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2003年9月号掲載 よしだともこのルート訪問記

第83回 カリスマ講師のパソコン歴や講義の秘訣を直撃取材!
〜京都情報処理研究所注1

今回は、京都情報処理研究所の藤井淳夫さんを訪ね、会社の概要から、パソコン歴、人気講師としての秘訣を伺いました。

藤井淳夫(ふじい あつお)さん
京都情報処理研究所 代表取締役

■設立6年目の京都情報処理研究所

よしだ(以下、Y):初めまして。突然の取材を受けていただき、ありがとうございます。まずは会社について紹介してください。

藤井さん(以下、F):当京都情報処理研究所は、システム開発およびシステムアドミニストレーション業務をはじめ、情報処理システムに関する企業研修、情報処理技術者教育、ドキュメント執筆を主な業務として1998年4月に設立しました。また私は社会保険労務士の資格も取得しており、社会保険労務士事務所を併設しています。
 スタッフの人数は12名で、ほぼフル稼働、平均睡眠時間は2〜3時間程度です。それもフトンに入ってではなく、PCの前でウトウトと……。もうずっとそういう生活で定休日はありません。プログラミング系企業はどこでもそうですが、慢性的に人手不足です。
 また、当研究所は公式サイトを除いて、一切営業広報活動を行っていません。すべてお客さまから紹介いただいた方の依頼にのみ対応しています。これは、信頼関係を前提に全力で対応しようと考えているためで、高額報酬の依頼の場合でも、打ち合わせ段階で意思の疎通が図れないようなときは、申し訳ないですが、お断りすることもあります。もちろん、公式サイトをご覧になった初めてのお客さまからのご相談も受任していますが、それはウチを発見してくださったという「縁(えにし)」があったからだと思うためです。

Y:仕事場の環境について教えてください。

F:仕事場のネットワークは12MbpsのADSL回線を使っています。マシンはスタッフのものを除いて私専用で、PC/AT互換機を5台使用しています。労務や税務、法務を扱う仕事柄、ウチではネットワーク利用よりもスタンドアロン運用での要求が非常に多いです。世間では「ネットワーク! ネットワーク!」のかけ声ばかりですが、公開情報ならともかく、企業におけるインテリジェンス情報をネットに乗せるのは論外です。企業内のデリケートな情報はこれまでも、そしてこれからもやはりスタンドアロン運用が主体であるのはいうまでもありません。本当に大切な情報はそんなところにはありませんよ、といいたいですね。

■PC-8001からスタート

Y:藤井さんは、1979年に購入したNEC PC-8001注2を皮切りに、ずっとPCの魅力に取り付かれているとのことですので、PC歴は長いですね。

F:はい。PC-8001を手にしたのは、まだ小学校5年生のころでした。当時、全国的にスペースインベーダーが大流行したのですが、ご多分に漏れず自分もビデオゲームにのめり込んでしまいまして。当然、プレイステーションはおろかファミコンが登場するのもそれから4年後ですから、プレーするのはゲームセンターでということになります。
 ただ、30代後半以上の方ならご存じでしょうが、当時のゲームセンターは、真っ暗で怪しげな雰囲気の、かなりデンジャラスな所で、そんな場所に小学生の子供が毎日のように出入りしていたわけです。現在のように「アミューズメントスペース」と呼ばれカップルでも気軽に入れるような明るい場所ではありません。身の危険を感じることも度々あり(苦笑)、それより何よりおカネが続かない状態でした。
 そこで父親に頼んで、当時NECが発売した8ビット機PC-8001を購入しました。要するに自分で遊ぶゲームを自分で作ってしまおうというわけです。これには名作マンガ「ゲームセンターあらし」が大きく影響しています。「大文字さとる」という天才プログラマが毎回登場して、主人公の「あらし」と一緒にコンピュータを駆使して強敵と対決するのですが、それを読んで「おおっ、プログラマってカッコいいな!」と。価格は16万8,000円だったと記憶しています。貯め込んでいたお年玉貯金をすべてはたきました。
 PC-8001はN80BASICをROMで内蔵しており、自分で勉強してプログラムを書けば、ゲームを楽しめました。PC-8001はそれ以外にも、MON(モニタ)というコマンドを打ち込むと利用できるマシン語モニタ環境も整っていました。そこで、まずはN80BASICでゲームプログラムを書いていたのですが、インタプリタ処理では動作が遅いと気が付き、(習得にかなり時間はかかりましたが)結局マシン語で書き直しました。それが中学校1年生のころで、ハンドアセンブル全盛の時代のことです。当時PCを始めた人間にとって、ソフトウェアは自分で書くというのが基本でしたからね。
 また、Apple IIでは、当時アメリカ屈指の優良ゲームソフトハウスBroderbund Software社が、風変わりなシューティングゲーム「CHOPLIFTER!」を発売していました。これは1979年の駐イラン・アメリカ大使館員人質事件がモチーフになっていて、特殊部隊をヘリで送り込んで人質を救出するという内容で、これが遊びたくて遊びたくて(笑)。ただApple IIは本体とディスプレイで約50万円もしたので、手が出ませんでした。京都の電気街に1時間500円でマシンごと使用させてくれる量販店があったので、よく遊びに行ったものです。
 その後の歴代の所有PCは、概算ですが70台は下らないと思います。ここ何年かはPC/AT互換機のみですが、80年代初頭のPC黎明期に手に入れたマシンは、数え上げたらキリがありません。当時は面白かったですよ。それに引き換え現在は、マシン仕様はPC/AT互換機のみ、ただ性能と価格の違いでしかなくなってしまったのがさみしいです。

Y:たしかに。昔はそれぞれのPCに個性があったということですね。いまの時代だと、個性を追求するとしたらOSでしょうね。

F:実は、私はこっそりTRONを愛用しております。1987年に大学の情報基礎講座でTRONに触れて以来、ずっと興味を持ち続けてきました。自分のPCに超漢字4注3を入れたのは数年前からですが。

Y:TRONを使っていると聞いてうれしいです。TRONは私のイメージではUNIXの仲間なので。

F:超漢字は漢字を含む表現可能文字を17万字以上標準搭載しているのですよ。たとえば、吉田さんの「よし」という漢字さえも出ないOSなんて最低ですよね。

Y:そうそう。私の苗字である吉田の「よし」も、本当は(戸籍では)土の下に口を書く「よし」なんです。

F:では年賀状には、超漢字を使って、正しい漢字で出しますよ。

Y:そこまでする必要はないですよ。そこでこだわっていたらPC上では自分の名前も書けないので、私はもう吉田って書くことで妥協していますから。ただ、夫はわりとこだわって書くので、銀行などで不都合注4があるんですけどね。

F:いまでこそ役所の文字入力では端末機を利用していますが、つい先ごろまでは窓口の役人が手書きで作業していたのです。で、うっかり漢字の「とめ」や「はね」、「かざり」などを我流で書いてそのまま戸籍に記載すると、それが正字体となっていました。現在でも、たとえば年金請求の裁定書などでは戸籍どおりでないと受け付けてくれません。異体字のほんの小さな違いがあるだけでもダメなのです。そのため膨大な数の漢字が必要になっており、JISの第4水準でも全然足りません。Unicodeを利用しても話にならないです。とくにウチのお客さまは京都の老舗が多く、社名にJISコードでは表現できない漢字を含んでいるケースも度々あるので、そのためにも超漢字を活用しています。さらに、超漢字に関して特筆すべき点は、1世代、2世代古いPC上でも快適に動く点と、フリーズの概念がないことですね。
 また、携帯電話などの組み込みOSの分野ではITRONがトップシェアだというのもうなずけます。炊飯器や洗濯機がフリーズしても困りますが、自動車の組み込みOSが固まってしまったときのことを考えるとゾッとします。たとえば、携帯電話にPCのようなリセットボタンが付くようになったらオシマイだという気もします。OSは安定してこそOSであるのは当然ですから。

Y:TRON(やUNIX系OS)は、日本の小中高校での教育用のPC環境に適していますよ。「PCはフリーズするもの」なんて間違った概念を、私は小中高生に植え付けたくないのです。

F:そうですね。かつてアメリカからの激烈な外圧注5で圧殺されたTRONが、10年以上の時を経て復権の機会を得て、いま話題の電子政府構想で公的によみがえってきましたよね。純国産OSを持たないと、日本がこのIT時代における主導権を握れないのは自明の理だと私は思います。当研究所も超漢字の普及にぜひ協力したいので、頑張ってほしいです。

■防衛庁での経験を経て独立

Y:藤井さんが、高校時代からハードロックのバンドのリーダーをなさっているとの情報をWebサイトで見ました。パソコン少年一筋だったのかと思ったら、そういう方面でも活躍されていて驚きました。

F:ずっとハードロックで、1984年に横須賀で最初のバンドを結成しました。87年に大学入学と同時に関西に拠点を移し、88年にはインディーズ・レーベルからファーストCDも出しています。
 その後、国家公務員試験を受験して、大学卒業後の1992年に事務官として防衛庁に入庁しました。防衛庁での配属は人事部署だったのですが、コンピュータに詳しいということで人事関連システムを手掛けました。開発には主に、登場したばかりのQuickBASICからVisual Basic、VBA、一部にCOBOL、C言語を使って、労務管理、給与計算、社会保険管理、年金算定、人員補充システム、医療費計算システムなどを制作しました。防衛庁内で専門にシステム開発・管理を担当している電計課では当時、NECのACOSシステムという汎用機を使っていて、このマシンが吐き出すデータを手元のPCAT互換機に取り込んで処理することが多かったですね。端末としては、最初はNECのN5200システム、後には同じくNECのPC-H98シリーズを利用していました。当時の司令官から、業務改善に大きく貢献したということで2度ほど表彰されたこともあります。
 朝から午後5時ぐらいまでは人事関連の書類仕事が中心で、その後電計課からのデータを基に、毎晩午後11時、12時まで残業する毎日でした。入庁してからの最初の2〜3年は土曜日、日曜日もほとんど出勤していました。当時、防衛庁職員の残業手当予算は全職員平均して、通常1か月に5時間分程度でしたので、その1か月分はたった1日で消化してしまいますから、ほぼサービス残業でした。もちろん、阪神大震災やPKO派遣では特別予算が下りましたので例外注6でした。

Y:普通の人の何倍も働いていたのですね。

F:プログラミング自体が楽しいからできたのでしょう。そんな生活を足掛け7年続けましたが、やっぱり仕事のモラルと自分の裁量で行動したいという気持ちが強かったので、1998年4月に独立しました。もともと独立志向でしたので、20代は修行のつもりで過ごしてきました。

■人気講師に聞く! うまく教える極意

Y:人気講師である藤井さんから、初学者にプログラミングや情報処理の概念を教えるコツを教えてもらえませんか? サイトのプロフィールページで、「私自身、情報収集の目的でいろいろな講習会等に参加していますが、私以上に初心者の方に分かりやすくプログラミングをお教えできる講師には一度も出会ったことがありません。誰もが専門用語を駆使して、何が何だかよく分からないうちに講義が終わってしまう…こういった分野の専門技術者にはそんな独りよがりな人間が多いのは事実です」と書かれていましたので、ぜひその話をお聞きしたいと。

F:現在、私は大手の情報処理専門学校や大学などで情報処理と労働法を教えています。プログラミング教育や経済産業省の情報処理技術者試験対策講座についていえば、ほとんどの受講生は初学者です。
 プログラム開発の醍醐味は何といっても、「モノを作る」という楽しさに尽きます。そこでせっかく受講していただく以上、途中で挫折しないようにできる限り専門用語を使わず、さまざまなたとえ話でプログラミングの要諦を伝え、その面白さを伝えようと日々努力しています。

Y:プログラミング教育での担当言語は何ですか。

F:現在はJava、Visual Basic、アセンブラ、C言語です。どちらにしても、専門学校でPCを前にしているので受講生は「PCを使って何かするのだな」という意識では来るのですが、実際は文法の解説とタイピングばかりなので面食らわれる方が多いですね。また、プログラミングはまったく初めてという方は、「どうせマウスやアイコンがどうしたこうしたとかの授業なのだろう」と、操作トレーニングのつもりで来ます。だから、プログラミング業務は、通常のオフィスワークなどと同じくPCを扱う仕事ですが、実態は全然違うということを最初に話しています。プログラミング言語の授業は、文法から地味にコツコツ学ぶべき外国語の語学教育の1つだと思って、受講生側は挑むべきでしょうね。

Y:なるほど。外国語のネイティブスピーカだからといって教えるのが上手かどうかは別というのも、プログラミング教育に共通していえますね。

F:それはどの分野の教育でもいえることでしょうね。

Y:どうも、大学でプログラミングを教えている人や、会社で後輩にプログラミングを教えている人の中には「開発は好きだが、教えるのは苦手」という方が少なくないように思えます。上手に教えることができるようになるコツは何だと思いますか。

F:プログラミング教育に限りませんが、私が常に心がけているのは、毎回講義の最後に受講生には「(つまらない私の講義を聞いてくださって)ありがとうございました!」といって頭を下げることです。自分の立場もわきまえずふんぞり返っている講師をたまに見かけますが、とんでもないことです。民間の専門学校や私立大学では、受講生はお客さまです。私は講義をやっているときも、常に企業同士の食うか食われるかのシノギの世界と認識しています。ちょうど客先でプレゼンテーションしているときの心持ちですね。
 まず、どんなポリシーで講義をしているのか? そこを自分に問いかけてほしいです。それと、私が関わっている専門学校もそうですが、とくに大手では講義のたびに生徒に受講アンケートを取ります。「講師が話すスピードは速すぎないか? 遅すぎないか?」、「あなたは十分に理解できたか? そうでなかったか?」、「受講料に見合う講義内容だったかどうか?」など、大変多くの項目でチェックされます。そして、2〜3回でも不評なアンケートが続けば即クビです。
 大手の専門学校ではどこでもそうです。講師希望者はいくらでもいますから、本当に話のうまい、「聞き物」として講義に商品価値がある人間かどうかで、どんどん切り捨てられます。非常に厳しい世界ですが、受講生の高い満足度を追求する企業としては当然の姿勢です。貴重な時間と高いお金を費やして受講してくれることに感謝しながら、受講生に満足してもらうために、私は授業時間の約3倍の時間を「仕込み」として準備にあてます。3時間の授業なら約9時間かけて、分刻みの講義プランを用意します。これは講義の始まりから終わりまで何を話すかをすべて詳細に書いたもので、教授計画(LP、Lesson Plan)といいます。
 黒板にどのような記述を行うのかという板書計画も、事前にしっかりと作っておきます。分かりやすい図や要約文を示すために、あれこれ考えます。どのテーマで、どんなたとえ話を使うかなどは当然決めておきますし、どんなギャクをどこでいうかまでこの段階で計画します。本番ではいかにもアドリブっぽくギャグを入れますが、実はキッチリ練っているわけです。ウケなかったときは最低ですけど(笑)。
 受講生の感想に「大変分かりやすかった。私でも全部理解できた。なんだカンタンじゃないか」というものと、「さっぱり分からなかった。お金がもったいない」とがあるとしたら、後者の意見は最悪です。貴重な時間と高いお金を払って受講した結果がこれでは、まったくの無駄遣いをさせたことになります。とくに情報処理系の授業の場合、分かりやすさを最優先に考えるべきです。理解できた人を増やすためにはやさしすぎるくらいがマシです。少数のマニアックな受講生を意識して、「こんなやさしいことばかり話してはいけないのでは(受講生にバカにされるのでは)」と思って難しいことを口走ってしまうと、大多数の受講生に「難しすぎて分からない」という印象を与えてしまいます。
 私が高い受講料を払って聞きに行った大手の専門学校の講義で、レジュメを読むだけの信じられない講師がいましたが、そういうのは最低です。初学者に対して、専門用語を駆使して話す講義も最悪でしょう。初回は絶対に専門用語を使ってはいけません。初回にきちんと説明すれば、2回目以降は専門用語を使ってもいいのですが、さらに語句の意味を補足説明しながら使うといった工夫が重要です。「ここは前回説明したように、こういう意味ですけれど、覚えていますか?」と、2、3回は補助しながら使うべきでしょう。この点では、難しい専門用語を平易な言葉に置き換えられるボキャブラリを持った先生が、分かりやすく講義できると考えてください。ボキャブラリを増やすには読書しかなく、平易な言葉とは日常用語を意味します。では、「日常用語っていったい何?」となれば、義務教育である中学校までに学ぶ知識・言葉といえます。ですから、たとえば「サブネットマスクの知識を、中学生にも分かるように説明する訓練」をしてみるのもいいでしょう。専門用語を一切使わずに説明してください。教育で要求されるのはそのセンスです。

Y:なるほど。うまく教えるには、具体的な訓練方法があるというわけですね。

F:基本は詳細な講義プランを立てることです。次に、自分の講義を冷静に見る機会も重要です。たとえばカラオケで、自分が歌ったときは「うまいな〜」とうぬぼれていても、それをテープに録音して後で聞いてみるとえらく下手だったりしますよね。また、リハーサルは絶対に欠かせません。家族や友人、同僚に頼んで受講生役としてロールプレイング環境を整えたうえで模擬授業を繰り返し、演習するのです。大学で教職課程を履修なさった方は経験があるのではないでしょうか。そして、虚心坦懐に意見を求めて自分にフィードバックすることです。
 あとは、話の上手な講師の講義を実際に聞いてみるのも効果的です。大手専門学校の人気講師の担当する講義を受ければ、資格も取れて一石二鳥です。私はそれでいくつかの資格を取りましたし、井の中の蛙だといつまでも上達しません。アンケートの件でいえば、「藤井先生の講義は落語を聞いているみたいで面白かった」という感想も結構あります。実は、私は「講談全集」を読んでいて、その影響も大きいです。噺家の基本である講談全集は、「しゃべくり」のテクニックを磨くには一番かもしれません。

Y:専門学校ではプログラマ志望者は多いと思いますが、求人状況はどうなのですか。

F:一般職種の求人倍率に比べて、プログラマの求人状況は極めて高いといえます。とくに都市部での求人状況は平均しても5倍以上だといいますから、現在の就職難からみても信じられないくらい恵まれていますね。派遣業界における時間単位給与も高額です。
 また、この業界に飛び込もうと考える初級プログラマは、少なくとも基本情報技術者試験(旧情報処理技術者二種試験)合格レベルが要求されます。資格を持っていないとしても、就職面接で実力が証明できればいいわけです。「電卓を使うと、1+1=で2と表示するが、それが内部ではどういう手順で計算され、処理されているか説明してくれ」などと尋ねられたとき、よどみなく説明できれば実力を証明できますよね。
 実技レベルでいけば、「オセロゲーム(人間対人間)あるいはブロック崩しを、そこのPC環境でちょっと作ってみてくれるか」と話して、就職面接を受けに来た人がプログラムを書く様子を見ていれば、だいたいの実力は分かります。社会保険労務士の労務管理業務として就職面接に立ち会うことも多いのですが、信じられないことにプログラミング解説書のサンプルをオリジナルといって持ち込む人がいたり、タッチタイピングすらできない人もいたりで大変です。ただ、技術は経験を積むことで上達していきますから、企業側としてはとにかくマジメで明るくて前向きな人間を欲しています。経験などは二の次ですね。まぁ、これは一般企業と同様です。

Y:なるほど。今日は楽しくて、非常にためになるお話をどうもありがとうございました。

フリーズしない超漢字、TRON
注1 京都情報処理研究所
主な業務は情報処理コンサルティング、プログラム開発、企業研修、講師派遣、Web制作、情報処理技術者教育。スタッフは全員、情報処理技術者各種資格取得者である。所在地は京都府宇治市開町55。
http://fujii-office.com/

注2 NEC PC-8001
1979年発売のベストセラー機。CPUにインテル製Z80互換のμPD780C-1を採用し、RAM16KBを搭載。価格16万8,000円。発売日の9月28日は現在「パソコンの日」とされているが、NECに問い合わせたところ、どこがこの日をパソコンの日と決めたのか同社にも不明とのこと。後継機のPC-8001mk IIは、12万3,000円で1983年発売。
http://www.itoi.co.jp/attic/time41.html#PC-8001

注3 超漢字4
BTRON仕様OSの超漢字シリーズ最新版。販売元はパーソナルメディア株式会社。JIS第1・第2水準のほか、JIS第3・第4水準、JIS補助漢字、大漢和辞典収録文字など17万字以上の漢字を扱える。仮身(かしん)/実身(じっしん)モデルと呼ばれる、ハイパーリンク型のデータ形式を備える。
http://www.chokanji.com/

注4 銀行などで不都合
銀行の通帳作成時や住民票の取得申し込みなどに手書きで名前を書く場合、吉の字の土の部分は上か下かどちらが長いか区別が要求される。夫は通帳の新規作成時に下が長い字を書いていることが多いため、入金時も同じように書かなければいけない(間違っていたら訂正印で修正)。私の通帳は新規作成時から「吉田」なので、入金時もそう書く。そのため、入金時に、吉の土の部分の長さが違う2人分を同じ窓口に出すと、窓口係に「どちらが正しいのですか」と尋ねられる。「戸籍上は夫の書き方が正しいのですが、JISの第1・第2水準の漢字の範囲では吉しか書けないので、私は吉田と書くことにしています」と答えている。

注5 アメリカからの激烈な外圧
日本での教育用PC仕様として、CEC(コンピューター教育センター)がTRON(BTRON仕様)を採用したことから、米国政府は、日本政府が後押ししているものと判断し、1989年にTRONを含む外国貿易障壁報告書を米国議会に対して提出。電気通信分野での対日制裁候補リストなどを発表。これに対して、トロン協会が米国政府の誤解と抗議、日米政府間折衝などが行われた結果、スーパー301条対象品目から外された。同時にCECの教育用PC仕様からTRONは外されたものの、TRON支持メーカーによる開発は進行していた。しかし1990年に再びスーパー301条対象品目となり、米国側がTRON採用メーカーの他製品に対して課税を行うと圧力をかけた。この時点ではTRON搭載機は販売されておらず市場形成自体はなされていなかったこともあり、次々とメーカーが離れた。

注6 「阪神大震災やPKO派遣での残業は例外」
阪神大震災時、藤井さんは防衛庁の事務官として宇治市の駐屯地にいたそうだ。宇治にあるパンの工場から調達した食料などをヘリコプターで神戸に輸送したり、災害復旧のために現地に多くの隊員を派遣したという。それにともない、防衛庁の人事では隊員の勤務管理の業務量が極端に増加し、コンピュータをフル稼働させて乗り切ったという。

私のUNIX #10 〜藤井淳夫さんの超漢字4〜

 超漢字4を連日運用で1年近く使用し続けていますが、たった1度もフリーズしたことはありません。極めて軽快・快調です。ひょっとするとMS-DOS以上の軽やかさかもしれません。あまりの軽さに、かえって重いOSが恋しくなるかも?

●超漢字4のメリット

 何しろ、まず漢字で困ることがないという点です。超漢字4では他OSと比較して、使用可能な漢字や文字の種類がけた違いに多いのです。たとえば、「かん」という漢字をJIS第1・第2水準で検索すると150文字程度しか見つかりません。それが超漢字4だと、3300文字以上を利用することができるのです。しかも、ただ多いだけで特定ソフトウェア上でのみ使用可能という中途半端なものではなく、超漢字4上ならどんなソフトウェアにおいても利用可能なのです。
 たとえば、手書きの文書の場合、ビジネス上の取引相手の企業名で略字を使用したら、とうていまともな会社とは思ってもらえないはずです。プライベートにおいても似た字でごまかすなどは、ちょっと常識外れだと思います。しかし、これがPC上では許されてしまうことが不思議でなりません。正しい文字文化を学ぶべき学校教育でも有効であるというのは、こういった理由もあるのです。

●お勧めします!

 あらゆるOSを四半世紀にわたって利用してきた私の視点では、超漢字シリーズをはじめとするTRONは最高品質の純和製OSであると感じます。人にはそれぞれ好みがありますので、みなさんの鋭い目で実際に確かめてください。なお最後に、私個人は現在、TRONプロジェクトを推進しているあらゆる団体・個人とも一切利害関係のない立場であることを付記しておきます。

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Last modified: Mon May 21 13:42:39 JST 2007 by Tomoko Yoshida