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第7回 個性豊かなOSと学生でハーモニーを奏でる



1995年8月号の UNIX USER 誌に掲載された「ルート訪問記」の過去記事

第7回 個性豊かなOSと学生でハーモニーを奏でる

京都産業大学(京都府京都市)は、1965(昭和40)年に創立され、
今年30周年を迎えた私立大学で、経済学部、経営学部、法学部、外
国語学部、理学部、工学部からなっています。この大学には、'65
年の創立時からコンピュータ(MGP-21)が設置され、翌年には計算
機センターが完成しており、他の大学と比較して、かなり早い時期
からコンピュータ教育がスタートしています。

今回は、この大学の計算機センター事務室の安田豊(やすだ ゆた
か)さんを訪ねました。インタビューには、同じく計算機センター
事務室の開原潮(かいはら うしお)さん、外国語学部の竹内茂夫
(たけうち しげお)先生、理学研究科D2の松浦正和(まつうら ま
さかず)さん、そして、日ごろ大学のシステムの管理に協力してい
る学部学生諸君にも、加わっていただきました。


==========
[開原 潮さんからの新規コメント]  

 京都産業大学計算機センターの開原と申します。1995年8月号の
連載時と少々仕事の内容が変わり、現在は大学の業務システム構築
とメンテナンスに携わっています。そのため最近は教育・研究系の
環境については横から見聞きするだけのような感じで、このコメン
トも共用UNIX環境の管理者をしている、教育研究システム課の尾崎
孝治さんにいろいろ聞きながら書いています。

■世代交代するマシン

 1995年8月号で取り上げていただいたときのマシン群は、全学共
用UNIX環境の第1世代で、1993年に導入されましたものです。1999
年8月現在では、当時ほとんどのサーバ機能を担っていた SPARC
Center 2000 1台だけが、ftpやネットニュースのサーバのみに機能
を減らして残っているだけで、他のマシンはことごとくリプレース
されています。その SPARC Center 2000 も近々置き換えられるこ
とでしょう。

■世代交代する学生

 マシンも移り変わっていきますが、大学という組織の宿命で学生
も毎年入学、卒業し移り変わってきます。当初は、頼りにしていた
学生が卒業してしまうときなど、来年度からうちの環境をどうやっ
て切り盛りしていこうかと不安になったこともありましたが、そこ
はうまくできているもので、次の年を迎えるとそれなりの学生が、
ちゃんと育ってくれていることに気付かされます。最近では、なぁ
に春からも何とかなるって、とタカをくくれるようになりました。

■ユーザ名

 ユーザアカウントの発行はずっと学生本人からの申請制でしたが、
4月最初の授業から実習を行いたいという教員からの要望と、申請
制にも関らず全学生の3/4以上が取得するようになったということ
で、1999年度から全学生に事前発行するようになりました。そのた
め学生番号を使ってとりあえず自動的にユーザ名を付けていますが、
好きなユーザ名を使えるという従来の特徴は大事にしたかったので、
取得後1度だけ自分の好きなユーザ名に付け替えられるシステムを
採用しています。相変わらず面白いユーザ名を付ける学生が多くて、
ある意味楽しませてもらっています。

■ネットワーク

 ネットワークに接続されるコンピュータの台数も増えました。
1999年4月に導入して、いろんなところで取り上げていただいた603
台のLinux/ WindowsNTマシンを含め、教育用のコンピュータだけで
約1,300台。これに研究用、事務用(専任事務職員1人に1台に配備
されている)を合わせると2,000台以上のコンピュータが学内ネッ
トワークに接続され、それらすべてからインターネットへアクセス
することができるようになっています。

 これらのコンピュータはルータで区切られることなく、同一ネッ
トワークに接続されています。ブロードキャストパケットが増える
などの理由で、規模が大きくなるとネットワークを区切るところが
多いですが、2,000台程度ならまだ大丈夫ということが、これで経
験的にわかりました。

 また、1999年3月から対外接続線も増強しました。それまでは京
都大学(NCA5)経由でSINETへ1.5Mbpsでつながっているだけだったの
ですが、それに加え商用プロバイダへも1.5Mbpsで接続するように
しました。これは、就職情報の収集など企業サイトへの接続が多く
なってきたためで、インターネット利用の傾向が変わってきたこと
への対応ですが、どちらかがダウンしても、とりあえずインターネッ
トへの接続は確保できるという利点もあります。

■ネットワーク構成変更

 1999年9月にネットワーク構成の変更を予定しています。これま
では教育・研究用、事務用とも同じネットワークを使用していたの
ですが、これらを用途別のネットワークに配置するようにします。
主にセキュリティ保持のための変更ですが、1999年8月号時点のネッ
トワークもそれを考慮して設計されていましたので、この9月の変
更で、ギガビットイーサネットを基幹とする本学の第3世代ネット
ワークが完成するといえるでしょう。

■安田豊さん

 1995年8月号で取材を受けていた安田豊さんは、その年の秋に本
学を退職されたのですが、その後もいろいろと相談に乗ってくださっ
ています。インターネットのおかげですね、机を並べて一緒に仕事
をしていたときと同じように気安く連絡が取れるので、本当に助かっ
ています。

■ルート訪問記

 長寿連載おめでとうございます。1995年に来ていただいたとき、
雑誌の取材というもの自体が初めてで、ちょっと緊張して臨んだ覚
えがあります。でも、よしださんの親しみやすいキャラクターとお
土産の洋菓子のおかげで、始まってすぐになごんでしまいました。

 よしだともこさんと知り合えたおかげで、私自身よしださん経由
でいろんな人脈ができ、世界を拡げることができました。本当に感
謝しています。これからもよろしくお願いします。
					(1999.8.9 開原 潮)
==========

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[安田 豊さんからの新規コメント]  

うーん、今の時点で元原稿と同じ状況になっているものはもう少な
いんじゃないでしょうか?システムは完全に新しくなりましたし、
ネットワークも入れ替わりました。記録としての価値はあると思い
ますが。

ユーザ名を自由に決めさせる仕掛けなどは、きっと僕はあと二年で
破綻すると思ってたものですが、今なお、工夫を加えながら生き残っ
ていますね。学生向けのユーザーガイドも、有料にこそなりました
が、あの精神は生きていると思います。

さて、この原稿で重要としていた混成アーキテクチャの UNIX 環境
は、今はどれだけ重要なのでしょう。無個性な X 端末ではない、
個性のあるアプリケーションを持ったシステムは、もう大学には不
要なのでしょうか。数値計算アプリ他、特定用途には、異常に速かっ
た Alpha と、特定学科のカスタム教室の Solaris 、全く特異とし
か言いようがない NeXT 、そして非常にタフな(当時としては珍し
い)SMP のサーバマシン。当時は、混成にせざるを得なかった理由
も、そうする利益もあったのだけど、さて、今は? PC-UNIXが比較
的アプリケーションの個性を持たず、普通に速い UNIX/X マシンと
して進んできた現在、混成させるのに足るだけの個性はあるのでしょ
うか。

それから、学生自身が非常に容易に UNIXシステムをまるまる持て
るようになった現在、学生 admin による Linux 共用環境の整備な
どは非常にうまくいきそうな反面、やってくれる学生が閉じこもっ
てしまったら一人だけ(ないしはその周辺だけ)ハッピーになって
しまって、全く周囲に反映されないかもしれない。つまり開かれた
大学 UNIX環境にとっては、良くやってくれる学生の心が閉じてい
るか開かれているかが非常に大きな鍵になってしまうわけですね。

また、これまでも言われ続けてきた事だけど、大学より学生の方が
良い(新しい)パソコンを持っている、というつまらない視点がま
た息を吹き返しそうに思えます。学生が大学に来て、そこのシステ
ムを使う理由はなんなんでしょう。共用システムは、もちろんそこ
をターゲットに構築されるべき側面を持っているわけですが、それ
を何に設定したらいいんでしょう? 学生の多くが、より新しいコ
ンピュータと、ネットを持っているとして、大学は彼らに何を与え
てやればいいのでしょう。現代的な大学共用環境のシステム設計の
視点はその辺にあるんじゃないのかなあ。

最後に、当時の僕の設計目標は、1999年現在、おおかた達成された
ように思います。それは、ある意味単純なゴールでした。つまり、
数年遅れた京産大のシステム環境をよそより前に進めるというもの
で、よその学校が数年苦しんでたどりつく地点にジャンプしたかっ
たのでした。                             (1999.8.5 安田 豊)
==========


*システムは複数のアーキテクチャで構成

安田さん(以下、や):まずは、ここのシステムを簡単に説明して
おきましょう。'87年ごろに、すべての校舎を結ぶLAN [注1] を敷
設しました。当時は、イーサネット [注2] とリピータ [注3] で
結ぶ方法しかなかったため、とりあえずそれでつなぎました。計算
機センターが環境設定に携わっているシステム構成とコンピュータ
の種類は、図1と表1のとおりです。

 学内ネットワークにつながっているコンピュータ機器は650台程
度です。ターミナル・サーバー [注4] やモデム経由で接続された
機器を含めると、合計で850台程度です。MiCS環境 [注5] の各種
パソコン(PowerMac6100, Compaq Contura, FMR, FMV, DecPCなどの
パソコンが合計350台以上)からは、telnet端末ソフト [注6]、あ
るいはX端末ソフト [注7] を使って、cc環境 [注8] にアクセス
できるようになっています。孤立したシステムはまったく存在しま
せん。どこから使っても、同じ環境下で違和感なく統一的な作業が
できるのです。

私(以下、Y):どの部屋の、どのコンピュータの前に座っても、
自分に届いているメールは読めるし、ホーム・ディレクトリも1つ
だという快適な環境ですね。

や:はい。cc環境のおもしろいところは、複数のワークステーショ
ンのアーキテクチャをそのまま受け入れて運用している点です。

 たとえば、大学などで複数のアーキテクチャのUNIXマシン群を導
入した場合に、共通環境を構築するとしたら、各メーカー独自の環
境を排除して、新しくそこにやってくるワークステーションは、自
分たちの色に染めてしまうようにしている場合が多いでしょう。具
体的には、もともとのマシンにあった/binと/usrの下のファイルは
最低限のものしか残さず、ほとんどを運用側で入れ替えてしまうと
か。しかし、この大学では、メーカーが出してきたものを極力その
まま使うことを目標にしています。

 そのままにしておいて、僕らの環境がadd in(追加)できればそ
れが一番いいというポリシーです。

 サーバー・マシン [注9] のOSはSolarisで、クライアント・マシン
 [注10] のOSは、Solaris、DEC3300のOSF/1、ネクストのNEXTSTEP
と、3種類あります。

--------------------------------------------------------------
			マシン名  	OS 		台数
--------------------------------------------------------------
サーバ              SparcCenter2000 	Solaris2.3J	1

クライアント        DEC3300      	OSF/1 2.0J	41
                  NeXTStation  	NEXTSTEP3.0J	21
                  SparcClassic 	Solaris2.3J	20

(他にも、プリントサーバーとしてのNEWSやSS10、SS20などがある。
SparcClassicとSS10、SS20は、他のマシン群よりCC環境からの独立
性が高い。)
--------------------------------------------------------------

このようなごちゃまぜの環境で、メーカーの出してきたものは、比
較的そのまま使ってこちらの環境の中でみんなが生活できるという
混成環境です。

Y:サンとDECとネクストのそれぞれのアーキテクチャを大切にし
た混成環境って……すごい。:-)

や:混成環境の場合、ある環境と別の環境の間の垣根が高くなって、
利用者が使える環境も制限されてしまう傾向があるのですが、ここ
ではそれはさせないようにしています。そのため、利用者、技術者
の交流による情報の交換が可能になっています。

Y:立木先生 [注11] が、「うちの大学は、ルートがすごくしっか
りしているから、ルート訪問に来て」って私にいわれた意味が分か
りましたよ。ここで、安田さんのルートとしての技術的なノウハウ
を聞き出すのが、インタビュアーである私の役目ですよね。:-)

や:ルートとしての技術的な話は、メモ書きしたものを後で渡しま
すよ。適当に選んで雑誌で紹介してください(まめちしき参照)。


*限りある資源を有効に使うための努力も

Y:学生が使えるディスクの容量には制限を設けているのですか?

や:はい。最初の半年は制限を設けずに運用して、学生がどのくら
いディスクを使うのかを測ってみました。運用形態にもよりますが
学生のディスク利用量は、全体の数パーセントかそれ以下の人たち
が、ディスク全体の9割以上を使うことが分かりました。

使用容量を縦軸にとって、ディスク消費の少ないユーザー順に並べ
てグラフにすると、ずっと平坦で最後に突然立ち上がって、いった
ん立ち上がると、急に何百Mバイトという具合になるのです。学生
は、スキャナで絵をとったりしても、色や大きさにまったく手加減
しませんから…。

 各自が使えるディスク容量を、quotaコマンド [注12] で制限す
る場合は、その最後の数パーセント以外の人が何Mバイトあれば足
りるかを基準に決めるのが正解です。うちでは、1人30Mバイトに
決めて運用しています。学生には、「どうしても困ったら相談に来
い」といってあります。光磁気ディスク [注13]、DAT [注14]、フ
ロッピーなどの外部記憶装置に保存する方法を指導するわけです。

Y:ディスクって押し入れや本箱と同じで、あればあるだけ使って
しまい、いっぱいになってからハタと考える。:-)

や:外国語学部に、学内の学生と学外の方とのメーリング・リスト
 [注15] を作っている先生がおられるのですが、数百人もの学内の
学生がそのメンバーになっているため、1日数十通のメールが、数
百人のスプール [注16] にドッとたまるわけですから強烈です。

たとえば、300人に1日50通のメールが届くと、合計15,000通にも
なります。そこで、運用方法として、そのメーリング・リストから
届くメールは、学内ではニュースとして展開するようにしました。
すなわち、学外から1通やってきたメールを、300人の学生のメー
ルに配信する代わりに、あるニュース・グループの1通のニュース
として自動投稿するように設定してあるのです。フリーで流れてい
るソフトを取ってきて、ちょっといじりました。

Y:そのフリー・ソフトウェアの名前を教えてもらえますか?

や:mailtonews [注17] です。学内の人が、そのニュースに対して
メールで返事を書くと、学外の人へはメールとして届き、学内の人
にはそこでまたメールがニュースになって届くという仕組みになっ
ています。

Y:それはいいですね。:-)

や:うちの場合は、サーバー・マシンのメール・スプールは、現在
2Gバイト1本、丸々メール・スプールにしています。ディスクア
レイを使っていないので、これには気をつけて配置しました。メー
ル・スプールは、人によってはどんどん膨れていきます。あふれて
しまうと全利用者に迷惑がかかりますし、quotaを切って、ためて
いる人だけあふれるようにしたら、今度はメールを送ってくれる外
部の人に迷惑がかかります。ディスクが足りないのはこちらの問題
ですので、こちらだけで解決したいですよね。


*ルート以外のadminが大活躍

Y:今日、ここに集まってくださっている方々は、みんなルートの
権限を持っておられるのですか?

や:いいえ。ルートの権限を持っているのは、私と、今日はコーヒー・
サーバー(コーヒーを注ぐ人、の意)をしてくれている開原さんと、
あと1人の3人だけです。あとの人たちは、adminグループとその
予備軍です。adminというのは、このシステムの「半利用者・半管
理者」の立場にいる人たちのことで、自分が使いたい環境を自分で
設定することに興味のある有志のグループです。教員、学生など、
バラエティに富んだ20名程度で構成されています。

私も普段は、1人のadminとして作業しています。ここのシステム
では、adminに/NF/localのアクセス権を与えているので、ルート権
限のないadminさんも、ソフトをインストールするなどのメンテ作
業ができるようになっています。学部生admin [注18] の専攻は、
理系学部の計算機科学科や情報通信工学科ではない人の方が圧倒的
に多いんですよ。

Y:(集まってくれた学生の名前と所属のリストを見ながら……)
本当ですね。鈴木岳志君は経営学部なんですね。2回生? ってこ
とは、大学に入ったのは去年で、少し前まで高校生だったんですね。:-)

や:味田(みた)潤君は、'95年6月に正式公開したこの大学のWWW
サーバー [注19](http: //www.kyoto-su.ac.jp)の、大学案内ペー
ジのデザインを担当してくれています。美術部だということで。彼
が担当するようになってから、美術部のページは、かなり新しいも
のに変わりましたね。

味田君:以前のは、もっさかった(かっこ悪かった)ので……。美
術部の部展も、WWWでやっています。電子ギャラリーとして、外部
からも見てもらえます。



*ユーザー名には好きな名前が使える

Y:ここの学生は、ユーザー名に学生番号などではなくて、任意の
文字列を自分で決めているそうですね。自分が希望するものがすで
に他人に使われているケースも多いと思うのですが、どのように運
用しているのですか?

や:では、実際にデモをしながら説明しましょう。xdm [注20] の
ログイン画面の右下に「Menu」というボタンが付いていますね。ま
だユーザー名を持っていない場合は、このボタンを選ぶと、「ユー
ザー名登録プログラム」が動くように設定してあります。このプロ
グラムに、自分の希望する名前の第1希望を入力してみます。すで
に使われているなら、そのようなメッセージが表示されますから、
第2希望を入力してみます。それも使われていたら、第3希望を入
力します。

Y:学生番号などのユーザー名の場合は、なかなか覚えられないけ
ど、意味のある文字列だと、覚えやすいですよね。

や:オードリー・ヘプバーンのファンだからとaudreyにしたという
人もいます。

竹内先生(以下た):『マリリンに会いたい』という映画に出てき
た犬の名前にちなんで、marilinとした人もいます。

開原さん:シェリル・ラッド [注21] のファンの人がsherylとした
ら、正しい綴りはcherylだったそうです。一度決めたユーザー名の
変更は許していないので、sherylの方を使い続けてもらってますが、
ファンとしては悲しいみたいです。あと、trfをユーザー名にして
いる学生もいます。

鈴木君:高校時代にラケットを買った店の名前を使っている人もい
ます。最新型のラケットだからといわれて買ったのに、最新型では
ないものを売りつけられていたらしい。:-)

や:京都産業大学の計算機センターでは、学内のcc環境の利用者の
ために、396ページからなる「UNIXガイド」 [注22] を発行してい
て、利用者には無料で配布しています。Anonymous FTP [注23] サ
イトに置いて、外部の方にも公開しています。本になったものがこ
れです。

木谷君:この「UNIXガイド」は第2版なんですよね。第1版は去年
配布されたんです。私は、去年入学しましたから、このガイドはあ
りがたかったですよ。

Y:初心者にとって、自分が使うローカルのシステム環境に基づい
て書かれた操作手順書ほど、ありがたいものはないですよね。各種
パソコンからcc環境にログインする方法も、詳しく書かれていて親
切ですね。後半の各種ツールの使い方の部分は、私のように別のサ
イトのUNIX利用者にも、大いに役立つ内容になっていますね。私も
さっそく活用させてもらいます。


*外国語学部の生徒もMuleを活用

Y:ところで、竹内先生は外国語学部の先生なんですね。

た:はい。言語学(ヘブライ語)が専門です。

Y:ヘブライ語 [注24] とは珍しいですね。

た:外国語学部の建物にある、31情報処理教室のMacでは、すでに
ヘブライ語が扱えるように設定してあります。この教室のMacでは、
この他に、アラビア語、ロシア語、ハングル、中国語、欧州諸言語
も使えます。今後、LaTeX [注25] やMule [注26] でもヘブライ語
を扱える環境を整えたいと思っています。

Y:LaTeXもマルチリンガル [注27] 対応になっているのですね。

た:はい。この大学の国際言語科学研究所に所属されている科学史
の先生に、KoreanTeX、ArabTeX、チベット、サンスクリットを使っ
て本を出版されている方がおられます。その先生といっしょに今後、
ヘブライ語と、くさび文字のLaTeX環境を作ろうと考えています。

Y:そのあたりのお話、次の機会に詳しく教えていただくのを楽し
みにしています。今日は本当にありがとうございました。


[注1]  LAN

Local Area Networkの略。比較的狭い地域に分散設置された各種コ
ンピュータを結ぶ構内ネットワークシステム。


[注2]  イーサネット

米ゼロックスとDEC、インテルが共同で開発、’80年に製品化した
バス構造のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)。10Mbpsの速
度を持ち、WSやPCのLANの世界では最も普及している。


[注3]  リピータ

repeater。信号を再生、中継する装置。伝送距離を延長、あるいは
配線の自由度を高めるために使う。


[注4]  ターミナル・サーバー

コミュニケーション・サーバーともいう。分散しているコンピュー
タ資源を共有することを可能にするもの。


[注5]  MiCS環境

いろいろな機種が混在(mix)している環境なので、ミックス環境
という愛称が付けられた。「みんなで使う、コンピュータ・システ
ム」の頭文字でもある。UNIXをベースにしたコンピュータ環境も含
んだものを指す。


[注6]  telnet

TCP/IPのアプリケーション・プロトコルの一つで、リモートの仮想
端末機能を実現するもの。あるいは、仮想端末ソフト自身のことを
示す。


[注7]  X端末ソフト

Xのディスプレイ・サーバー部分の機能を、他のプラットフォーム
上で実現するソフトウェア。MacintoshやWindows用に供給されてお
り、最近では専用機であるX端末よりもこちらの方がポピュラーに
なっている。


[注8]  cc環境

cc とは、Computer Centerの略で、cc環境とは、京都産業大学ロー
カル固有名詞。UNIXをベースにしたコンピュータ環境のことを指す。


[注9]  サーバー・マシン

クライアント/サーバー方式のサーバーのこと。クライアントはサー
バーに処理を依頼し、サーバーが実行することにより、クライアン
トの本来の仕事が実行される。


[注10]  クライアント・マシン

クライアント/サーバー方式のクライアントのこと。


[注11]  立木先生

京都産業大学 理学部 計算機科学科 の立木秀樹(ついき ひでき)
先生。今回私が京都産業大学におじゃまできたのは、立木先生のお
かげです。感謝。


[注12]  quotaコマンド

英語で「割り当て」を意味するUNIXのコマンド。各ユーザーが使用
できるディスク容量を制限する。


[注13]  光磁気ディスク

Magneto Optical Disk。消去・再書き込み可能な光ディスクの一種。


[注14]  DAT

Digital Audio Taperecorder。幅3.81mmの磁気テープに音声信号を
デジタル記録する装置。音声や音楽の記録・再生のほか、データ記
録用(主にハードディスクやデータのバックアップ用)に使われて
いる。


[注15]  メーリング・リスト

mailing list。1つのメール・アドレスに複数の受取人のアドレス
をリストとして登録しておくもの。


[注16]  スプール

Simultaneous Peripheral Operation On-Line(SPOOL)。CPUのジョ
ブと入出力処理を並行して行うこと。プリンタや読み取り装置など
の周辺装置は、CPUに比べて処理速度が遅い。このために、直接CPU
が低速な周辺機器にデータ転送していると、処理がなかなか終了し
ない。このため、CPU資源の有効利用のため、補助記憶装置を介し
てデータの受け渡しを行い、処理の遅れを短縮させる。このように
して、資源の効率的運用を図ることをスプールという。


[注17]  mailtonews

Hiroyuki Tarumi氏によって作成されたツール。本文中に紹介され
ているとおり、メールをニュースに変換する。


[注18]  学部生admin

インタビューに参加してくれた学部生admin諸君とは、鈴木岳志
(すずき たけし)君(経営学部2回生)、木谷公哉(きたに きみ
や)君(工学部情報通信工学科2回生)、吉信豪夫(よしのぶ た
けお)君(理学部計算機科学科4回生)、味田 潤(みた じゅん)
君(経営学部3回生、美術部部員)。すべて、1995年6月現在。


[注19]  WWWサーバー

インターネット上で情報を共有することを目的として開発された、
WWW(World Wide Web)を提供しているサーバー・マシンのこと。


[注20]  xdm

UNIX 起動時に /usr/X11 /bin/xdm が実行されるようにしておけ
ば、ログイン前から X を起動しておくことができる。起動時の 
xdm 実行の命令は、/etc/rc.local などのファイルに記述する。


[注21]  シェリル・ラッド

その昔、アメリカのテレビ・ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』
に出ていた女優


[注22]  UNIXガイド

このドキュメントは、
ftp://ccftp.kyoto-su.ac.jp/pub/doc/UNIXguide_2nd に置かれて
おり、Anonymous FTPで入手できる。非営利目的に利用する限り、
自由に複写、改変、再配布が可能であるが、逆に営利目的に利用す
ることは許されていない。このドキュメントの後半部分には、Mule、
LaTeX、AUCTeX、Mathematica、GNUPLOT、tgif、xv、xpaintなどの
使い方が、詳しく説明されている。


[注23]  Anonymous FTP

匿名FTP。ftpあるいはanonymousという利用者名を入力することで、
一般に公開することを目的としたファイルへのアクセスが自動的に
可能になるというもの。


[注24]  ヘブライ語

ベブライ語は、イスラエル共和国およびその他のユダヤ人居住地域
で使用される。右から左に向かって横書きする。


[注25]  LaTeX

DECのLeslie Lamport氏が開発した TeX用のマクロ・パッケージ。
TeXとは、スタンフォード大学のDonald Knuth教授が開発した組版
システム。英単語のtechnologyが、τεχから始まるギリシャ語か
らきていることに由来して命名された。


[注26]  Mule(ミュール)

Emacsを強化して、複数の言語に対応できるようにしたもの。Mule
では、ASCII文字や Latin系の文字ばかりではなく、日本語、中国
語、韓国語などの多言語が扱える。


[注27]  マルチリンガル対応

多言語対応のこと。


===================================================================
UNIXまめちしき

安田豊さんによる、ルートとしての技術的な小技集  

*サーバー・マシンの操作はログがすべて残るようにシリアル・ポートから

 サーバー・マシンのコンソールは、たとえフレーム・バッファ
(グラフィック・ボード)を搭載していたとしても、シリアル・ポー
トにするのがよいでしょう。うちではコンソールには、引退した
Macintosh Classic II が付いています。この端末エミュレータだ
と、サーバーがハード的な原因で死んだときでもコンソール・メッ
セージのログをMacintoshのディスクに残しているので原因追跡が
楽に行えます。昔は大型汎用機のコンソール・メッセージはそうい
う原因追跡のためにプリンタに紙で残していたものです。われわれ
はいまでもそのような機器を管理しているので、この仕掛けを非常
に便利に思います。UNIXでは往々にして、/var/adm/messagesなど
に残らないメッセージが故障追跡には重要だったりしますから。


*共有ディスクの構成が統一環境構築のポイント

 われわれのように、マルチアーキテクチャで統一環境を構築した
い場合の参考に、共有ディスクの構成を紹介します。


/NF                           Network File systemマウントポイント
/NF/local                     フリーソフトの作業場所。
  			      通常の /usr/flocal
                              これをアーキテクチャ別に用意する。
         /Solaris2J/src            Solaris2J用ソース
                    bin            同バイナリ
                    lib...etc.     同ライブラリなど、、、
         /OSF1/src..bin...etc.     OSF/1用フリーソフト
         /NeXT/src..bin...etc.     NeXT用フリーソフト
         /general/src.... etc.     シェルスクリプト、TeXフォント、
                                   WWWページなどアーキテクチャに
                                   依存しないものの場所
/NF/home                       ホームディレクトリ
         /kyouin0              教員用
         /g910                 91年度入学生用
         /g920                 同92年度用...
/NF/spool                      各種スプール
         /mail                 メイル
         /news                 ニュース
         /WWW                  WWWキャッシュ
/NF/ftp                        anonymous ftpディレクトリ。cc 環境
                               ならftpしなくても通常のディスク
                               アクセスでファイルが使える。


 とくに、/NF/local は重要です。ソフトのインストールは、図A
のように各アーキテクチャごとに分けてインストールします。各アー
キテクチャでフリー・ソフトウェアを/usr/localにインストールし、
別のものをマウントしているより、各アーキテクチャで別のディレ
クトリにインストールして、全部同じようにマウントする方が便利
です。/NF/localには、adminさんに対してのアクセス権が設けてあ
ります。だからadminさんは、ルート権限がなくてもソフトのイン
ストールが行えるのです。


*一時期に負荷が集中する場合にはメモリとCPUの増設で対処 

 SPARCcenter2000は、授業で90台のMacintoshからtelnetでMuleを
90本同時に立ち上げられたりしますが(まさに襲われている状態)、
けっこう平気です。CPUサーバーはマルチCPUでメモリ一杯にしてお
けば、割合もつものです(そういえば半年前には、Mathematicaが
40本襲いかかっていましたね)。


*バックアップは時間の節約のために並列で

 ファイル・サーバーはバックアップが命。普通のドライブやテー
プ・ジュークボックスでやると1日15時間ぐらいテープが回ってい
ることになりますから、超高速なテープ・ドライブで取るか、複数
台のドライブで並行バックアップが必要です。本校ではDATを5連
装しています。夜に約3時間かけて5台同時アクセスでバックアッ
プを行っています。テープはかけっぱなし。気が向いたら交換しま
す。

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(UNIX USER誌連載「よしだともこのルート訪問記」より)
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