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2001年2月号掲載 よしだともこのルート訪問記

第71回 相互運用性重視の思想でシステム構築
〜京都ノートルダム女子大学〜

筆者が勤務する京都ノートルダム女子大学の、コンピューターセンターについて、そのシステム構築思想、運用上の工夫や問題点について伺いました。

Gregory Peterson(グレゴリー・ピーターソン)さん
京都ノートルダム女子大学英語英文学科教授、コンピューターセンター長、図書館長、視聴覚教育センター長
津邑公暁(つむらともあき)さん
京都大学大学院情報学研究科、京都ノートルダム女子大学コンピューターセンターシステム管理者
山本美明(やまもとよしあき)さん
京都ノートルダム女子大学コンピューターセンター事務室主任
田中利彦(たなかとしひこ)さん
京都大学大学院情報学研究科、京都ノートルダム女子大学コンピューターセンターシステム管理者
※所属部署・肩書は取材当時(2000年)のものです。

 今回は、京都ノートルダム女子大学注1(以下、ノートルダム)を訪ね、システム構築のポリシーや工夫についてお聞きしました。ネットワーク構築・運用の中心となっている考え方、とくに「Interoperability(相互運用性)」という考えについて伺うことができました。

■できるだけオープンソースなものを利用……

よしだともこ(以下 Y):まずはセンター長のピーターソン先生から、コンピューターセンター(以下、センター)について紹介していただけますか?

Gregory Peterson(グレゴリー・ピーターソン)さん(以下 G):この大学でセンターを作る計画を立てたのは1991年のことで、実際にオープンした1992年以来、いろいろな種類のコンピュータの機種を用意してきましたが、サーバーもクライアントも、常にUNIXの環境を中心に考えてきました。
 現在は、全学生と教職員、一部の卒業生を含む約1,500人にユーザーアカウントを発行し、広く利用されていますが、インターネット上でよいサポートを受けられるフリーのソフトウェアを使うことで、最低限の労力で管理できていると思います。
 具体的には、電子メールにはSendmail、メーリングリストにはSmartList注3を使っています。メーリングリストの結果をWebに変換するためには、MHonArc注4を使っています。
 全学生は電子メールの読み書きに、Emacs上でMHを利用しています。Windowsなどの上で電子メールを利用する場合も、端末エミュレータTeraTermを用いてUNIXに遠隔ログインしてEmacsを利用注5、電子メールを読み書きしています。
 Webサービスには、Apacheを使っています。個人のWebページは、各ユーザーのホームディレクトリの下に置かれ、直接、編集することと、PC上で作ったものをファイル転送してそこに置くことの両方が可能です。デフォルトのHTTPアクセスは学内に制限していますが、より広く学外からアクセスできるようにも変更できます。
 このセンターの特徴は、教職員、外部のアルバイト、学生がみんな一緒になってワイワイという雰囲気があることです。私はその応援団長です。
 私はセンター長のほかにも、図書館長、視聴覚教育センター長でもあります。センターは、大学全体のネットワークを管理しています。図書館の蔵書は、Web上から見られるようになっています(http://opac.notredame.ac.jp/)。
 そして、この大学の多くの学生にとって、コンピュータを利用した異文化コミュニケーション(CMIC:Computer-Mediated Intercultural Communication)は重要な活動の1つです。テキスト処理には、Emacsが使われています。学生によってはTeXも使っています。
 学生には、情報を見るだけではなくて、情報を発信することを推奨しており、Emacsがそのためのよい環境を提供しています。Emacsは、UNIXのX Window版とテキストモードの両方で使われています。X Window版では、マウスによるプルダウンメニューが利用できるために初心者にも使いやすく、テキストモードの場合は、どのようなコンピュータの画面上からでも使える利点があります。
Emacsは、Emacs Lispと呼ばれる強力なプログラミング言語をサポートしており、文書作成の業務を助けています。文書の形式に適したモードを持っているため、たとえば、学生が電子メールを書くのに適したモードと、HTMLを書くのに適したモードを、自動的に使えるようにしています。

Y:私が大学時代、ピーターソン先生から習った科目は、「コミュニケーション」でしたね。

G:そうです。人は共通の部分、つまり共通理解が大きければ大きいほど、お互いのコミュニケーションが容易になります。たとえば、手紙や電報によるコミュニケーションというものを考えた場合、どのような言語でもいいのですが、2人が同じ言語が使えるなら、コミュニケーションの可能性が大きくなります。また、手紙や電報を国際間で交換する場合、どちらの国にも通用する基準があって、それをお互いに守ることで、手紙や電報が交換できる可能性も高まります。
 同じように、インターネットにも多くの基準・プロトコルがあります。基準がなければ、電子メールもWebも何もできません。それに、オープンソースはかなり関係しています。あるソフトウェアを使っていて、それぞれのファイル形式が違うと読むことができません。インターネットの世界では、プレーンテキストやHTMLを使うことで、コミュニケーションを可能にしています。これは共通の部分が大きいからで、ソフトウェア独自のファイル形式は、共通の部分が小さいわけです。
 「ソースをオープンにしようよ」という話がありますが、基準そのものもオープンにしないと、世界中のコミュニケーションが、非常に難しくなると思います。では、オープンソース、オープン基準、国際基準が、そうではない世界とどう違うのでしょうか。
 最近、メディアの種類も増え、多くの人がメディアから発せられる情報の消費者になっています。もし、その機械を作っているメーカーが、そこで使われる技術を公開しないでコントロールすると、私たちの多くはただの消費者になってしまいます。私の教育では、世界のステージで消費者ではなく、参加者になる学生を育てたいと思っています。そのためには、基準がいかに大切で、共通点を増やすことがコミュニケーションの可能性を広げることと理解する必要があります。
 実例として、相手が情報を受け取れないようなWebページが世の中には存在します。画像が表示されないテキストブラウザを使っているケース、文字を音声化して聞いているケース、点字ディスプレイを利用して読んでいるケースなど、あらゆる可能性を想定して作られたページは、その情報を相手に伝えられる確率が高くなります。
 これはWAI注6といわれており、WAIのガイドラインに「相互運用性(Interoperability)」という単語がでてきます。これはインターネットを利用したコミュニケーションを可能にする、重要な概念です。これに沿って作られたWebページは、さまざまな環境からアクセスできますから、情報が広く行き渡ることを推進します。「相互運用性」は、システム管理者にも重要な考え方だと思います。
 これからの教育現場の環境は、LAN、OS、アプリケーション、人間すべてに、できるだけオープンソースなものを使って、オープン基準を守ることで、異なる文化や環境の人とお互いにコミュニケーションしやすくするようにすべきだと思います。

■NFSとNISを使って「集中管理」を徹底……

Y:次に、津邑さんのほうから、ノートルダムのシステム構築の概要や工夫を紹介していただきたいと思います。津邑さんは、アルバイトとして1年以上の間、この大学のシステム管理を担当されていて、アルバイトとは思えないくらい、センターのために働いてくださっています。

津邑公暁(つむらともあき)さん(以下 T):本センターのコンピュータ環境は、UNIXをベースに構成しています。中でもその信頼性の高さから、Solaris(http://www.sun.com/solaris/)を採用しています(後述)。
 学生が利用する端末環境は、主に次の3種類です。
  1. Solaris/IntelとWindowsとのデュアルブートPC
  2. Solaris/SPARCのX端末
  3. 自習室の学生用端末はWindows PC
 学生の主な利用用途は、Webのブラウジング、電子メール、リポートや卒論の作成、Webページの作成です。
 一般的に、教育用のシステム注7の構成には、リテラシー教育との適合性やプライバシー保護の実現が重要となります。また、全学生という膨大な数のユーザーを管理することにおいて、システム停止を避け、ユーザー間/マシン間の不整合の発生を未然に防ぐことも要求されます。
 また、全学生に個人用のマシンが与えられているわけではないため、すべてのマシンは共用されます。このため、学生がどのマシンを利用したときにも同じ環境が得られるシステムを提供することが要求されます。本センターでは、NFS(Network File System)を最大限に利用することで、これにこたえています。
 本センターには、2種のプラットフォーム(SPARCおよびIntel)用のSolarisが混在していますが、この両方で同じ環境を提供するため、OS/プラットフォームに依存するレベルと依存しないレベルの2段階でのNFS共有を行っています。
 具体的には、NFSのサーバーとしては、gold(Sun Enterprise 450なので、SPARCアーキテクチャのワークステーション)とdiamond(IntelアーキテクチャのPC)の2台があります。
 goldは、/home(作業領域)と/usr/local/share(設定環境)と/usr/local(アプリケーション)という3つの領域をほかのマシンに供給しています。
 diamondは、/usr/local(アプリケーション)をほかのマシンに供給し、goldの/homeと/usr/local/shareを自分のディスクにマウントして利用しています。
 新しいクライアントを追加する場合、作業領域の/homeと設定環境の/usr/local/shareは、goldのものをマウントして利用できるようにして、アプリケーションの/usr/localは、同じプラットフォーム(SPARCあるいはIntel)のものをマウントしています。これは同じプラットフォームのアプリケーションでないと動かないからです。
 このように、アーキテクチャごとにアプリケーションを共有することによって、システム更新の省力化を実現し、同時にプラットフォーム非依存の環境設定は全マシンで共有することによって、マシン間で使用環境の不整合が発生することを防止しています。
 また、新たなユーザーの追加には、NIS(Network Information Service)を利用しています。新入生を中心とした、ユーザーのアカウント追加は、サーバーgoldのユーザーテーブルに情報を追加し、NISの機能でその情報を共有し、サーバーgoldにその人のホームディレクトリを作成して、NFSの機能を使ってどのマシンにログインしたときも見えるようにしています。
 「集中管理」のメリットには、一貫性の維持が容易、拡張性に富む、ミスの発生個所の最小化注8などがあります。ミスも環境全体で共有してしまうわけですから、注意深く作業しなければいけませんが、ミスに気がついたときには1か所直すだけですみます。
 一方、「分散管理」の場合、設定ミスがそのマシンで閉じるという面はあるものの、一貫性維持に労力がかかり、拡張時にも新規導入と同じコストがかかります。
 その結果、管理者の作業量は「集中管理」のほうが少なくなりますから、「集中管理」の導入で管理コストの大幅な削減が実現できました。
 さらに、アプリケーションのバージョンアップについては、インストール中にユーザーが当該アプリケーションを利用した場合の安全保証や、新たなバージョンに不具合が発生した場合にすぐ以前の環境を復元できるようにすることなどを考慮したうえで、工夫を凝らした独自の方式を採用しています。 図 京都ノートルダム女子大学ネットワーク構成図 京都ノートルダム女子大学ネットワーク構成図

■適材適所の考え方でSolarisが選ばれた……

Y:1999年の夏に導入された、LinuxとWindowsのデュアルブートのパソコンのLinuxが、2000年の夏、すべてIntel用Solarisに置き換えられましたよね。その理由について、詳しく教えてください。

T:Linuxが使われていたときは、Debian GNU/ Linuxでパッケージ管理していました。その場合、たとえば、Netscape1つ見たときにも、Debianのディレクトリ構成というのは、シンボリックリンクがスパゲッティ、つまり、あっち行ったりこっち行ったりしていて、Netscapeのことを調べたいだけなのに、/etcの下のディレクトリまでたどらないといけなかったりしました。
 パッケージをインストールしないで自分たちでビルドすれば、Debianでも何でもいいんですが、パッケージを使っている限り、複数のマシンでソフトウェアの同期をとるのは、すごく手間が増えることが分かりました。このような分散環境では、一貫性を保つうえで見落としがでる可能性が高まります。すべてのマシンで設定を確認するのと、1ファイルで設定を確認することの違いですね。
 そこで、集中管理方式に切り替える決心をしたのが、2000年の春でした。最初考えていた方法は、Debianを裸でインストールし直して、ソフトウェアは、パッケージではなくて自分たちでビルドして、NFSで完全にシェアできる形を作ることでした。
 しかし、ちょうどそのタイミングで、Solaris 8が非商用、商用ともフリー注9で提供されるようになったので、「全部、OSを入れ替えないといけないのなら、せっかくSolaris 8が使えるんだから、Solarisにするのも悪くないな……」ということになりました。
 また、「留学生が中国語、韓国語など母国語の使える環境注10を希望している」ということも聞いていました。localeのことを考えると、Solaris以上の環境はありませんから、そんなこんなで、Solarisになったということです。
 先に述べたように、本センターでは、全学生が同じ環境を使わないといけないため、ソフトウェアを共有します。そのような環境ではパッケージ管理が使いにくかったというだけで、すべてのユーザーにとってパッケージ管理は使いにくいと思っているわけではありません。たとえば、うちの大学でも、よしだ先生にはLinuxを使ってもらってますし。適材適所ということで学生の環境にSolarisが選ばれただけです。

Y:自分でソースからビルドできる人や、システム管理者のように、NFSの設定などいろいろしないといけない人には、違うニーズがあるということですね。

T:/etcの下に、アプリケーション固有の情報を入れてしまうと、NFSでシェアできなくなってしまうんですよ。もちろん物理的にはできるんですが、/etcは本来、マシン固有の情報が入っているところなので、そこにパッケージの情報も一緒に入っていると、非常にNFSがしにくいので、「パッケージインストールとNFSは両立できないな」と思いました。
 究極の形というのは、すべてディスクレスにしてしまうことなんですが、ここの場合は、パソコンをWindowsとしても使う必要があるのでそれも適さず、折衷案として、「NFSを使った集中管理」を選んだということですね。
 まとめると、「なぜ、LinuxがSolarisになったか」の理由は、localeの問題と、Solarisがフリーになったことですね。
 もともと、メールサーバー、NFS/NISサーバーのgoldのOSはSolarisでしたし、X端末からもgoldを利用しているので、学生の利用環境を同じOSで統一したほうがいいという考えもありました。コマンド体系が、X端末とPCで異なると混乱するでしょうし。
 しかも、すべてSolarisにしてしまうと、/homeのマウントも楽です。何も設定しなくてもマウントしてくれますから。

■「拡張性」、「相互運用性」のために……

Y:Solarisは、LAN上で、複数のマシンでソフトウェアを共有しながら使うものだと思って作られていて、サーバーはクライアントとは別のマシンで動いていて、/homeはマウントして使うのが当然という世界なんでしょうね。

T:最初から、拡張性重視で作られている点が、Linuxとの違いですね。
 Linuxというのは、ローテクの集まりでできているイメージがありますよね。その代わりに、対応デバイスが多いという大きな利点があります。個人的には、ハイテクを使ったうえでカバーしきれない分にローテクを使うというポリシーを好んでいます。
 今回の場合、ハイテクなのが使える環境があって、それが向いている場面で、わざわざローテクの集まりとも思えるものを選ぶ必要はなかったわけで……。

Y:そうですよね。個人ユースだと、多国語環境も必要ないし、対応デバイスやすぐに使えるバイナリが多いことのメリットが重要なんです。津邑さんは「WindowsもクライアントとしてはよくできたOSだ」って、先日の公開講座のあとで、いわれてましたよね。

T:「よくできた」は、ちょっといい過ぎだったかもしれませんが、Windowsというのは、適当にいじってればそれなりに使えてしまうわけで、それはそれですごいと思うんですよね。使う場面によっては、なくてはならないものです。
 同じように、SolarisとLinuxも、どっちが優れているというものではなくて、自分の使い道によってどっちがいいかは違ってくるものです。使う環境によってOSを選ぶべきで、Windowsが選ばれる環境というのも、あるわけですよね。
 最近のLinux使いの人の中には、何でもかんでもLinuxがいいという考えの人がいるのが気になります。

Y:う、私もその1人かな。でも、だれかさんのおかげで成長した注11ので、最近はそうでもないはずなんですけどね。

T:そういう人は主に「Linuxしか使ったことがない人」ですね。最初にLinuxからUNIXの世界に入るというのは、間違ってないと思います。簡単にいろんなことができますし。でも、自分に向いたOSというのは、だんだん使っているうちに分かってくるもので、できればいろんなOSを使ってから比較してほしいと思いますね。
 LinuxとSolarisは思想が違います。Linuxは、場当たり的に実装している部分も多いので、そっちのほうから入った人から見ると、ハイテクなやり方というのは趣味にはあわないかもしれませんが、そういうOSの存在も認めてほしいなぁと思います。
 ちなみにSolaris批判としては、「Solarisは重い」というのもよく聞かれる都市伝説(笑)なのですが、かなり旧型の非力なマシンで動かそうと思わない限りは、実際に使ってみるとそんなことはないということが分かると思います。
 実際、ピーターソン先生のお話だと、LinuxをSolarisにリプレースした直後、速くなったと学生がいっていたらしいですね。たぶんNFSのパフォーマンス注12などもきいていると思うので、一概にはいえないと思いますが。メモリ管理1つとってみてもかなり優れているので、決して遅くはないと思います。

Y:お金をかけずというか、お金がないところで、人と協力しあってこんなものを作った……というのは、それはそれで素敵だし愛着も湧きますよね。でも、別の世界も大切にしないといけないと思います。UNIXの世界はもともと、いろんな個性を尊重しあう文化ですから。

T:それがまさに「相互運用性」でしょう!(笑)Solarisは、SVR4とか、もう過去のものといわれるかもしれませんが、統一UNIXに基づいている部分が多く、「Solarisに固有」という部分は少ないと思います。同じ知識がほかの同系OSにも使えたりする。でも現状のLinuxなどでは、「Linux固有」にとどまらず「ディストリビューション固有」なんてものまででてきているわけで……。

Y:私も、RPM形式が標準として使われる世界には違和感を感じています。パッケージ管理が必要な場面もあるわけですが……。Linux使いの人への津邑さんからの忠告をまとめると「いろいろ使って、選んでほしい」ですか?

T:個人では何を使うのも自由なので、いろいろ使う理由はないかもしれません。最初にLinuxを使って、それで満足がいく場合はそれでいいですし、もし満足がいかない場合だけほかのを使ってみればよいかと思います。
 ただ、ほかの選択肢があるんだということは忘れないでほしいとは思います。
 「いろいろ使ったうえで」というのは、主にOS比較の議論をしようとする人や、ほかのUNIXのやり方を否定しようとする人にいいたいことですね。

■センターの今後について

Y:センターのこれからについては、山本美明さんのほうからお願いします。

山本美明さん:2001年4月には、新しくコンピュータ教室を設置します。オープン利用室の13台を含めて63台の新規増設です。これらには、WindowsとSolarisを搭載する予定で、UNIX系OSの教育環境もより広がるものと考えています。
 また、モバイル環境の可能性を探るため、実験的にノートパソコン10台を貸出用に用意するとともに、一部に無線LANを利用できる場所を提供します。同時期に、既存の図書館、視聴覚教育センター、コンピューターセンターを統合し、的確に速く情報を収集し提供するための組織として、「学術情報センター(仮称)」が設立されることになっています。
 詳細は4月以降にWebで公表の予定ですが、3施設を有機的に統合することにより、提供サービスの多様化や質的向上が図られます。3施設の接着剤として、またサービスの提供手段として、情報部門はますます重要となるでしょう。
 現在、近隣の大学の6名のアルバイト学生注13が、システム管理や情報機器のメンテナンスなど、施設の運営にとって重要な部分を担っています。
 これに関しては、本学のような小規模の大学では、「システム管理に携わっている者が直接に学生の中に入っていくことができる」ということが、きめ細かなサービスにつながるのではないかと考えています。教育にかかわってもらっていることも含めて、彼らには感謝しています。
 これからは、本学の多くの学生をどんどん運営にかかわらせることで、教育やサービスの多様性を確保したいですね。

■センターを支えるシステム管理者たち……

Y:そうですね。ところで、田中さんが津邑さんを紹介してくださったわけですが、ここ半年でシステムは大きく変わりましたよね。

田中利彦(たなかとしひこ)さん:以前は、割といい加減に各自(その年のアルバイトなど)が設定したり、適当なディレクトリにインストールしてました。おかげで僕がきたときはgoldのディレクトリ構成は、わけが分からず、砂漠のようでした。津邑さんがきてからは、ソフトのアップグレード・インストールなどする場合のルールを作り、一貫性を持って作業しているので後任の人にも分かりやすくなったと思います。
 また新しいマシンを導入した場合、OSをインストールしたあとに行わなければならない設定をできる限り少なくしました。この作業が多くなるとついつい1つ2つ忘れてしまい、後日不具合が生じるということになりかねませんから。たとえば、コンパイルするときに-R /usr/local/libを設定することにより注14、クライアント側でOSのインストール後にldconfig相当の操作をしなくてもすみます。
 つまり、OSをインストールすればすぐに端末として使え、集中管理によりディスクレスマシンのように、そのあとの管理の手間がほとんどかからないような環境を目指したわけです。
(次回に続く)

* * *

 今回の記事は、筆者がコーディネータとなって、2000年11月11日に京都ノートルダム女子大学で実施した「秋の公開講座、UNIXおよびLinuxの歴史と役割、そして学校教育の将来展望とは……」というセミナーにもヒントを得ています。
 この中での、グレゴリー・ピーターソン先生による「An Environment for Computer-Mediated Intercultural Communication」と題する講演および、津邑さんの「ノートルダムのネットワーク環境〜UNIXによる集中管理〜」の講演内容および配布資料も参考にしました。
 また同じ日に、株式会社アックスの竹岡尚三さんによる「UNIXおよびLinuxの歴史と役割」と題する講演と、筆者自身による「ノートルダムでのネットワークリテラシー教育」という講演、UNIX Day注15の学生のガイドによる「センターのマシン見学ツアー」も行われ、約100名が集まる盛会となりました。
 ノートルダムでの話はまだまだ続きますので、次号も引き続きお届けします。具体的には、CVS注16を利用したマニュアル製作の話、UNIX Dayの学生がOS(FreeBSD)のインストールからサーバーのインストールまで担当しているマシンの管理に関する話など、堀居ひとみさん(4年生)を中心とした学生からも話が聞けました。お楽しみに。

相互運用性の観点から見たSolarisとLinux

注1 京都ノートルダム女子大学(Notre Dame Women's College of Kyoto)
ノートルダム教育修道女会注2により、 1961年(昭和36年)開学。現在は人間文化学部の中に、英語英文学科、人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理 学科という4つの学科を持つ。京都市左京区にあり、京都市営地下鉄松ヶ崎駅よ り徒歩5分。詳しくは、http://www.notredame.ac.jp/参照。 ルート訪問記の連載がスタートした直後、1995年4月号の取材で、京都ノートル ダム女子大学(当時は、ノートルダム女子大学という名称だった)を訪問してい る。その記事は、http://www.tomo.gr.jp/root/9504.htmlで読める。

注2 ノートルダム教育修道女会
(School Sisters of Notre Dame) 1833年に、南ドイツでマリア・テレジアという女性によって創立されて以降、全 世界で、学校、幼稚園、障害者の介護などの教育活動に携わっている。1948年 (昭和23年)、米国セントルイスのノートルダム教育修道女会から、4人のシスタ ーが京都に派遣され、中学校、高等学校、小学校、大学の順に学校を設立。現 在、世界のノートルダムは、34か国に広がっており、このうち28か国に学校があ る。ノートルダムのシスター(修道女)は世界中に約5,000名。

注3 SmartList
詳しくは、http://www.procmail.org/参照。

注4 MHonArc
詳しくは、http://www.mhonarc.org/参照。

注5 Emacsを利用
ノートルダムでは、古くからのユーザーのためにmuleコマンドでも最新のEmacs が起動するようになっているため、学生のほとんどがmuleと入力して、Emacs (2000年12月現在、GNU Emacs 20.7.1)を利用。

注6 WAI
Web Accessibility Initiativeの略。詳しくは、http://www.w3.org/WAI/参照。

注7 教育用のシステム
ルート訪問記の2000年11月号の大阪市立大学の訪問記事の中で紹介された「教 育用システムの要件」の5つのうちの1つが、「学生の探求心を刺激する魅力的な システム」であった。

注8 ミスの発生個所の最小化
発生する可能性のある個所の最小化と、原因究明のための調査個所の最小化を指す。

注9 Solaris 8が非商用、商用ともフリー
ただし、CPUが9つ以上のシステムについては除外される。津邑さんによると、 Solarisがフリーになったころから、ソースも公開される旨は発表されていたが、 当初の予定が延び延びになり、先日(2000年12月1日)やっと公開されましたとの こと。SPARC版/Intel版ともに、バイナリと同様メディア代(75ドル)のみで入手 することができ、ダウンロードも可能ですということだ。

注10 留学生が母国語の使える環境
京都ノートルダム女子大学には、2000年度以降、留学生が入学している。2000 年度入学の留学生の出身地は、中国、韓国、ネパールで、人間文化学部人間文化 学科に在学中。

注11 だれかさんのおかげで成長した
2000年夏に、博報堂発行の『広告』という隔月刊の雑誌で 「よしだともこのオープンソースの世界」という特集が組ま れた。その中の1つの記事に、津邑さんが「UNIX文化とオープンソース〜Linux が流行する今、消費者が見誤ってはいけないものとは何か」というタイトルの文 章を書いてくださり、学ぶことが多かった。

注12 NFSのパフォーマンス
LinuxとSolarisに対して、センターの環境で簡単なNFS性能測定を実施した。測 定にはtimeコマンドを用いた。Linuxに比べてSolarisは最悪でも引き分け、実用 上で2倍、最高で10倍程度の差がでた。原因はデフォルトのNFSバッファが小さ いためだと思われる。(田中利彦さん)

注13 近隣の大学の6名のアルバイト学生
津邑さん、田中さん以外の4人の方は、京都工芸繊維大学の方で、お名前は大宮 広義さん、岐津三泰さん、米田裕さん、安達洋明さん。

注14 コンパイルするときに-R /usr/local/libを設定することにより
ノートルダムでは、コンパイル時に-R /usr/local/libが自動的に指定されるように 設定しています。このため、実際にはデフォルトとは違う設定にしたいときにの み指定すればよくなっています(津邑公暁さん)。

注15UNIX Day
ノートルダムのコンピューターセンターで、毎週火曜日午後4時30分より実施さ れている、UNIXに興味がある学生の勉強会。主に津邑さんが講師となり、アプ リケーションの使い方、UNIXコマンド、コンピュータ/ネットワークの仕組など について勉強している。

注16 CVS
ソフトバンクパブリッシングの新刊として、以下の本がある。『バージョン管理シ ステム(CVS)の導入と活用』鯉江英隆、西本卓也、馬場肇著、ISBN4-7973- 1066-9

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Last modified: Mon May 21 14:00:37 JST 2007 by Tomoko Yoshida