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2004年12月号掲載 よしだともこのルート訪問記

第98回 先進的ネットワーク環境で有名な理系大学のセンター運用
〜豊橋技術科学大学 情報処理センター・マルチメディアセンター〜

今月のルートさん:
山田 博文(やまだ ひろぶみ)さん
豊橋技術科学大学 マルチメディアセンター 助手 博士(工学)
岡部 正幸(おかべ まさゆき)さん
豊橋技術科学大学 マルチメディアセンター 助手 博士(工学)
久松 住子(ひさまつ すみこ)さん
豊橋技術科学大学 情報処理センター 教務職員
津邑公暁(つむら ともあき)さん
豊橋技術科学大学 情報工学系 助手 博士(情報学)(2004年3月から8月まで、マルチメディアセンターを兼任)
※所属部署・肩書は取材当時(2004年10月当時)のものです。

豊橋技術科学大学
 学部から大学院修士課程までの一貫教育、少人数教育による指導的技術者の養成を特徴とする。8つの系(機械システム工学、生産システム工学、電気・電子工学、情報工学、物質工学、建設工学、知識情報工学、エコロジー工学)があり、いずれの系にも毎年1年生をはるかに超える3年生が、主に高専から入学してくる。たとえば、情報工学課程においては1年生定員10名に対して3年生は定員50名で、40名が3年次からの入学者となっている。また、近年女子学生の数が増えており、現在は学部生1213人中女子学生は120人となっている。
http://www.tut.ac.jp/

■1980年代に分散システムへ移行した学内ネットワーク

よしだ(以下、Y):こんにちは。理系のみの国立大学の取材ということで、楽しみにしてやって来ました。今回は、情報処理センター注1とマルチメディアセンターの両方の話をお聞きしたいと思います。
 情報処理センターは、計算機センターを前身に1988年に設置されたもの、一方のマルチメディアセンターは1996年度設立とのことで、現在は、学内のネットワークシステムの管理はマルチメディアセンターが担当されているそうですね。

山田さん(以下、山田):はい。マルチメディアを活用した新しい教授法、教育システムの構築には高速ネットワーク回線の提供が中核になるということで、マルチメディアセンターの設立と同時に、ネットワーク管理体制も移管されました。
 現在、情報処理センターには「計算機システム教育運用部」と「計算機システム研究支援部」があり、マルチメディアセンターには「情報ネットワーク部」と「メディア教育システム部」があって、それぞれ役割を分担しています。

Y:なるほど。まずは、情報処理センターの久松さんから、学内のネットワークシステムの歴史を紹介していただけますか?

久松さん(以下、久松):歴史的には、センターの準備室が設置された1981年に現在の情報処理センターの建屋が完成して、MELCOM COSMO 800IIIというミニコンが入りました。それらを学内の各研究室の端末からTSS注2アクセスによって利用する状態が、1989年2月の分散システム導入まで続きました。
 当時は、ここの情報処理センターと、名古屋大学大型計算機センターとの間の専用回線を提供することも、センターの重要な役割でした。1982年当時の専用回線の速さは4800bpsで、1983年に9600bps、1985年に9600bpsの回線が1本増えて2回線になっていました。
 その後1988年4月に、計算機センターは情報処理センターに昇格し、1989年2月には、従来の単一メーカー機器をホストとした集中システムからマルチベンダー環境をLANで接続する分散システムに移行しました。導入した主要コンピュータは、MV/20000Iなどのミニコン4台、Sun3/260Cなどのワークステーション8台、IBMマルチステーション 5550などのPCが91台でした。
 1989年には、名古屋大学との間を高速デジタル回線(64Kbps)で結び、主ホスト計算機と、図書館用計算機からそれぞれSINET注3に直結する回線を用意し、さらに名古屋大学の主ホストやPACX注4網に入る回線を設置することで、複数ユーザーが同時に学外ネットワークにアクセスできる仕組みも整えました。当時としては画期的な、外部とのマルチホーム接続注5も実現できていました。
 高速デジタル回線の速度も、1990年の192kbps、1994年の512kbps、1995年の1.5Mbpsと増強され、2003年からは、岡崎国立共同機構経由でのSINETへの接続回線の速度は100Mbpsとなっています。
 1994年3月の更新時には、DEC 3000 Model 800AXPなどのUNIXワークステーションを84台導入し、基幹LANには2系統のFDDI注6ループを敷設することで、負荷分散を考慮した「キャンパス情報ネットワーク」が実現しました。このネットワークの実現には、「情報基盤設備に関わるキャンパス情報ネットワーク」の補正予算が使われています。実は、補正予算が付くという突然の知らせがあったのが午後5時で、明朝までに案が必要といわれ、その日の夜は関係者総出で資料をベースに案を練り上げて、午後10時には文部省(当時)にFAXしたという騒ぎがありました。予想以上の裁定をいただき、当時のFDDIネットワークが完成しました。
 現在はすでに、10GbpsのATM-LAN注7からギガビットイーサネットへの移行が推進されており、それらの運用はマルチメディアセンターが担当しています。
 情報処理センターは、2002年3月に機種更新された、高速計算システム、技術計算・グラフィックス用システム、100台の教育用X端末、ファイルサーバーを含む研究・教育用システム、運用管理・情報サービスシステムを中心とした高機能サーバーおよびPCとX端末、周辺機器によって構成されています。これらの計算機はサーバー系はギガスイッチを介して、X端末などはイーサネットスイッチを介して学内ネットワークに接続されています。
 システムのソフトウェアとしては、テキスト処理や電子メールなど一般的なソフトウェアが利用できるほか、プログラミング言語、科学技術計算ライブラリ、並列計算ツールなどの専門的なソフトウェアや、線形/非線形構造解析、計算流体力学、可視化のための商用ソフトウェアを用意しています。
 また、センター施設内には、演習授業が行える演習室、一般用端末室、研究用端末室、周辺機器室があり、研究利用のユーザーも機器を自由に利用できます。

Y:初めてX端末が入ったのはいつからですか?

久松:前のシステムが入った機種更新時からですから、1998年3月です。そのとき、SGIのCRAY Origin2000、DEC AlphaServer4100を高速演算サーバーとし、X端末80台を演習用とするシステムが導入されました。

■マルチメディア利用の教育はリアルタイム型から非同期型へと移行中

Y:山田さんはマルチメディアセンターが誕生する直前からここにいらっしゃるそうですね。

山田:採用されたのが1996年7月で、当時の所属は情報処理センターでしたが、当初からマルチメディアセンターの仕事が決まっており、1997年2月にマルチメディアセンターが開所すると同時に移りました。

Y:当時から、双方向の遠隔授業、教育・教材作成システムといった、マルチメディアを活用した具体的な実施が計画されていたのですか?

山田:そうですね。センター設立の目的が、「マルチメディア時代の新しい教授法、教育システム、コース教材開発を目標とするMUPS(Multimedia University Pilot Study)プロジェクトを推進する」という具体的なものでした。そのため、双方向の遠隔授業に関しても、本大学と関係の深い、鈴鹿、岐阜、豊田の3つの高専とのISDNを使った遠隔授業を、発足直後から行っていましたね。
 そして、マルチメディアを活用したコース教材として、マルチメディアセンターが支援するWebベース教材作成ツールを含むマルチメディア教材開発システムを用いて、理解しやすいものが開発されています。たとえば、画像処理技術、3Dコンピュータグラフィックス、仮想現実感(VR)、マルチメディアエディタといったものですね。
 また、マルチモーダル対話システム、マルチメディア講義再現システムなどを用いた、新しい教授法についても研究が進められています。

Y:WebCT注8をプラットフォームとして採用されていますよね。「WebCTが持つ多様な機能(シラバスや教材の作成登録、教材配信、理解度テスト、成績管理、掲示板、教官と学生間の対話など)を使用して授業に関する一連のフローを統一的に管理することが可能となった」と、マルチメディアセンターリポートに書かれているのを見ました。

山田:本学では、WebCTを遠隔授業とオンキャンパスの授業の両方で利用しています。遠隔授業では、当初はリアルタイムが主流だったのですが、だんだんWebベースの非同期型のe-Learningに変わってきています。WebCTに代表される、LMS(Learning Management System、学習管理システム)を利用した授業ですね。自分の都合の良い時間に勉強できる点が好まれています。オンキャンパスの授業では、授業時間外にWebCT上で問題を解かせて、学生に授業内容を理解させるなど、授業の補完として利用されています。

Y:LMSを授業に取り入れたい先生へのサポートについて、教えてもらえますか?

山田:ある先生の授業をカメラで撮る必要があれば、マルチメディアセンターのスタッフが収録をお手伝いしますね。教材の基となるデータについては、PowerPointのデータとしてすでに持っている先生方も多く、普段はサポートしていません。WebCTへの教材の登録作業は、先生によってサポートしています。
 また、利用者側が使いやすいように、ユーザーインターフェイスや使い勝手を統一するということで、LMSの種類を1つに絞って利用しています。ある先生の教材は、このソフトでこのサーバーにアクセスして、また別の先生の教材は別のソフトで別のサーバーを利用してという状態では、やはり利用者は不便です。ですから、同じ使い勝手のものを統一して提供できるなら、WebCTにこだわる必要はないでしょう。また、海外で、同じようなものがフリーとして提供される動きもあるようです。

■セキュリティポリシーの啓蒙活動

Y:マルチメディアセンターの情報ネットワーク部が、現在、ATM-LANからギガビットイーサネットへの移行を推進しておられるそうですね。

岡部さん(以下、岡部):2002年度に学内にギガビットイーサネットが導入されたのですが、部門によってはまだ移行できていない状態です。私は、導入された部門のトラブル対応のようなことをやっています。スイッチが壊れたときの業者との対応などですね。
 また2003年度から、情報ネットワーク部では「ファイル交換ソフトの違法利用をやめよう」という啓蒙活動を始めました。これに関しては、情報ネットワーク部長(情報工学系 教授)の梅村恭司先生によるネットワーク関係の講義をビデオで撮影し、大きな教室に学生を集めて見せるなどしています。また、この大学には8つの系があるので、「この日はこの系の学生が集まりなさい」と指示して、「ビデオを見ましたよ」という証明書を出しています。さらに今年は、「無線LAN」利用のアカウントは、その証明書を持つ学生に対してのみ発行としました。

津邑さん(以下、津邑):この大学では、入学時に学生に対してアカウント発行を行わないため(通常は4年生からの研究室配属時、または授業で必要になった学生に発行)、この無線LANのアカウント発行が実質的なアカウント発行を意味します。
 現状では、「ファイル交換ソフト」の利用はセキュリティの問題や、違法な使用法と切り離して考えることが難しいという問題があります。そこで、学生のネットワーク使用のモラルを向上させるためにも、全員必修の講習会を実施したというわけです。この大学の「情報セキュリティポリシー(ネットワーク利用の指針)」に「このポリシーに従わない人は使ってはいけない」という部分があり、講習会でそれを明らかにする必要もありました。

Y:何分間ぐらいの講習会ビデオなのですか?

岡部:全体は1時間ちょっとなのですが、ほとんどの人が見たのは40分間のダイジェスト版です。でも、指示された日に来られなかった学生が見るのは、1時間ちょっとの長いほうのバージョンになります。

Y:ここは理系の大学ですから、各系の各研究室にもネットワーク管理者がいらっしゃるわけで、その方々との情報交換は重要ですよね。

岡部:はい。「情報ネットワーク部会」を毎月1回程度、午後4時過ぎから2時間弱、開いています。学内の各系と各付属施設(各センター)から1名以上、全体として20名程度が集まります。

Y:学内の関係者が協力していく体制は重要ですね。

岡部:2003年12月に、マルチメディアセンターでウィルス対策ソフトを買って、全学的に安く提供することにしたのが好評でした。1000ライセンスまとめて買うと、1ライセンス880円になりますからね。

■無線LANの導入とその認証方式の拡大予定について

Y:マルチメディアセンターが導入された無線LANについて、教えてください。認証に関してなども。

山田:無線LANを導入した理由は、大学において学生が自由に使える端末の数が十分ではなかったためです。4年生以上はすでに研究室に配属されているため、研究室内のPCが使えるからいいのですが、1年生から3年生は、学内でリポートを書いたり調べものをするPCの数が十分ではないということでした。
 B棟にWindowsが60台入った部屋があるのですが、授業で利用している場合は使えません。図書館内に数十台のPCが入っているので、1年生から3年生がリポートを書く場合は、これらを使う必要がありました。
 そこで、講義棟の教室を利用して、学生の持ち込みPCを学内ネットワークにつなぐことにしたのですが、無線LANの認証が必要になります。認証については、PCやOSに依存しないものが好ましいと検討しました。アクセスポイントのほうの認証を使うとOSに依存するため、ブラウザを利用して認証する方法を使うことにしました。
 学生が何らかのWebページにアクセスしようとした時点で、認証用画面がポンと出てきて、それにログイン名とパスワードを入れることで、やっと学外のサイトにつながります。有線LANでも同じ仕組みを使うことで、持ち込みPCを学内LANにつないで利用できるようになります。この認証方式は、導入自体は2004年3月で、6月からスタートさせました。

Y:ちょうど津邑さんがマルチメディアセンターにいたときが、導入時期に重なっていたのですね。

津邑:アカウントを発行するためのスクリプトを書いたり、動作確認をしたりしました。トラブル対応も行いました。ある先生から、「使っている途中に回線が切れてしまう」という苦情が来たので調べてみると、導入した機器では、一定期間ごとにpingを打って返事がないと、使っていないと判断されて切断する仕様になっていることが分かりました。その先生はWindows XPのファイアウォール機能をオンにしていたために、外部からのpingを受け付けず、使ってないと見なされて切られていました。

山田:現在、LANの認証が可能なのは、講義棟の建物3つのみなので、近い将来、それ以外の場所にも広げていきたいと思っています。たとえば、図書館の有線LANにも導入する計画が進んでいますし、独自に無線LANの認証を管理するのが面倒だと考えている研究室などでも、この環境を導入してもらえればと思っています。セキュリティ的に安全なネットワーク環境を準備し、必要に応じて学内全体に提供しようということです。

岡部:学内の多くの情報コンセントには、2つ口があります。上側に挿せばATMに、下側に挿すとギガビットイーサネットのネットワークにつながるといった運用がされていますが、それを「上は安全に使いたい場合」、「下は自由な実験用に」というふうに切り分けたいですね。

Y:なるほど。理系の教員や学生が利用者ですから、安全な環境だけではなく、好きなように実験できる回線の提供も大切なんですね。情報コンセントに2つの口を付けて別々のネットワークにつなげるという考え方は、いつからですか?

山田:2002年度にギガビットを導入したときです。ATM-LANを入れたときに、2口の情報コンセントを用意しましたが、当時は、2つのうちの1つしかATM-LAN用につながっていないという部署が多い状態でした。
 その後、基幹LANをギガビットに移行するときに、余っていたほうの口をギガビット用にし、ATM-LANとギガビットの2つの基幹LANを運用したのが始まりです。いまは、ATM-LAN用の需要が減ってきているので、それを安全に使いたい人向けに使ってはどうかという話になっています。新しい建屋では、情報コンセントが4つ付いているところもありますし。

Y:ネットワークの口が複数あって、用途によってどれを使うか選べる環境というのは、私には新鮮でした。

■UNIX系OSとWindowsの両方が使えるPCとしてシンクライアントを導入

Y:UNIX系OSとWindowsの両方が使えるコンピュータとして、シンクライアント注9を導入されたそうですね。詳しく教えてもらえますか?

山田:マルチメディアセンターの1階に、SGIのIndyが約50台入っていて、プログラミングの授業に使えるようにしている教室がありました。それを2004年3月にリプレイスすることになったのですが、引き続きプログラミングの授業向けにUNIX系OSが必要で、さらにWindows系OSを授業にも使いたいとのことで、PCをデュアルブートさせて利用する方法を検討しました。ただ、それと同時に、管理者としては管理を効率化したいとの希望がありました。
 実はその数年前に、Windowsを60台入れている教室を作って運用していたのですが、Windowsではどうしてもシステムが書き換えられたりするので、毎日、元の内容に書き戻す仕組みを導入していました。しかし、その元データは個々のPCの中にあるため、更新が必要な場合には1台ずつ個別に変更せねばならず、結構手間がかかっていました。それもあって、一括管理などの運用ができるシステムを探していました。
 そこで見つけたのがVID MiNT PC ridotto3注10で、これを使うと、WindowsとUNIX系OS の両方の元データをサーバー側に置いておけて、必要に応じてクライアント側にイメージ配布して使い分けられるということで、学生用54台と教員用2台の56台を導入しました。

Y:導入結果はいかがでしたか?

山田:UNIX、Windowsのどちらを使う授業でも、特に問題もなく1学期の授業が終わりました。

Y:複数のOSが使えるPCの運用で何の問題もなく、楽に管理できているというのは素晴らしいことですね。

山田:当初、管理回りではアカウント管理などで負担がありましたが、スクリプトを書いたので軽減されてきました。ユーザーからの苦情はあまり出ていませんから、うまくいったといえると思います。

Y:そうですね。今回はとても参考になる話をありがとうございました。

セキュリティーポリシーの啓蒙

注1 豊橋技術科学大学 情報処理センター
1985年からの5年間、奥山徹先生(現在、朝日大学 情報管理学科 教授)がここの助手をされており、 2000年7月号のルート訪問記で「インターネット界に貢献する人材を輩出した奥山研」というタイトルで、奥山先生を訪ねている。

注2 TSS
Time Sharing Systemの略称。CPUの処理時間を短時間ごとに区切って各ユーザーに使わせることで、擬似的に同時に複数のユーザーが使えるようにする仕組み。高価な大型コンピュータを複数のユーザーで共有し使うために利用された。

注3 SINET
国立情報学研究所(NII、National Institute of Informatics)が運営する学術情報ネットワークScience Information NETworkの略称。SINETは、日本全国の大学、研究機関などの学術情報基盤として構築・運用されている情報ネットワークで、多くの海外研究ネットワークと相互接続している。

注4 PACX
Gandalf社のデータ通信用PBX(Private Branch eXchange)製品。PBXは、構内自動交換機のことで、電話線と内線電話機の間に設置して通話や接続を管理する装置。PACXは、Private Automatic Computer Xchangeの略称とされている。電話回線を介して計算機センターの大型計算機に接続する際、まず端末をPACXに接続させ、振り分けを行った。
http://www.columbia.edu/acis/history/pacxbox.html

注5 マルチホーム接続
あるネットワークをインターネットに接続する際に、複数の上流接続を行うこと。上流接続先の1つで障害が発生した場合でも、ネットワーク外部への接続を確保できる。

注6 FDDI
Fiber-Distributed Data Interface。光ファイバを用いたネットワークで、伝送レートは100Mbps。伝送距離(最大2km)を長くできるため、キャンパスネットワークのバックボーンなど、基幹LANに使用される。

注7 ATM-LAN
ATM(Asynchronous Transfer Mode)は、データの多重伝送を固定長パケット(セル)に分割して非同期に行う方式。複数のデータを独立して伝送できるため、同期式に比べ無駄が少なく大量のデータを送れる。ATM自体はWAN向けの通信技術として標準化されたものだが、これをさらにLANに適用したATM-LANが開発された。

注8 WebCT
Webベースのコースウェア(教育ソフト)の構築・運用・管理を、統合的かつ簡単に行うためのシステム。講義ノートをオンラインで閲覧できるほか、小テストの実施および自動採点、講義資料の配布、ディスカッション用掲示板などの機能を備える。ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のMurray Goldberg氏が開発し、現在は米WebCTが開発と販売を行っている。日本語版は、梶田将司氏(名古屋大学情報連携基盤センター助教授)が開発し、株式会社エミットジャパンが商品化した。
http://www.emit-japan.com/

注9 シンクライアント
クライアント側には最低限の機能に絞ったコンピュータを用意し、利用するアプリケーションやファイルの管理をサーバー側で行うという仕組み。また、このクライアント側コンピュータを指す場合もある。

注10 VID MiNT PC ridotto3
株式会社ミントウェーブの小型・軽量ネットワークブート型ディスクレスPC。
http://www.mintwave.co.jp/

私のUNIX #24 〜山田博文さんのUNIX〜

●OS環境:Fedora Core 2、Windows XP

 私がUNIXに初めて触れたのは、大学2年のときです。所属学科の計算機室には、Convex C1-XPというミニコンがありましたが、一般ユーザーは計算機室に入室できなかったため、ガラス越しに眺めるだけでした。C1-XPへのログインには、端末室にあるPC-9801を利用していました。PC-9801に、端末エミュレータが入ったフロッピーディスクを挿入して起動させると、ログインプロンプトが現れるという感じです。OSは、4.2BSDだったかと思います。主にPascalを使ったプログラミング実習に利用しました。
 研究室に入ると、サンのワークステーションを利用するようになりました。OSは、SunOS 4.xです。その上でC言語を用いてプログラミングし、研究していました。研究室に入ったころは、ほとんどSunOS 4.xでしたが、時代の流れとともに、Solaris 2.xやFreeBSDをインストールしたコンピュータが設置されました。
 就職してからは、SUN Ultra 1上でSolaris 2.6を長く利用していました。しかし、最近は、Microsoft WordやPowerPointを使って、文章やプレゼン資料を作成することが多いため、Windowsを利用しています。また、利用機会は少ないのですが、傍らにはFedora Core 2をインストールしたPCも用意してあります。
 センター業務では、多くのOSに触れる機会がありました。IRIX、HP-UX、HI-UX、BSD/OS、Solaris、AIX、Red Hat Linux……。そのほかには、MacOSなども。
 自宅では、貧弱なPCにFreeBSD(98)やPlamo Linux/98を入れていた時期もありますが、いまはどっぷりWindowsに浸かっています。

●ウィンドウマネージャ:GNOME+Metacity

 ウィンドウマネージャを利用することになったのは、研究室に入ってサンのワークステーションを利用し始めてからです。最初はtwmでしたが、バーチャルデスクトップが使いたくてすぐにtvtwmに変更し、長く使っていました。fvwmが普及してからは、それを利用しています。初めてfvwmを見たときは、美しい画面に驚いたものです。その後、GNOMEデスクトップ環境に移行したので、Sawfish、Metacityという流れです。Pie Menu Window Manager(piewm)という、円形のメニューが開くウィンドウマネージャもありましたねぇ〜。

●シェル:Tcsh、Bash

 初めはCshを利用していました。一番付き合いが長く親しみがあるのは、Tcshです。最近はLinuxを利用する機会が増えたので、Bashを使っていることもあります。

●エディタ:Emacs 21.3、vi

 大学のプログラミング実習で習ったエディタはviでしたが、研究室に入ってからはNemacsを利用しました。アスキーの『UNIX MAGAZINE』に掲載されていた「Nemacs入門」を読んでEmacs Lispを勉強し、設定変更していました。いまでもUNIX上ではEmacs、Windows上ではEmacsライクなxyzzyを使っています。ただし、ルート業務はviです。

●そのほかのこだわり

 最近はWindows上で仕事をする機会が増えましたが、Windows上でもUNIX利用時と同じような感覚で利用できるよう、Cygwinやxyzzyをインストールしています。
 また現在でも、電子メールはUNIX上でEmacs 21.3+Mew 3.3を使って読んでいます。「このほうがウイルスに感染しにくいやろ」と学生に話していますが、昔からの惰性でUNIX上で読んでいるところもあります。最近は、Wordファイルが添付された電子メールがよく送られてくるので、結構しんどいです。

■謝辞

 このコラムを書くにあたり、古い雑誌や資料を調べ、昔のことが懐かしく思い出されました。執筆の機会を与えてくださいました、よしださんに深謝いたします。

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Last modified: Mon May 21 13:22:07 JST 2007 by Tomoko Yoshida