[Date Prev][Date Next][Thread Prev][Thread Next][Date Index][Thread Index]

第38回 図書館、計算機センター、情報教育の機能統合化に貢献したUNIX



1998年3月号 UNIX USER誌掲載「ルート訪問記」の過去記事

第38回 図書館、計算機センター、情報教育の機能統合化に貢献したUNIX

今回は大阪市立大学学術情報総合センター[注1](以下センター)
の教授である松浦敏雄(まつうら としお)先生を訪ね、センター
の構造やユーザー・インタフェース論、情報リテラシ教育について
お聞きしました。なお取材には、大阪産業大学の中村 孝さんと大
垣斉さん[注2] にも同行していただきました。


==========
[松浦敏雄さんからの新規コメント]  

  ルート訪問記には、知っている人が掲載されることも良くあるの
で、楽しみにしています。知らない方の場合でも、苦労されておら
れる様子がわかり、「そうだそうだ」とひとりで相槌をうっていま
す。これからも、楽しい記事を期待しています。

  記念に頂いたTシャツを来て、先日(1999年7月)、長野で開かれた
情報教育関連のシンポジウムに出席したんですが、Tシャツをみて
いろんな方が声をかけて下さいました。なんと、同じTシャツを来
た人もいたのには驚きましたが、お蔭で親しくなれました。
(1999.8.9  松浦敏雄)
==========


*図書館、計算機センター、情報教育の機能を統合

私(以下Y):こんにちは。連載をスタートさせて以来、ルート訪
問する日を楽しみにしていました。まず最初に、大阪市立大学のネッ
トワークについて紹介していただけますか? 中心となっているの
はセンターですよね。

松浦先生(以下M):はい。’96年10月にオープンしたセンターは、
図書館と計算機センターを統合した施設となっています。業務委託
を含めて約100人のスタッフがいますが、センターの専任教員(現
在8名。’98年4月から12名になる予定)はネットワーク部門、コ
ンピューティング・システム部門、図書館情報学部門、データベー
スを含むメディア・システム部門の4つに分かれ、私と助手の安倍
広多さんがコンピューティング・システム部門を担当しています。
[新規注]

==========
[新規注]  ’98年4月から12名になる予定

1998年4月に、以前、ルート訪問記('95年11月号)でも紹介された、
石橋 勇人先生(元 京都大学)を始め、4名の先生が着任された。
(1999.8.9  松浦敏雄)
==========


  厳密に分担しているわけではありませんが、われわれの部門はセ
ンター内のコンピュータ・システムの管理・運用を支援しており、
学内のネットワークはネットワーク部門の先生方が責任を持ってい
ます。

 大阪市立大学全体のキャンパス・ネットワーク(OCUNET)は、全
学(部局間)ネットワーク、センター内ネットワーク、情報処理教
育ネットワーク、サブセンター(各部局や施設)、外部からのアク
セスという5つで構成されています。

 まず全学ネットワークについてですが、杉本キャンパス−阿倍野
キャンパス間、および外部(ORIONS [注3])接続には高速デジタ
ル専用線(1.5Mbps)を用いています。[新規注]


==========
[新規注]  高速デジタル専用線(1.5Mbps)

今は、外部との接続に、ORIONSの他、OMPと6Mbpsの専用線を引いて
います。(1999.8.9 松浦敏雄) 
==========


この杉本キャンパスではセンターを中心にしたATMネットワークが
構築されており、各部局や本部、旧教養部はATMハブによって接続
しています。また、離れた場所にある生協などは、10Mbpsの光リピー
ターによってつながっています。なお、全学ネットワークの各種サー
バー類は、センター8階の計算機室に設置されています。

 センター内ネットワークとしては、各フロアーに2台のATMハブ
(地下2、3階は書庫なので1台のみ)が配置され、総合配線シス
テム(10BASE-T)によって情報コンセント [注4](センター内に
約1,450個)まで配線しています。各端末をどのサブネットに登録
するかは、LANキャビネットのパッチ盤とハブによって選択できま
す。また、トラフィックが集中する部分は、適切なサブネットとな
るように仮想LANを構築し、FDDIやFastイーサネット [注5] など
の高速ネットワークを併用しています。

 情報処理教育ネットワークはギガ・ルーターを中心に複数のFDDI
で構成されており、各FDDIにはサーバー用計算機(4台)とイーサ・
スイッチが配置されています。サーバー用計算機では、全学生のホー
ム・ディレクトリを収容しているホーム・サーバー(50Gバイト)、
ネーム・サーバー[注6] 、NISサーバー、Proxyサーバー、メール・
サーバー、ニュース・サーバー、およびアプリケーション・サーバー
などの各機能を分担しています(図1)。クライアントは情報処理
演習室に51台、端末室に51台、情報処理教育実験室(自習用)に93
台、メディア室に10台、システム相談室に5台あり、すべて
NEXTSTEP 3.3Jがインストールされています。

 外部からのアクセス用には、アクセス・サーバー(MAX 4000)を
使用してOCUNETに接続できるよう、教職員と学生向けにそれぞれ23、
市民向けに8の回線を用意しています。[新規注]


==========
[新規注]  教職員と学生向けにそれぞれ23回線

23時を過ぎると、学生向けの回線は常に満杯の状態が続いていたの
で、学生向けの回線数を46回線に増やしました。それも、すぐにパ
ンクしそうです。(1999.8.9  松浦敏雄)
==========


 また、センター内の施設としては、同時通訳ブースを備えた大ホー
ル、AVホール、情報コンセントが自由に利用できる自由閲覧室、閲
覧個室、LL教室、図書検索のためのOPAC(Online Public Access
Catalog)サーバーとOPAC端末などがあります。

 そして、図書館のマルチメディア・ゾーンにはVOD [注7] サー
バーを備えており、AVブースからネットワーク経由でVODサービス
を受けることが可能です。さらに、CD-ROMサーバーも用意しており、
電子ブックなどのデジタル資料をネットワーク経由で(学内の)ど
こからでもアクセスできます。

Y:大変素晴らしい施設ですが、本センターの1番の自慢は何でしょ
う。

M:現在、日本の多くの大学で、計算機センター、図書館、あるい
は教育用計算機センターなどの見直し、統合化が検討されています。

実際、京都大学では、情報教育と語学教育のために総合情報メディ
ア・センターが新設(’97年4月)されており、他大学においても
同様の動きが見られます。このような、図書館、計算機センター、
情報教育の3つの機能を、日本の大学で1番最初に統合化できたこ
とが自慢だといえるでしょう。実際に、全国の大学からこの1年間
で298件、3,400人以上の見学者が訪れていることからも、1つのモ
デル・ケースになっていると思います。

 また、教員組織を置いたこともポイントの1つとなっています。
通常、大学の図書館に教員組織は存在しないものですが、計算機セ
ンターと一体化したことで設置できるようになりました。このよう
なセンターが、プラスの評価を受けるかマイナスの評価を受けるか
のポイントは「いかにうまく運用できるか」にかかっています。残
念ながら、運用コストは建物のコストに比べると小さいものですが、
限られた人数で研究、教育に続く3つ目の役割「基盤支援」を果た
すことが重要だと認識しています。

 この「ネットワークおよび計算機システムの維持管理」の重要性
は一般の先生方には理解しにくいようで、「業者に任せればよい」
という意見も聞かれます。しかし、「業者に任せられる作業」とい
うのは、現状維持のものでしかありません。ネットワークも計算機
システムも最先端の技術領域であり、日々進化しています。この最
新技術の恩恵にあずかるためには、常に最新の状態に更新し続けな
ければなりません。これには単なるバージョンアップだけでなく、
維持管理の戦略を伴う高度な技術力と判断力を必要とします。

 また、さまざまな利用者から新たな要求も出てきます。これに対
していかに柔軟な対応をするか、場合によってはソフトウェアの作
成などが必要になってきますが、業者にこのような対応を求めるこ
とは不可能です。そもそも業務委託契約書には、そのようなことを
書くことができません。

 そこで内部の人間が必要となってくるわけですが、システムの維
持管理には極めて高度な技術力がいるため、探求心のある優秀な人
でないと務まらないでしょう。

Y:そのとおりですね。

M:ただ、そうなると、利用者からの質問などが技術レベルの高い
人に集中してしまいます。現在、センターの中で一番技術レベルの
高いのは助手の人たちですが、彼らにはできるだけ電話などの質問
がいかないよう、われわれがフィルタとなる努力もしています。き
ちんと運営されており、同時に研究活動もできることが重要で、こ
れによって今後の評価も決定してくると思います。

Y:ほかの大学でも同じような状況ですか。

中村さん(以下N):はい。大阪産業大学 [注8] では、図書館と
は別組織の情報科学センターがネットワークの運営を実施しており、
やっと研究員という形で教員が配属されました。しかし、専任では
なく兼務という形になっているので、情報科学センターの人間では
ない大垣さんに技術的な質問が届く状況は続いています。

大垣さん(以下A):昨年度まで、私は助手でしたから(現在は専
任講師)、「教授が助手に頼んでいるのだから、やって当然」とい
う発想で電話がかかってきました。また、ルートとして一般ユーザー
に何かいっても、「何で助手が教授に向かってそんなことをいうの
や」ということになってしまいます。これが一番やりにくい部分で
す。

M:昔は、コンピュータを使う人の数が少なかったうえに技術力も
高かったので、少し教えるだけですんだのですが、現在はユーザー
のすそ野が広がって、(われわれからすれば)ほとんど素人のよう
な先生方も使うようになりました。

A:私は「技術的な質問は、電話ではなくメールで答える」主義で
す。電話の場合、同じことを何度も説明するケースが出てきます。
情報は極力Web上にまとめるようにして、「それは、FTPサイトの○
○ファイルを読んでね」というように対応しています。


*PDP-11、VAX-11、そしてサンの時代へ

Y:松浦先生が、大阪大学基礎工学部情報工学科(以下、阪大情報)
でUNIXを始められたのは、もうずいぶん前のことになりますね。

M:UNIXについて勉強し始めたのは’76年くらいからですが、本格
的に使い出したのは阪大情報にVAX-11/780、同750が導入された’
82年末からです。VAX-11のCPUは1MIPS [注9](780)と0.6MIPS
(750)でしたから、Pentiumと比べると100分の1程度のパワーし
かなかったわけです。ただ、それ以前の汎用機よりも格段に高性能
でした。もっとも私は、汎用機ではなくPDP-11というミニ・コン
[注10] を使っていました。

 PDP-11にはブートアップROMがないため、手動でレジスタに機械
語をセットする、つまり1ビットごとに割り振られたトグル・スイッ
チを手でカチカチとオン/オフしてブートさせ、紙テープに記録さ
れたプログラムをメモリに読み込ませていました。非常に原始的で
すが、計算機の仕組みは理解しやすいものでした。

Y:PDP-11、VAX-11の次にサン・マイクロシステムズに代表される
「UNIX WSの時代」がきますね。松浦先生のUNIX講習会 [注11] で
勉強させてもらっていたのが、その時代です。

M:あれはいつごろのことになりますか?

Y:’84年秋からの約2年間で、10回ぐらい開催されたと思います。
先生の講習会で、「Cシェルならバックグラウンド処理 [注12] が
できますが、いま実習に使っているUNIXはBシェルなので残念なが
らできません」と聞いて、Cシェルにあこがれました :-)。

M:阪大情報のわれわれのグループは、JUNET [注13] に接続した’
85年からの数年間、関西一円のネットワークのキー・ステーション
として活動していました。そのときのドメイン・マスターには、講
習会で使用したものと同じUNIX WSを使用していたのです。当時、
各サイトのドメイン・マスターはBSD系だったのですが、これは
SystemV系だったため、独自のメール・ハンドリング・システム
(阪大Mailer)を作成するなど、苦労していました。

Y:ところで、松浦先生の研究テーマの1つは、ユーザー・インタ
フェースでしたよね。

M:はい。当初、計算機システムのアーキテクチャ設計やOSの研究
をしていましたが、次第に研究の対象をシステム・プログラム、マ
ルチウィンドウ・システム、ユーザー・インタフェースなどのアプ
リケーション・プログラムよりに移行してきました。

Y:以前、松浦先生と銀行のATM [注14] ユーザー・インタフェー
スの悪さや、駅の自動改札機が不便だということについて盛り上がっ
たことがありましたね。

M:銀行のATMでは、とくに送金システムのインタフェースが許せ
ませんね。1画面戻るのかと思って「やり直し」を選んだら、本当
に最初まで戻ってしまうでしょう。最近では、送金の際はATMでは
なく窓口を利用するようにしています。

 駅の自動改札機に関しては、わざわざ定期券を機械に通さなけれ
ばならないのが許せません。ましてや、「不正を防止する手段とし
て乗降記録をとるので、機械に通せ!」というのは論外ですね。

A:「自動改札」は実際には自動ではありませんから、私は「機械
式改札」と呼んでいます。そして、「自動と呼べない機械式改札は
通らない友の会」を作っています。

 先日、「有人改札」を利用していたら、駅員にいきなり腕をつか
まれて「自動改札を通れ。こっちも客を選ぶ権利があるので、自動
改札を通りたくないならこの駅を利用するな」といわれたのです。
それはおかしいと思い、駅長室で助役と話をして「自動改札を必ず
通らないといけないわけではない」ことと「鉄道会社は客を選ぶ権
利はない」ことを確認しました。[新規注]


==========
[新規注]   自動改札を通れ

一般的に、最近の対応は良くなりました。たとえば、普段通勤で使
う、三宮と野崎では『ありがとうございます』と挨拶してくれるよ
うになりましたし、神戸市長田区の某駅では乗り越し清算機を使わ
ずに改札で現金を渡しても丁寧に対応してくれます。

駅長室までクレームを言いに行った駅では『定期券の取り忘れ、取
り違いにご注意下さい』というアナウンスがなされるようになりま
した。わたしが改札に接近すると『自動改札機を御利用下さい』と
いうアナウンスが聞こえる駅もあります。(1999.8.1、大垣 斉)
==========


機械式改札の導入によって、乗客は定期の取り忘れ、取り違えとい
うリスクを負わされています。

Y:なるほど。ATMなどの開発に携わっていた人が身近にいますの
で、今日の皆さんの意見を報告してコメント [注15] をもらってお
きます。


*NEXTSTEPを使った情報リテラシ教育

N:情報処理教育用のOSにNEXTSTEPを選んだ理由を教えていただけ
ますか。

M:まず、教育者としての立場から見た場合、各アプリケーション
がシンプルで簡単に利用できることが望まれます。また、アプリケー
ション間でのユーザー・インタフェースが統一されていることも重
要です。たとえば、ワープロにしても複雑な機能よりも、基本機能
だけが簡単に使える方がよいのです。NEXTSTEPのアプリケーション
は、これらの要求をすべて満たしています。

 システム管理者の立場から見た場合には、セキュリティ機能やネッ
トワーク機能の充実、システムの安定性のほか、運用管理の自動化
や運用中に発生する各要求への柔軟な対応も重要となってきます。

 さらに、「一般情報処理教育の実態に対する調査研究 [注16]」
というレポートには、「コンピュータ・リテラシ教育とプログラミ
ング教育、情報科学の概論的教育という3つをバランスよく教える
ように」と書かれています。これはそのとおりで、私はコンピュー
タ・リテラシ教育の目標を、「新しいソフトウェアに対する適応力」、
「自分で問題解決できる能力」、「計算機をどのように利用するか
(否か)を判断できる能力」を養うことだと考えています。

 現状では、多くの大学や短大が「ワープロ/表計算ソフトウェア
の使い方を教える=リテラシ教育」と考えているため、「教えられ
たソフトウェア以外は使えないし、使おうとしない学生」を生み出
してしまっています。本来の大学教育は、概念を理解させて新しい
ソフトウェアと出合ったときの適応能力を高めるためのものです。

 また、大学のネットワークを維持していくためには、UNIXに精通
した探求心旺盛な学生を(数人ずつでも)毎年養成し続けていかな
ければなりません。このためにも、UNIXに慣れ親しむ機会が必要で
す。

Y:UNIXの中でも、とくにNEXTSTEPを導入した理由は、やはりユー
ザー・インタフェースでしょうか。

M:ユーザー・インタフェースという点では、利用者が自由に設定
できるXウィンドウ・システムの方がよいのではないでしょうか。 
NEXTSTEPやMac OSなどでは逆のアプローチをとっており、すべての
アプリケーションはユーザー・インタフェースの明確な基準に従っ
ています。その結果、アプリケーション間でのユーザー・インタフェー
スが統一されているのです。

 NEXTSTEPのよさという意味では、インタフェース・ビルダーの存
在が大きいですね。オブジェクト指向によるソフトウェア開発が、
極めて効率よく行えるというのが最大の利点です。Smalltalk [注17]
ほどではないにしても、比較的きちんとオブジェクト指向 [注18]
していて、なおかつ実用的です。

 ただ、マスコミの影響か[新規注]、「Windows 95が最新のコンピュー
タ環境なのに、この大学ではNEXTSTEPという少し古いOSが入ってい
る」といった誤った認識を持っている学生もいて、がっかりするこ
とがあります。


==========
[新規注]  マスコミの影響か

最近はマスコミの影響で、『なにがなんでも Linux』と言う風潮も
ありますね。後表紙に Linux の文字列があれば雑誌が売れるとか…。
# 中にはひどい記事もありますし… (1999.8.1、大垣 斉)
==========


 確かに、Windows 95は(個人で使うには)よくできたOSですし、
何よりも数多くの利用者がいるということに安心感があります。だ
からといってWindows 95やWord、Excelが標準(デファクト・スタ
ンダード)になるかというと、そんなことはありません。OSやアプ
リケーションが標準になるためには、計算機やシステムに依存しな
いことが望まれます。Windows 95でしか使えない独自のファイル形
式は、とても標準とはいえません。

N:ところで、大阪市立大学では、どれくらいの利用者がいらっしゃ
るのですか? ネットワークや計算機の管理は、計算機の台数や利
用者数を常に頭に入れて運用しないといけないと思うのですが……。

M:そのとおりですね。(1)研究室レベルでの管理、(2)学科もしく
は学部レベルでの管理、(3)大学全体レベルでの管理は、まったく
異なるものだと思います。最初の(1)と(2)は計算機の利用法もそれ
ほどかけ離れていないし、人数も数百人程度でしょう。(3)の全学
レベルになると利用者の考え方も違うし、利用の仕方もさまざまで
す。

本学の学生数は8000人強ですが、利用者数が数千人以上の場合はネッ
トワークやサーバーの負荷を慎重に検討しなければなりません。ま
た、実際に経験のあるサイトの情報を活用して、各種の対策を施す
必要があります。しかし、それでも問題は起きます。 そのとき、
問題に対して柔軟に対応することがわれわれの務めでもありますし、
いわゆる基盤支援として最も重要な点だと考えています。

Y:今日は、私のUNIXライフ初期に影響を受けた松浦先生と久しぶ
りにお会いでき、とてもうれしく思いました。また、中村さんと大
垣さんにもご同行していただいたので、非常に楽しかったです。



[注1]  大阪市立大学学術情報総合センター

1880(明治13)年、大阪財界有力者によって大阪市立大学の前身で
ある大阪商業講習所が創立された。1928(昭和3)年に市立大阪商
科大学となり、1949(昭和24)年に大阪市立大学
( http://www.osaka-cu.ac.jp/ )が発足。

現在は、商学部、経済学部、法学部、文学部、理学部、工学部、医
学部、生活科学部の8学部からなっている。同大学の学術情報総合
センター( http://www.media.osaka-cu.ac.jp/ )は、学内諸施設
を接続するキャンパスLANを基軸に、国内外の学術機関とインター
ネット接続した最先端情報拠点となっている。


[注2]  中村 孝さんと大垣 斉さん

’96年7月号の本連載(第18回)「ネットワークを再構築するのは、
大学最強のお笑いコンビ」で取材させていただいた方々である。中
村さんは大阪大学出身であり、松浦先生が助手をされていた時代に
学生だった。


[注3]  ORIONS

Osaka Regional Information and Open Network Systemsの略。大
阪地域大学間ネットワーク。学術研究・教育活動を支援する目的の
ネットワーク。実験ネットワークとしてのJUNETがその使命を終え
るに先立ち、’92年、大阪大学に接続していた企業サイトを中心に
WINCを結成し、残った学術サイトがORIONSという組織を作って、既
存サイトのコネクティビティを確保したのが始まりである。


[注4]  情報コンセント

内線電話のモジュール・コンセントのように、電話やネットワーク
などの各ポートが集合したもの。


[注5]  Fastイーサネット

IEEE(米国電気電子技術者協会)802.3が仕様作成を進めている
100MbpsのLAN規格。イーサネットと同じCSMA/CD方式を採用し、MAC
フレームを使用。ネットワーク構成は、ハブを中心としたスター型
である。ケーブルの種類によって、100BASE-TX、100 BASE-T4、
100BASE-FXの3種類に分かれている。


[注6]  ネーム・サーバー

ホスト名とIPアドレスの対応表を持つサーバー。通信したい相手ホ
ストのIPアドレスが分からない場合、このネーム・サーバーに問い
合わせると通知してくれ、そのネーム・サーバーが分からなければ、
上位のネーム・サーバーに問い合わせる。


[注7]  VOD

Video On Demandの略。テレビやビデオなどの動画を、見たいとき
に即座に楽しめるサービスのこと。これを実現するためには、動画
のデータベースを構築し、広帯域な伝送路(ケーブルや無線など)
で端末と接続していなければならない。リクエストすると所望の情
報がすぐに提供されるサービスを「オン・デマンド」型と呼ぶ。


[注8]  大阪産業大学

1928(昭和3)年、大阪産業大学の前身である大阪鉄道学校が創立
された。現在は、経営学部、経済学部、工学部、短期大学、附属機
関、関連教育機関からなる総合大学。詳しくは、
http://www.osaka-sandai.ac.jp/ を参照。


[注9]  MIPS

Million Instructions Per Secondの略。「ミップス」と発音する。
コンピュータの性能を示す指標で、1秒間当たりの命令実行回数を
100万の単位で表現したもの。


[注10]  ミニ・コン

ミニ・コンピュータの略で、汎用機よりも小さい中規模程度のコン
ピュータ・システム。マイクロプロセッサが登場する以前、コンピュー
タといえば汎用機かミニ・コンだった。


[注11]  松浦先生のUNIX講習会

同講習会には、筆者が当時所属していた会社がUNIXマシンを提供し
ていた。UNIXマシン搬入/搬出の担当者だった筆者は、何度も、先
生の講義を受講する機会を得た。そのため、筆者のUNIX基礎知識は、
同講習会で得たものが多い。使用マシンはメイン・メモリ8Mバイ
ト、ハードディスク84Mバイト程度のもので、これにアンリツの端
末を10台接続していた。本体は大変重く(約60キロ・グラム)、搬
入/搬出作業は重労働だった。


[注12]  バックグラウンド処理

処理に時間のかかるジョブをバックグラウンドで実行させることで、
並行して別の作業が可能となる機能。


[注13]  JUNET

Japan UNIX/University NETworkの略。’84年に日本で始まった
UUCPベースの実験ネットワーク。海外ネットワークとのリンクも確
立していた。’94年に発展的解消を遂げ、現在のWIDEに至る。
JUNETもWIDEも、利用を学術研究に限定している。


[注14]  ATM

Automatic Teller's Machineの略。現金自動預け払い機。銀行や郵
便局などのホスト・コンピュータに接続されており、現金の引き出
しや預け入れ、振り込みなどの窓口業務を自動処理する。製造メー
カーには、沖電気工業、オムロン、東芝、NECなどがある。


[注15]  コメント

銀行のATMのユーザー・インタフェースの悪さについて、某メーカー
の開発関係者は、

「コンピュータを触っている人にとっては、もっと洗練されたイン
タフェースが提供されるべきだと思うでしょうが、より一般の人を
対象に極限まで操作を単純化してしまうと、現在の形になってしま
います。日本語の入力にしても、アイウエオ順のタッチ・パネルを
採用することで、だれでも入力できるようになります」

と語っておられた。その関係者からは、自動改札機についても、

「自動改札機の導入によって駅員の人件費が削減され、結果的に運
賃が安くなるわけですから、なるべくご利用いただくように協力を
お願いしたいと思っています。定期の取り忘れ、取り違えに対処す
るため、すでに定期入れから定期を出さずに定期券をかざすだけで
通れる自動改札機も導入されています」

とのコメントもいただいた。ちなみにこの関係者は、松浦先生が大
阪大学の情報工学科で助手をされていた時代に学生だったそうだ。


[注16]  一般情報処理教育の実態に対する調査研究

文部省から(社)情報処理学会(代表は慶應義塾大学の大岩元先生)
への委託研究に対して、’92年3月に提出された報告書(後に’93
年度版も提出された)。一般情報処理教育で教えるべきことについ
てまとめられている。一般情報処理教育担当者の必読の報告書。


[注17]  Smalltalk

ゼロックスのパロアルト研究センターが開発したオブジェクト指向
プログラミング言語。C++に比べて、「再利用のしやすさ」、
「品質のよいクラス・ライブラリの数」、「開発環境の充実」とい
う点で優れている。


[注18]  オブジェクト指向

現実の物のあり方に着眼して、イメージと意味を一体化して扱う考
え方。オブジェクト指向を用いることにより、データと手続き(プ
ログラム)を明確に分けて考える手続き型よりも自然に現実の世界
を表現したり、それに対する処理を実現できる。


以上




(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
http://www.tomo.gr.jp/root/ に戻る