN

TRAIN は 1999年3月いっぱいで解散しました。接続組織の多くは 
SINET への移行を行なったようですが、OCN や ODN, IIJ など商用
プロバイダに移行した組織もあります。(1999.8.9 戸田洋三)
==========


[注5]  SINET

NACSIS Science Information NETwork

「サイネット」と発音する。学術情報センターが運営する学術情報
ネットワークのうち、通信プロトコルとしてTCP/IPを用いたインター
ネット・バックボーン。

http://www.nacsis.ac.jp/ 参照


[注6]  N-1ネットワーク
 
大学間コンピュータ・ネットワーク。学術情報ネットワークとして、
N1 プロトコルによるネットワークサービスが行われてきた。たと
えば、千葉大学の場合、'80年に、東大大型計算機センターとの間
が、N-1ネットワークで接続された。この方式は、各大学の計算機
センター・情報処理センター等の大型機を相互に接続することには
成功したが、ホスト−ホスト間の独自のプロトコルであるため、幾
つもの制約が指摘されていた。


[注7]  NOC
Network Operation Center

「ノック」と発音する。インターネットなどでバックボーン・ネッ
トワークを構成する拠点。インターネットでは、NOCにルーターを
設置する。



[注8]  学術情報センター

文部省「学術情報センター」(NACSIS: National Center for
Science Information Systems)は、学術情報の収集、 整理及び提
供並びに学術情報及び学術情報システムに関する総合的な研究及び
開発を行うことを目的として、' 86年4月に設置された大学共同利
用機関。

学術情報センターでは、学術情報ネットワークを運営しており、こ
のネットワークサービスの中の、通信プロトコルとしてTCP/IPを用
いたインターネット・バックボーンが SINETである。


[注9]  MBone

Multicast Backbone

「エムボーン」と発音する。マルチキャスト通信を運用するための、
インターネット上の実験プロジェクト。動画や音声を使ってイベン
トを放送するなど、特定のユーザーに同報(マルチキャスト)する
ために利用する。(IP)マルチキャストでは いわゆる クラスD の 
アドレス体系を利用することになっている。

クラスDのアドレス体系では、最初の4ビットが(1110) となる ア
ドレス、すなわち 224.0.0.0 -- 239.255.255.255 のことを指し
ている。


◎ クラスA (最上位ビットが 0)
  0x00000000 -- 0x7FFFFFFF (0.0.0.0 -- 127.255.255.255)

◎ クラスB (最上位2ビットが 10)
  0x80000000 -- 0xBFFFFFFF (128.0.0.0 -- 191.255.255.255)

◎ クラスC (最上位3ビットが 110)
  0xC0000000 -- 0xDFFFFFFF (192.0.0.0 -- 223.255.255.255)

◎ クラスD (最上位4ビットが 1110)
  0xE0000000 -- 0xEFFFFFFF (224.0.0.0 -- 239.255.255.255)

◎ クラスE (最上位4ビットが 1111)
  0xF0000000 -- 0xFFFFFFFF (240.0.0.0 -- 255.255.255.255)


[注10]  CERT(Computer Emergency Response Team)

「サート」と発音する。CERT は、'88年に米国のカーネギーメロン
大学内に設立された。セキュリティ問題が発生すると、その原因を
調査し、必要があれば企業と協力して対応策を開発し、その配布を
おこなう。その活動は、CERT Advisory と呼ばれるオンライン文書
にまとめられていて、問題の概要とその対応策に関する情報が記述
されている。http://www.cert.org/  参照。


[注11]  JPCERT 

「ジェィピーサート」と発音する。CERT は米国だけではなく、い
くつかの国で設立され、活動を開始している。日本においても、
JPCERT(日本コンピュータ緊急対応センター)が設立され、'96年
10月1日から正式に活動を開始している。活動内容は、不正なシス
テム侵入に対する緊急対応を中心に、Internetセキュリティの情報
収集・分析、再発防止策の検討、セキュリティ技術の教育・啓蒙活
動などである。http://www.jpcert.or.jp/  参照。


[注12]  千葉地域インターネット連絡会

Chiba Regional Coalition for the Internet (CRIC) 

ネットワークの管理者やユーザの技術情報交換・啓発の場を
提供することを目的としている。


[注13]  100校プロジェクト

通産省と文部省とが協力して全国111の学校などに必要な設備を置
き、インターネットを学校教育に活用しようとした試み。情報処理
振興事業協会(IPA:Information-technology Promotion Agency,
Japan) と、財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC:Center
for Educational Computing)が主催団体となった。'95年春に2年
間の予定でスタートし、さまざまな成果を出し、' 97年春に終了し
た。

詳細は、http://www.edu.ipa.go.jp/kyouiku/100/100.html参照。


[注14]  「南総里見八犬伝」

滝沢馬琴(1767-1848)作の江戸時代後期の人気小説。南総とは、上
総(かずさ)の国の別名で、今の千葉県の中央部を指す。この小説
は、全九十八巻百六冊、日本古典文学史上最長の雄編で、戦国初頭
の関八州を舞台に、犬と夫婦になる悲運の姫君と、仁義礼智忠信孝
悌の文字が浮きでる八つの霊玉を持つ、八人の若き武士たちが活躍
する物語。

その昔、NHKでこの人形劇「NHK 新八犬伝」が放送されていた時の
「われこそは〜玉梓(たまずさ)が怨霊(おんりょう)〜」という
フレーズが鮮明に耳に残っている筆者が、これが放映されていた時
期を調べたところ、昭和48年(1973年)のことだった。


[注15]  八犬伝@発見プロジェクト

インターネットの教育利用、学校教育全般について情報交換をおこ
なう。またデータベースの作成、ホームページ公開支援、技術支援、
教育プログラムなどにも取り組んでいる。

名前の由来は、千葉県の里見家と房総を題材とした江戸時代の大衆
娯楽小説、滝沢馬琴 「南総里見八犬伝」の「八犬伝」から。「南
総里見八犬伝」は、スケールが大きく、終わりなき物語。グローバ
ルで終わりなき世界「インターネット」を千葉県から、または教育
の視点からみつめ、これからのインターネットライフを「発見」す
る場所として命名された。


[注16]  大手商用プロバイダ

IIJ(インターネットイニシアティブ)、Spin(日本イーエヌエス
AT&T)、InfoWeb(富士通)、東京インターネットあたりを指すこ
とが多いようだ。


[注17]  柏インターネットユニオン(Kashiwa Internet Union)

千葉県柏市周辺を対象とする非営利の非営利の地域貢献型インター
ネットサービス。運用母体は、財団法人モラロジー研究所および学
校法人広池学園で麗澤大学、麗澤高校が運用支援を行っている。
http://www.kiu.ad.jp/ 参照


[注18]  IX 

Internet eXchange

複数のネットワークを集めて、相互に通信できるようにした部分の
こと。日本の場合は、WIDE が研究プロジェクトと称してやってい
る NSPIXP が有名。米国の場合は、商用プロバイダの相互接続点と
して共同組合のようなものをつくって運営している 
CIX(Commercial Internet eXchange)、政府が運営する NSF が イ
ンターネットの バックボーンに なってしまっていたのをやめよう
としたときに 全米各地につくった NAP が有名。


[注19]  NSPIXP

Network Service Provider Internet eXchange Point

WIDEプロジェクトが行っている、 商用インターネットを相互に接
続する場合の問題点の洗い出し、解決方法の研究を行っているプロ
ジェクト。'94年設置の「相互接続点 NSPIXP-1」は、各NSPのルー
ターがスイッチングハブに接続されていたため、引き込める回線速
度の上限が 1.5Mb/s であったが、'96年にKDD大手町ハウジングに
設置されたNSPIXP-2では、FDDIスイッチが採用されたため、回線速
度の上限が大幅に拡大した。大阪設置の NSPIXP-3 では、分散配置
(大阪IDCとOMPのハウジングの2箇所に配置)することで、障害に耐
えるIXを模索する。

http://xroads.sfc.wide.ad.jp/NSPIXP/ に、NSPIXP についての説
明があるが、残念ながら、NSPIXP-2 や NSPIXP-3 の現状について
は公開されていないようだ。

ちなみに、ハウジングとは、ルータ・スイッチ・交換機などを 置
くところのこと。NTT や KDD だと ネットワーク接続のために 交
換局内の場所を(料金をとって) 貸してくれるそうで、そのための
場所をとくに 指し示すときに使われるようだ。


[注20]  千葉大からはとても行きにくい場所にある

東京ディズニーランドの最寄りの駅は、京葉線舞浜駅。千葉大のあ
る総武線西千葉駅からアクセスする場合、西船橋からは京葉線に出
にくいので、一度、蘇我駅に出た方が時間的には早いようだ。


以上


(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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