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第46回 『Linuxユーザー会九州オフ』で初の公開取材を実施



1999年1月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第46回 『Linuxユーザー会九州オフ』で初の公開取材を実施

今回は、1998年10月4日に開催された「第3回Linuxユーザー会九
州 [注1](Linux Users KYushu。以下luky)オフライン・ミーティ
ング」を公開取材させていただきました。取材を受けてくださった
のは、柴田尚明(しばた ひさあき)さん、佐塚秀人(さづか ひで
と)さんをはじめとする50名近い参加者の皆さんで、会場となった
九州大学大型計算機センター [注2](以下センター)については
センター研究開発部助手の伊東栄典(いとう えいすけ)さんに紹
介していただきました。

また、会場で行われた多くのデモの中から、とくに永井秀利(なが
い ひでとし)さん、丸市展之(まるいち のぶゆき)さん、鳥居正
年(とりい まさとし)さん、小田誠雄(おだ せいお)さんに詳し
い話をお聞きしました。当日、会場では、Linuxのインストール相
談、ネットワーク上のソースをCD-Rに焼くサービス、持ち寄った景
品のジャンケン大会、環境調査アンケート大会が夕方まで繰り広げ
られ、その後は懇親会で締めくくられました。


*会場となった九州大学大型計算機センター

私(以下Y):では、「ルート訪問記」の公開取材を始めたいと思
います。皆さんの中には「ルート訪問記って何?」という方もいらっ
しゃるかもしれませんが、これはいろいろな場所のシステム管理者
さんを訪ねて、システムの自慢や苦労話をまとめた連載記事であり、
ソフトバンクから発行されている月刊誌「UNIX USER」に’95年2
月号から掲載されています。

 ここに集まっている皆さんは、いまさら「ルートって何?」とは
思わないはずですが、一応説明しておきましょう。システム管理者
はroot権限でシステム管理の仕事を行うため、rootのパスワードを
知っています。これによって、rootでログインする、あるいはコマ
ンド行からsuコマンドを実行して「#プロンプト」を出して作業が
できるので、このような人を「ルートさん」あるいは単に「ルート」
と呼びます。本連載は、そのような人たちを訪ねる記事のため、
「ルート訪問記」という名前にしました。

 まずは、本日の会場であるセンターについて教えていただけます
か。

伊東さん(以下I):大型計算機センターは、本学以外に北海道大
学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学に設置
されている施設で、全国の国公立私立大学・短期大学、高等専門学
校に所属する教員や大学院学生が研究・教育目的で利用可能です。

 本センターでは、「スーパー・コンピュータを用いた大規模数値
計算」、「データベース検索」、「ネットワーク」という3つのサー
ビスを行っています。数値計算にはUNIX系OSであるUXP/Vを搭載し
た富士通VPP700/56が、データベース検索やプログラム作成などの
対話処理には汎用計算機の富士通M-1800/20Uがそれぞれ用いられて
います。汎用計算機にはUNIX系OSであるUXP/Mと、IBM互換OSである
MSPの2つが同時稼働しています。

 ネットワークについては、’94年3月に創設された九州大学総合
情報伝達システム(KITE)という独自組織があり、ここで九州大学
のキャンパスLANからSINETへの接続、および九州内SINET接続機関
への中継接続を行っています。’96年3月からはATMネットワーク
も導入しており、九州大学や九州内各組織へのネットワークを支え
ている組織といえます。

 本日、会場となったのはセンター内の「情報サロン」ですが、こ
こは10月1日にオープンしたばかりです。ズラッと並んだ20台のPC
は、センターを利用するために申請書類を提出した人だけでなく、
本学の教職員や学生も使用できます。一番の特徴は、部屋の後ろ半
分にDHCP対応の情報コンセントが32個用意されている点で、個人の
PCを直接インターネットに接続することが可能です。スーパー・コ
ンピュータや汎用計算機と違って学生も自由に使えるので、気軽に
来て、講義のレポート作成やインターネットを用いた情報収集に活
用してほしいですね。


*luky誕生・発展の歴史はLinux使いの出会いから

Y:では次に、全国的なLinux Users MLの九州/沖縄向けサーバー
を立ち上げられたり、日本Linuxユーザ会(JLUG)Webページのミラー・
サイトを提供されている柴田尚明さんから、サービスを開始するこ
とになった背景についてお伺いしたいと思います。

柴田さん(以下S):Linux Users MLは配送数が多いため、東京と
大阪にはすでに配送サーバーが用意されていました。「九州/沖縄
向けサーバーも用意できないか」という話が出た際、「メールの配
送ぐらいなら、私の方で何とかなりますよ」ということになったん
です。それで、’97年3月に立ち上げました。

 現在、同サーバー(his.ktarn.or.jp)は久留米・鳥栖地域イン
ターネット協議会 [注3](以下協議会)によって運営されており、
私はそこからサーバーの管理を委託されている立場です。なお、同
サーバーの運用は久留米・鳥栖広域情報株式会社に委託されており、
同社内に設置されています。協議会は、久留米工業大学の佐塚秀人
さんが発起人となってスタートしたものです。

佐塚さん(以下Z):当初、研究会として発足した協議会では、’
96年4月から商用ネットワークとの接続による地域プロバイダ事業
を開始し、’96年5月からは一般向けダイヤルアップ接続サービス
「インターネット久留米」も開始しました。’98年3月末には同サー
ビスの利用者も1,800名を超えたため、プロバイダ事業についても’
98年4月からは久留米・鳥栖広域情報株式会社に移管しました。

S:「インターネット久留米」のマシンには、すべてPC UNIXを導
入しています。サービスを開始する際、各企業がいくつかのシステ
ムを提案しました。そのとき、私も企業の技術者として「BSD/OSを
導入したサーバーによるシステム」を提案しており、これが採用さ
れたのです。当時、個人的にはLinuxを使っていましたが、さすが
にまだLinuxでは受け入れてもらえないだろうと思い、BSD/OSを入
れたシステムを提案しました。

 その後、ネットワーク技術者として協議会に出入りするうちに、
佐塚さんが私と同じ「Linux使い」であることを知りました。この
Linuxの輪は、その後さらに大きく広がり、今日のような集いを開
くようになったわけです。システム提案時に、「佐塚さんがLinux
使いである」と分かっていたら、BSD/OSではなくLinuxで提案して
いたかもしれません。

Z:今日も参加されている富永広貴さんと親しくなったのも、お互
いが「Linux使い」と分かったからでした。研究会を作ろうとした
ころですから、’94年ぐらいだったと思いますが、久留米大学に行っ
た際に富永さんのマシンでLinuxが動いているのを見て、「うわ、
Linuxなんか動いてるじゃない」と驚き、すぐに意気投合しました。

Y:なるほど。「Linux使いであることが人と人を結びつけ [注4]、
それが発展してlukyのような素敵な会になった」という背景がよく
理解できました。


*BookViewのデモとDVD-RAMパッチ

Y:次に、BookView [注5] でCD-ROM辞典を利用するデモや、ご自
身が作成されたパッチを使ったLinuxでのDVD-RAM [注6] 利用のデ
モをされていた永井秀利さん(九州工業大学 助手)に、詳しい内
容をお聞きしたいと思います。

永井さん(以下N):今回、BookViewを使ってアクセスしているの
は、研究社の新英和中辞典です。辞書(約82Mバイト)はCD-ROMの
まま使うこともできますが、私はハードディスクにコピーして(圧
縮可能)利用しています。

 BookViewはNDTPD [注7] のクライアントですから、NDTPDでアク
セスできるCD-ROM書籍ならすべて利用可能です。

 私の場合は、ほかにも研究社の新和英中辞典や広辞苑、学研の英
和・和英・国語・漢和辞書を選択して使えるようにしてあります。
昔のdserverと比較すると、外字ビットマップが表示できるように
なったのがうれしいですね。代替文字を定義しなくても、発音記号
や特殊文字といった外字が確認できますから。

Y:なるほど。それは便利ですね。

N:BookViewの方は既存のソフトウェアを使っているだけですが、
こちらのDVD-RAMドライブ(Panasonic LF-D100J)を利用するため
のLinux用パッチは自分で作りました。

 要するに、CD-ROMとしてしか利用できなかったものを、Linuxの
カーネルにパッチ(2048 byte/sectorパッチとDVD-RAM対応パッチ)
を当てて、DVD-RAMとして使えるようにしたわけです。パッチは、
Linux Users MLの過去ログから入手可能 [注8] です。

 DVD-RAMは640MバイトのMOと同様、セクタ・サイズが2048バイト
なので、現在の2.0.x系カーネルのままではアクセスできません。
ですが、この問題には私もかかわって作成されたパッチ
( http://liniere.gen.u-tokyo.ac.jp/2048.html )があったので
「きっと使えるはず」とDVD-RAMを購入したのですが、ちょっと厄
介な相手でした(笑)。

 PDドライブを利用している方ならご存じだと思いますが、PDと
CD-ROMとはLUN(Logical Unit Number)で識別されています。そこ
で、「DVD-RAMドライブについてもDVD-RAM、PD、CD-ROMはLUNで識
別されているだろう」と予想したのですが、見事に外れました。こ
のドライブは、SCSIの問い合わせに対してLUN 0のときしか
「CD-ROMである」と答えません。Windows 95のドライバの情報を見
てみると、同じSCSI ID、同じLUNでドライブにアクセスしているよ
うでした。ならば、Linuxでも「うまくだましてアクセスしてやれ
ば使えるのでは?」と考えて作成したのがDVD-RAM対応パッチです。

 ファイル・システムについては、UDF [注9] のドライバがない
のが少しつらいところですが、ext2fsでとくに問題なく利用できて
います。いまではバックアップやさまざまな作業用に、バイト単価
の大変安い(1Mバイト当たり約0.7円)リムーバブル・ディスクと
して活躍しています。なお、2.1.x系カーネルでは、最初から2048
バイト/セクタのメディアにアクセスできますから、DVD-RAM対応パッ
チを当てるだけで使えているようです。

Y:永井さんのLinux歴はどれくらいですか。

N:最初にLinuxを入れたのは、FM TOWNS(以下TOWNS)でした。当
時はTOWNSにLinuxが移植されて間もないころなので、カーネルのバー
ジョンは0.96だったと思います。XもまだX11R5で、ディストリビュー
ションもSLS [注10] が主流のころでした。それから考えると、けっ
こう長いことになりますね。長いだけでしかないですが(笑)。

 ちなみに最初に入れたTOWNSは、今年の7月にハードディスクが
壊れるまで現役で活躍していました。386DX/16MHzでここまで頑張
れたのは、Linuxのおかげですね。


*自作の高機能CDプレーヤ・ソフト

Y:次に、ご自分が作られたソフトウェアを紹介された丸市展之さ
んに、詳しいお話を聞きたいと思います。

丸市さん(以下M):私は主にTOWNSでLinuxを使っているのですが、
今日は広島から新幹線で来たため、TOWNSではなくVAIO
(PCG-505EX/64)だけを持ってきました。では、私が作ったソフト
ウェアを紹介しましょう。

 まずは、mwxcd [注11] という名前のCDプレーヤです。これは、
TOWNS用フリー・ソフトウェアとして有名なWhips互換のデータベー
ス機能を採用したLinux+X11R6用CDプレーヤです。ディスクの登録
機能としてはアルバム・タイトル/アーティスト名/各トラックの曲
名が登録でき、加えて各トラックの歌詞を入力しておくことでCD再
生に合わせて連動表示できるという高機能なものです。今回持って
きたVAIOの上で動いているCDプレーヤも、これに相当する機能を持っ
ています。

 開発を始めたころは、TOWNS LinuxでCD-ROMのドライバが開発さ
れた直後でした。この段階ではTOWNS依存の実装となっていて、
workmanなどが使用できませんでしたが、後にPC/AT互換機用ドライ
バとの互換性が実現されたため、ミキサーでも互換性を取れるよう
にしました。現在では、TOWNSとPC/AT互換機の両方のLinuxで動作
するようになっています。これには、基になったCDプレーヤの作者
にも協力していただきました。

 さて、次のデモは、X Toolkit+Athena Widgetでのプログラム開
発補助ツールacconv [注12] です。これは、アプリケーションを構
成している部品ツリーの形式で扱い、その部品個々のソース・コー
ドが作成できます。

 editres(リソース・エディタ)を利用すれば分かると思います
が、多くのX用アプリケーションはWidgetという部品で構成されて
います。acconvを使えば、この部分をテスト的に自動生成できるわ
けです。

 基本的にはXでプログラムを組んでみたい人が、試しに利用する
ぐらいしか使い道がないかもしれませんが、私自身はいくつかのプ
ログラムに同ツールで作成したCのコードをコピーして利用してい
ます。

 今回紹介したもの以外にもいろいろなツールを作成していますが、
それについては、

http://member.nifty.ne.jp/nmaruichi/

を参照してください。上記のページではソースが入手できるほか、
内容についても詳しく紹介しています。また、私はNIFTY SERVEの
フォーラムFTOWNSのスタッフでもあり、上記のツールは同フォーラ
ムからも入手可能です。

Y:TOWNS Linuxが登場したころのことを教えていただけますか。

M:TOWNSへの移植は、Linuxが発表されてから比較的初期段階に始
まっています。TOWNS Linuxの初版は、’92年7月21日に公開され
ました。LinuxのVer.0.11がリリースされたのが’91年12月なので、
TOWNSへの移植はかなり早いといえます。私自身は、’92年末か’
93年初頭に使い始めました。

 それ以降、多くの人の努力によって、TOWNSで利用できる多くの
デバイスがTOWNS Linuxでサポートされています。現在の最新バー
ジョンは、「Linux for FM TOWNS 2.0.35 working 4.1」です。


*PostgreSQLを使ったデータベース・システム

Y:次に、PostgreSQLを用いたデータベース・システムのデモを行っ
た鳥居正年さんに、お話を伺いましょう。このシステムを構築され
たきっかけなどを教えていただけますか。

T:私は医療機器の営業をしているため、「この仕事にLinuxが利
用できないものか」と考えました。その結果、顧客管理のデータベー
スをPostgreSQLで作ることにしたのです。現在、試験運用ながらも
動いております。

 データベース・サーバーにはPostgreSQL 6.3.2を、ユーザー・イ
ンタフェースにはPHP/ FIサーバー・スクリプトをそれぞれ使用し
て、Apache上でデータを照会できるようにしています。たとえば、
納入先の施設を6桁のコードで入力すると、その結果が表示されま
す。コードを採用したのは、具体的な名前では人によって呼び方が
異なる場合があるからです。

 このシステムの一番の売りは、どのようなプラットフォームから
でもWebブラウザ経由でデータの照会ができる点ですね。Windows環
境で使われているデータベースでは、作る方も見る方もそれぞれ専
用ソフトが必要になるので、それと比較すると非常に便利です。

 また、データの検索スピードも、現在Media GX 133MHzのマシン
で運用していますが、まったく問題ありません。一番の問題(難関)
は、このシステムを会社のLANに入れてもらうことでしょうか。現
状ではWindows 95/NTでネットワークが構築されており、Windows以
外のOSは敬遠されています。Linuxをサーバーとして使うことで、
このような便利なシステムが構築できるのだから、会社の問題を早
期に解決させて、九州地区のみのデータベースを全国まで拡大させ
たいと考えています。

 これと同時に、Namazu [注13] を使った日本語全文検索システム
を構築し、社内文書の整理に役立てていく計画を進めています。
Namazuを使った日本語全文検索システムは、Linux Users MLの検索
などに利用 [注14] させていただいており、その機能の高さを十分
理解しています。Namazu+PostgreSQLというシステムなら、Namazu
でインデックス検索して必要とするデータを自動的に取り出せるよ
うな仕組みが作れるはずです。現在、わが社では、本社に情報を問
い合わせると「わざわざ人が調べて、コピーして送っている状況」
なので、少しずつでも情報を電子化し、検索利用可能にしたいと思っ
ています。

 「フリーのソフトウェアでは、たいしたことはできないでしょ」
とか「フリーのソフトウェアにはサポートがないから、活用できな
いのでは?」と思っている人もいますが、それはまったく逆ですね。
PostgreSQLやNamazuに限らず、本当に優れたフリー・ソフトウェア
は数多くあり、メーリング・リストやWebページから豊富な情報を
得ることが可能です。

 私の場合、Linux Users MLにどれほど助けられたか分かりません。
あの存在がなければ絶対にあきらめてしまったようなことも、的確
なアドバイスのおかげでやり遂げることができました。今度、
Linux Users MLをはじめとする、多くのメーリング・リストでの情
報がNamazuで検索できる「Doc-CD [注15] 」が発売されるそうです
ね。これは、ぜひ利用したいですね。

Y:鳥居さんは「営業のお仕事をされている」とのことですが、
UNIXやLinuxとの出合いについて教えていただけますか。

T:初めてLinuxの名前を知ったのは大学生のころですから、5年
ほど前になります。当時は、学校の授業でUNIX系OSを使っていただ
けで、主にPC-9801シリーズを使っていました。Windows 95が発売
された時期、ちょうど自宅のPCの買い換え時期だったので、今度は
PC/AT互換機を購入しました。最初はWindows 95で遊んでいたので
すが、DOSの時代がなかなか忘れられずにいると、ふとPC UNIXの存
在を思い出したのです。すぐに書店を歩き回り、『Run Run Linux』
を購入しました。

 最初は、LinuxからはPPP接続もできず、Windows環境でLinux
Users MLに入り、いろいろアドバイスを受けてようやくPPP接続で
きるようになりました。Linux上でメールやネット・サーフィンが
できるようになってからは、Windowsはほとんど使用せず、いまで
は会社でもTeX環境で社内文書を印刷し提出しているほどです。

Y:鳥居さんが計画されているデータベース・システムが、九州地
区だけでなく全社的に広がることを陰ながら応援させていただきま
す。


*会場に設置されたライブ・カメラ

Y:最後に、会場に設置されたライブ・カメラについて、小田誠雄
さんにお聞きしたいと思います。Webブラウザ画面上のコントロー
ル・パネルの操作で、会場に設置されたカメラが方向を変えたり、
ズームしたりして、写真が撮影できるのですね。

小田さん(以下O):はい。これは昨年作成したもので、第1回ミー
ティング(luky)のときから使っています。そのため、このメンバー
にはもう珍しくはないでしょうけど……。

Y:このシステムについて、詳しく説明していただけますか。

O:カメラはキヤノン製VC-C1 mkUを利用しました。これはビデオ
信号の出力ラインのほかにRS-232Cの制御用信号線を持っているた
め、コンピュータによる制御が可能です。Linuxをサーバーとして
用い、制御プログラムはPerlで作成しました。この制御プログラム
(CGI)が、利用者からWebサーバーを通じて呼び出されることで、
ライブ・カメラとして機能する仕組みです。

 ビデオ信号は、PCMCIAのビデオ・キャプチャ・カードによってPC
に取り込まれ、JPEG変換フィルタを介して、Web上のデータとして
ブラウザに転送されます。PCMCIAカードを用いたのは、UNIX系OSで
サポートされている数少ないビデオ・キャプチャ・カードの1つで
あり、ノートPCで利用可能なためです。

Y:どういうきっかけで、これを作られたのでしょうか。

O:私は福岡工業短期大学 [注17] で教えているのですが、そこの
卒業研究の学生数人と一緒に作りました。

 Webページの作成は、短大の卒業研究の課題としてちょうどよい
ため、数年前から学生に作らせています。ただ、単純なWebページ
は世の中にあふれていて面白みがないので、ひとヒネリしたものを
いろいろ工夫しています。ライブ・カメラはその1つです。

Y:サーバーには、当然Linuxを使用しておられるんですね。

O:実は、当然ではなかったのです。私はBSD派だったので、最初
はBSD/OSで動かそうと思っていたのですが、同OSのビデオ・キャプ
チャ用ドライバが見つかりませんでした。ドライバを探したところ、
lukyにも入っていらっしゃる岡村耕二先生の作成したLinux用スナッ
プ・キャプチャ・ドライバ [注18] が見つかったので、Linuxを使
うことになったのです。Linuxを使い始めたのは、それが最初です
ね。

Y:そうだったんですか。新しいOSとの出合いは、そんなものなの
かもしれませんね。

ではこれで、ルート訪問記の公開取材を終わりたいと思います。あ
りがとうございました。

 次号では、「よしだともこの九州訪問」の続編として、久留米・
鳥栖(とす)地域インターネット協議会のネットワーク構築とユー
ザー・サポートについて紹介しますので、お楽しみに。



[注1]   Linuxユーザー会九州

九州地方に住むLinux Users ML参加者を中心とした会。福岡市の柴
田尚明さんが、九州/沖縄方面のLinuxユーザー向けにオフライン・
ミーティングを呼びかけて、集まった方々がメンバーとなっている。
公式な集まりとしては、第1回が’97年7月5日に、第2回が’98
年3月8日に開催され、今回は3回目。lukyの公式ホームページは 
http://dany.ktarn.or.jp/luky2/ である。なお、lukyの読み方に
は「ラッキー」と「ルーキー」の2通りが存在したが、’98年10月
4日に多数決が行われ、前者が正式な読み方に決定した。


[注2]  九州大学大型計算機センター

九州大学箱崎キャンパス内にある。詳しくは、 
http://www.cc.kyushu-u.ac.jp/ 参照。なお、九州大学大型計算機
センターでのlukyの開催は、lukyメンバーの岡村耕二さんがこの建
物内の情報処理教育センターに所属されていることから実現した。


[注3]  久留米・鳥栖地域インターネット協議会

福岡県南部および佐賀県東部を中心とした地域でのコンピュータ・
ネットワーク技術の向上・普及、インターネットを活用した地域情
報化などを目的に、’94年6月21日に設立された協議会。設立当時
は、「久留米・鳥栖地域ネットワーク研究会」だったが、’95年7
月に現在の名称となった。詳しくは、
http://www.ktarn.or.jp/NewHome/ktarn/ 参照。


[注4]  Linux使いであることが人と人を結びつけ

今回、筆者がlukyに参加できたのも、’98年6月の“Tokyo Linux
Fair”で柴田さんとお会いしたことがきっかけとなっている。’98
年12月18日には、京都国際会館で“Linux Conference ’98”が開
催され、多くのLinux使いが集まる予定。当日の夕方には、「Free
BSD友の会」の方々との合同懇親会が予定されており、非常に楽し
みである。詳細は、 http://iw98.linux.or.jp/ 参照。

# ’98年12月18日の京都でのイベントは大成功でした。柴田尚明 
さんは、九州から家族連れで来られていました(1999.7.25 よしだ)。


[注5]  BookView

BookViewはTcl/Tkで書かれたNDTP(Network Dictionary Transfer
Protocol)クライアント。フリー・ソフトウェア(GPL2に従って配
布)であり、動作環境としてはTcl7.6jp/Tk4.2jpかTcl8.0jp/Tk8.0jp
が必要。詳しくは、
http://www.sra.co.jp/people/m-kasahr/bookview/index-ja.html
参照。


[注6]  DVD-RAM

Digital Video Disc-RAMの略。これは、片面2.6Gバイト、両面5.2G
バイト(裏返す必要あり)の書き換え可能な光ディスクである。


[注7]  NDTPD

TCP上のNDTPを用いて、CD-ROM書籍へのアクセスを行うソフトウェ
ア。これは、UNIX系OSのシステム上で動作させることができ、EB、
EBG、EBXAおよびEPWING形式のCD-ROM書籍に対応している。デフォ
ルトではスタンドアロンで動作するが、inetd経由での起動も可能。
フリー・ソフトウェアとして、GPL2に従って配布されている。詳し
くは、 http://www.sra.co.jp/people/m-kasahr/ndtpd/index-ja.html 
参照。


[注8]  Linux Users MLの過去ログから入手可能

永井さんは、Linux Users MLに、「Panasonic DVD-RAM Drive
LF-D100J」というタイトルの3通の投稿(26125番、26189番、
26232番)をしており、これらはそれぞれ 
http://his.ktarn.or.jp/ML/linux-users.2/msg05573.htmlhttp://his.ktarn.or.jp/ML/linux-users.2/msg05637.htmlhttp://his.ktarn.or.jp/ML/linux-users.2/msg05680.html 
で見ることが可能。


[注9]  UDF

Universal Disk Formatの略。ISO 9660に書き込み規定を加えたISO
13346をベースとした形式。DVD(DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-VIDEO、
DVD-R)の統一標準フォーマットで、連続した大きなファイルを扱
うのに比較的向いている。


[注10]  SLS

’92年に登場したLinuxディストリビューションで、Linuxカーネル
を中心に人気ソフトウェアを集めて自動インストーラを付けたもの。
SoftLanding Softwareの略。SLSの登場によって、大衆が気軽に
Linuxをインストールできる時代がスタートしたわけだが、’93年
にSlackwareがリリースされてからは次第に影を潜めた。


[注11]  mwxcd

mwxcd(前バージョン)については、「Run Run Linux」(第2版)
のTOWNSの章でも紹介されている。さらに、「Oh! FM TOWNS」誌や
「Software Design」誌の記事でも紹介された。最新版(バージョ
ン1.30alpha)は、
http://member.nifty.ne.jp/nmaruichi/download/mwxcd-1.30alpha.tar.gz
から入手できる。


[注12]  acconv

acconvという名称は、Athena Widget/Code Converter(Athena
WidgetをC言語のコードへ変換)という意味から付けられた。最新
版(バージョン0.1.1)は、
http://member.nifty.ne.jp/nmaruichi/download/acconv-0.1.1.tar.gz
から入手できる。


[注13]  Namazu

当日は、Namazuについて詳しく書かれた『日本語全文検索システム
の構築と活用』(通称「なまず本」)の発行直後であったため、
Linux Users MLで話題になっていた同書はジャンケン大会における
一番人気だった。このジャンケン大会は、筆者の隣に座っていた幼
稚園児「柴田ゆうか」ちゃんが「大人もジャンケン・ゲームをする
のね」と感心するほどの熱気のこもったものであった。


[注14]  Linux Users MLの検索などに利用

柴田尚明さんが提供されている  http://his.ktarn.or.jp/ML/  は、
まさにNamazuを利用してLinux Users MLなどのアーカイブを検索利
用できるページである。


[注15]  Doc-CD

Doc-CDはLinux関連の各種ドキュメントを中心に収録したCD-ROM。
Linux Users MLに投稿された3万通を超えるメールを中心に、20種
類のメーリング・リストのメールやRFCなど、合計500Mバイトもの
情報が収められている。これらは初期設定を行うだけで、Netscape
NavigatorなどからNamazuを使って一発で全文検索できるように工
夫してある。詳しくは、http://Doc-CD.linux.or.jp/ 参照。


[注16]  ライブ・カメラの画面

この写真は、毎回父親と一緒にLukyへ参加している小学1年生の柴
田のりあき君が、手元のコントロール・パネルを上手に操作して、
自分の姿を含む画面を撮影してくれたものである。


[注17]  福岡工業短期大学

電子・情報分野では国内で最も長い歴史と伝統を持つ短期大学で、
所在地は福岡県福岡市東区和白東3-30-1。詳しくは、
http://www.fit.ac.jp/Jindex.html  参照。


[注18]  Linux用スナップ・キャプチャ・ドライバ

LUKYのメンバーである岡村耕二さんは、現在、「Software Design」
誌で連載「Linuxでマルチメディア」を執筆しており、’98年11月
号と’98年12月号ではLinux用スナップ・キャプチャ・ドライバを
解説している。


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*コラム PostgreSQLの正しい発音は?

 PostgreSQLの日本でのメーリング・リストを担当されている石井
達夫さんに、正しい読み方を聞いてみたところ、以下のようなお返
事をいただきました。


以前、米国やカナダの開発者にPostgreSQLの読み方を聞いてみたこ
とがありましたが、結局はっきりした答えは得られませんでした。
私自身は「ポストグレス」と読むことが多いです。こう読む理由に
ついては、PostgreSQLが生まれた経緯をお話しなければなりません。
まず、UCBでpostgres(ポストグレス)というDBシステムが開発さ
れました。

その後、postgresからpostgres95(ポストグレス95)というシステ
ムが派生し、これがPostgreSQLの直接の原型になりました。’95年
を過ぎると、「postgres95という名前はまずいんじゃない?」とい
う疑問が開発者から生まれ、PostgreSQLへと変更されました。とい
うわけで、呼び方としては「ポストグレス」なのですが、どうして
もオリジナルのpostgresと区別する必要がある場合は「ポストグレ
エスキューエル」を使っています。

PostgreSQLに関する情報については、
http://www.sra.co.jp/people/t-ishii/PostgreSQL/ を参照してほ
しい。
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(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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