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1999年10月号掲載 よしだともこのルート訪問記

第55回 教室がインターネットにつながる日注1
〜広島の「ネットdeがんす」プロジェクト〜

 今回は、「ネットdeがんす」注2プロジェクト成果発表会(コラム1参照)が開かれた広島市立基町高等学校を訪ねました。このプロジェクトのメンバーである、広島大学 総合情報処理センターの相原 玲二(あいばら れいじ)先生、広島市立鈴張小学校の玉井 基宏(たまい もとひろ)先生、安田女子大学の染岡 慎一(そめおか しんいち)先生、そして、広島市立吉島東小学校の前田 真理(まえだ まり)先生を中心とする先生方から、「ネットdeがんす」および成果発表会当日に利用されていた無線LANについて、また、学校へのインターネット環境導入に関する話をお聞きしました。

■各学校のサーバーにはFreeBSDを採用

よしだ(以下Y):こんにちは。「ネットdeがんす」プロジェクト成果発表会の開催を案内していただき、ありがとうございます。まずは、このプロジェクトについて教えてください。

相原先生(以下A):このプロジェクトは、研究協力校を実際に専用線でIP接続し(図1)、サーバーの設置や運用を試みることによって、各学校がインターネット接続された際の問題点を掌握し、学校現場の教職員自身が管理すべき情報を明確化する目的で実施されました。
 小・中・高の先生方が主体となるプロジェクトですが、大学でネットワークの構築や運用に携わっている経験者として、安田女子大学の染岡慎一先生、広島市立大学の前田香織先生と私の3人も参加しました。
 '98年度は、広島市教育センターと小・中・高校8校の合計9組織を研究協力校注3として、128Kbps専用線でIP接続しました。すでにIP接続を実現していた、2つの学校(広島市立鈴張小学校注4と広島県立宮島工業高等学校)には、研究協力支援校として参加してもらい、サーバー環境の評価を実施しました。
 プロジェクトとして各学校に提供されたのは、接続回線、ルーターおよびネットワーク・サーバーでした。サーバーには、IBM互換機(Pentium MMX 233MHz、メモリ32Mバイト、ハードディスク3.2Gバイト)を使用し、OSにはFreeBSDが採用されています。FreeBSDの上で動いている主なネットワーク管理用およびサーバー・ソフトウェアは、表1のとおりです。
 '97年の後半から準備を始め、 '98年度に本格的にスタートしましたが、順調に動き出したのは'98年度の後半注7でした。それでも、すでに成果は出てきており、短期間で密度の濃い活動ができているといえます。

図1 「ネットdeがんす」ネットワーク接続図(1999年当時)
「ネットdeがんす」ネットワーク接続図

表1 主なネットワーク管理およびサーバー・ソフトウェア
サーバー提供機能 ソフトウェア名
ネーム・サーバー bind
電子メール sendmail、qpopper
メーリング・リスト FML
Webサーバー Apache
プロキシ・サーバー(キャッシュ・サーバー)注5 Squid
vNAT(Network Address Translation) ip-filter
DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)注6 ISC版dhcp
Microsoft Windowsとのファイル共有 Samba
アクセス制御、ネットワーク監視など tcp-wrapper

■ネットワーク構築には試行的実践が必要!

Y:「ネットdeがんす」をスタートされた背景を詳しく教えてください。

A:現在、小・中・高校などにおけるインターネットの利用の試みがスタート注8していますが、そのほとんどはダイヤルアップ接続です。文部省は2001年までに、小・中・高校などすべての公立学校をインターネットに接続する方針を打ち出していますが、「どういうシステムを、どのように導入するか」が決まっていなければ、実際に導入できません。
 われわれがここ数年間にわたって大学でネットワークを構築し、運用してきた経験から考えて、「運用開始の時期を決め、予算を決めて、さあやれ」というやり方ではうまくいかないと思ったことが、このプロジェクトを始めたきっかけでした。
 「インターネットに接続する」にも、モデムを使ってダイヤルアップ接続する形態から、LANを構築して外部と専用線で接続する形態までありますよね。各種サーバーも内部に置くのか、それとも外部に置くのかという選択もあります。さらには、その裏にある、「日々の管理をどうするか」も重要な問題です。そういった検討なしで、突然「インターネットに接続しましょう」では、なかなかうまく構築・運用できないことが予想されるからです。
 これまでにも、インターネットへの接続は全国的な規模で、試行的に実施されてきました。代表的なものが、 '95年度に通産省と文部省の協賛で開始された「100校プロジェクト」注9でした。これは、専用線を使い、各学校にサーバーを設置するものでした。広島県内で「100校プロジェクト」に参加して、 '95年度にIP接続を実現したのは、広島市立鈴張小学校と、広島大学付属福山中・高校の2校でした。
 もう1つが、 '96年度にスタートした、全国の約1000校をインターネットに接続しようとする「こねっと・プラン」注10で、広島県内からも多くの学校が参加しました。しかしこちらは、主にISDNを利用したダイヤルアップ接続が主体でした。
 「ネットdeがんす」をスタートさせて、実験的運用を試みる必要があったのは、学内にLANを構築し専用線IP接続でインターネットを使うときの、現場の学校での問題点が明確になっていなかったからです。

Y:つまり、「100校プロジェクト」は専用線IP接続だったが、そのころとは事情が変わってきて、これからの専用線接続にはあまり参考にならない。「こねっと・プラン」はダイヤルアップ中心なので、参考になりにくい。ということで、「ネットdeがんす」が必要だったわけですね。

A:はい。100校プロジェクトでは、専用線接続でサーバーを各学校に配置するという環境が作られました。これは、 '95年当時としては画期的な方法でしたが、まだアナログ回線(3.4KHz)による接続が主流だったために、モデムの障害が発生したり、この地区がサーバーとして導入したPC UNIXの動作が不安定だったり、OSが標準的ではなかったためにフリー・ソフトのインストールに手間がかかるという問題があったり、いまの状況とは違っていたからです。

Y:'95年当時、動作が不安定だったり、フリー・ソフトのインストールに手間がかかったというPC UNIXの、具体的な名前を聞いてもよいでしょうか。

A:PANIXという名前のPC UNIXでした注11

Y:今回は、FreeBSDを使われていますね。玉井基宏先生(鈴張小学校)がFreeBSDユーザーだと、以前からお聞きしています。

玉井先生(以下T):「ネットdeがんす」のサーバーの試作には、管理支援ソフトウェアとして株式会社ジェプロ注12のBoxQun注13を利用しています。これを利用すれば、ユーザー管理、DNSの設定、システム・ファイルのバックアップとリストア、メーリング・リストの管理などがWebブラウザを使って実施できるようになります。また、児童のアカウント登録などには、CSV形式のファイルを読み込んで一括処理もできます。
 Webブラウザ経由で各種の設定ができるのは、UNIX特有のキャラクタ・ベースの操作に慣れていない管理者でも操作が容易な点が魅力です。ただし、いくら操作が楽になっても、ネットワークについての基本的な知識は必要ですね。

Y:玉井先生は、成果発表会でインターネット・サーバーをどこに設置するかの考え方(それぞれの長所や短所)を発表されていましたね。概要を紹介していただけますか。

T:サーバーをどこに設置するかという問題は、ユーザー数、提供サービス、回線速度、使用頻度、維持コストなどを考慮して決めることになります。大きく、次の三種類の置き方に分類できます。
  1. 学校設置型
    すべてのネットワーク・サーバーを学校に置く方式で、「ネットdeがんす」や「100校プロジェクト」がこれです。長所は、授業の内容に応じて柔軟に対応でき、複数のマシンからいっせいにWebを利用する授業では、校内にキャッシュ・サーバーを置けば、アクセスがスムーズになることです。短所は、セキュリティ対策のためのサーバー・プログラムのバージョンアップなど、管理業務の負担が学校の担当者に集中しがちな点です。
  2. センター集中型
    すべてのサーバーを教育センターなどの集中管理センターに設置する方式で、利用現場の学校にサーバーがないという点では、プロバイダを利用したダイヤルアップ接続もこれに似ています。長所は、センター管理下の学校ネットワークを、専任者が一元管理できることですが、ユーザー数が増えれば管理業務の量も増え、それなりのコストが必要となります。
  3. 学校・センター分散型
    サーバーの種類によって、学校とセンターとに分散して置く方式で、クライアントとの間に頻繁なデータのやり取りが行われるメール・サーバー、キャッシュ・サーバー、DNSサーバー、Webサーバーなどは学校に置き、そのほかをセンターに置きます。
 いずれにせよ、学校にインターネットを導入する最終目的は、その環境を活用して、より質の高い教育活動を実現すること注14ですから、インターネットの維持管理が、最終的な目的になったのでは本末転倒です。そのため、各学校の現状に合わせてサーバーの設置方法も柔軟に選択する必要があるでしょう。

■広島市は無線LANによる「出前インターネット」に適した町!?

Y:成果発表会当日に利用されていた無線LANについて、詳しく説明していただけますか。

染岡先生(以下S):無線LANシステムは、ここ「広島市立基町高等学校」と「広島市教育センター」とを結んでおり、現在、ハブに自分のパソコンをつなげば、インターネットが使える環境ができています。一昨日、設置テストしたところ成功しましたので、本日、紹介することにしました(図2)。
 無線LANに興味を持ったきっかけは、ちょうど3か月前の3月13日に、私が勤めている安田女子大学で実施された、中国・四国インターネット協議会「キャンパスLAN利用研究会」でのことでした。
 そこで、高知工専の今井先生を中心とするグループから「高知市内で無線LANを構築した」という内容の発表がありました。
 これは、2.4GHzの小電力機を使うタイプで、スピードは2Mbps、型式は「iCOM BR-200」、実売価格は1ペア40万円ほどの機器で、使用するのに免許はいりません。「カタログでは、見通し1Kmまで届くと書いてあるが、高知で実験したときには、なんと6Km近く届いた」という話を聞き、「これは使えるな」と思い、さっそく大学の私の個人研究費で申請しましたが、届いたのは5月31日のことでした。
 6月11日に、山(神田山)の上にある広島市教育センターと、成果発表会会場の基町高等学校(西白島)の接続テストを試みました。この2点間は約2.5Kmあり、見通しもよくないので、相当苦労するのではないかと思っていたのですが、非常にあっさりつながり注15、拍子抜けしました。
 お互いの方向に向けて機器を置き、物理的につなぎました。そして、アンテナの位置を調整する前に、とりあえずpingコマンドを実行したところ、つながっていたのです。用意した双眼鏡や合図のための赤い旗も、必要ありませんでした。
 テストのときは、まず、どちらも室外で実施したのですが、現在は、どちらも室内に入れ、基町高等学校では窓を開けています。
 これは、いろいろな使い方があると思いますが、山の上にある広島市教育センターが見える学校なら、「出前インターネット」が可能です。常時インターネットに接続できる環境がどういうものかを体験するためにも、この無線LANによる出前インターネットは、使えると思っています。

Y:そうですよね。専用線を用意していない多くの学校でも、一時的に常時接続の環境が得られるというのは、とても便利だと思います。運動会のときだけ中継のために利用するとか、インターネットの具体的なイメージのない先生方に、使用例を示すとか……。
 広島の市内は、非常に見通しがよい気がしますが……。


S:そうですね。広島市は山に囲まれた街で、海に向かって見晴らしがよいため、無線LANの利用には適していると思います。しかも、広島市教育センターは山の上にあり、安田女子大学も小高いところにあって、このように高いところにある建物からは、多くの学校が見えます。

Y:それはラッキーですね。「出前インターネット」の活躍に期待しています。

図2 成果発表会当日の無線LAN利用図(1999年6月12日)
成果発表会当日の無線LAN利用図

■ベテラン女性教員はシステム管理に向いている !?

Y:前田先生、「ネットdeがんす」プロジェクト成果発表会の事務局のお仕事、お疲れさま注16でした。メール(コラム2)をいただいて以来、前田先生も積極的に活動されている注17ことに注目していたので、お会いできる機会を楽しみにしていました。

前田先生(以下M):私も、動くよしださんに会えて光栄です。イラストだといつも静止画ですから……(笑)。

Y:前田さんは、「ネットdeがんす」の研究協力校の1つである広島市立吉島東小学校に専用線とLANの環境を作られたということですが、もともとパソコンに興味を持っておられたのでしょうね。

M:はい。自宅には多くのパソコンがあり、家庭内LANでプリンタなども共有しています。私には、今年小学校1年生になる娘がいるのですが、物心ついたときからそういう環境にいるので、パソコンというものはネットワークされていると思っているようで、プリンタにも接続されていないスタンド・アロンのパソコンは「これは、お友だちではない」と使おうとしないほどです。

Y:前田先生が成果発表会で、ベテラン女性教員がシステム管理者に向いている理由を発表されていたのが、すごく印象に残りました。

M:「システム管理者は、管理職やユーザーを説得しなければならない場面が多い。だから、『押しが強くて、弁が立ち、けっこう頑固で……』という面が必要で、それはまさしく、ベテラン女性教員」 といったものですね。

Y:なるほど……とうなずいてしまいました。人望の厚いベテラン女性教員も多いはずですし、「初心者の気持ちになって、親切に教えられる」という側面もあると思うんです。
 話は変わりますが、小学生たちがFreeBSDを使うことはないのですか。


M:通常は、FreeBSDが動いているサーバーはさわらせませんが、昨年度の学級(4年生)の児童がWebを見るときにクライアントが不足して、FreeBSDがインストールしてある私のノート・パソコンを使ったことがありました。fvwm95を使っていましたし、Netscape Communicatorを起動させてしまえば、あとはなんとかなりますから、問題はありませんでした。
 使った児童は「このWindows変。英語だし、スタートをクリックしたら、鬼が出てくるよ。」と、最初は不思議がりましたが、「それが、でーもんちゃんよ」と教えたら、喜んで使っていました。

Y:もう1つ、学校のシステム構築や管理の苦労を、先生だけが抱え込むのではなくて、ネットワークに詳しい保護者の方とも連携して注18、子供たちによりよい環境を与えていけるといい……といわれていたのも、もっともな意見だと思いました。

M:先生どうしでコミュニティを作って、支援し合うことの大切さや力強さを、「ネットdeがんす」プロジェクトで強く実感しました。それを、先生どうしだけではなく、保護者の方ともうまく連携できれば素敵だと思っています。実際、担任している学級の保護者の中には、ネットワークのスペシャリストもいらっしゃいます。
 ネットワーク環境を使っていく上で大切なことは、「それを利用して人とコンピュータのつながりを育てる」という意識を持つことだと思います。UNIXネットワークから発展したインターネットは、人と人が結び付くことで発展注19してきたものですから。

Y:そうですね。「時期を決めて、お金をこれだけかけて」で、簡単に実現するものではないということを、みなさんからお話を聞いていて痛感しました。「ネットdeがんす」の今後のさらなる発展を、お祈りしています。今日はみなさん、ありがとうございました。

■参考文献

  「ネットdeがんす」プロジェクト成果発表会論文集

以外に簡単だった出前インターネット

コラム1 「ネットdeがんす」プロジェクト成果発表会について

  1. 日時 1999年 6月12日(土) 午後1時〜5時
  2. 場所 広島市立基町高等学校視聴覚教室 広島市中区西白島25-1
  3. 主催 CSI(中国・四国インターネット協議会)
  4. 後援 広島県教育委員会、広島市教育委員会、呉市教育委員会
  5. 協力 中国通信ネットワーク株式会社、日商エレクトロニクス株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社 他
  6. プログラム
    1. 開会行事 あいさつ  CSI会長  吉田 典可
    2. 「ネットdeがんす」概要説明 広島大学 相原 玲二
    3. 実践事例報告
       (1)「地域素材を教材化した共同学習 −パスワード付ホームページを利用して−」
          呉市立三坂地小学校教諭  小川 雅史
       (2)「学校にインターネットがやって来て・・・」
          広島市立古田中学校教諭  渡邉 俊二
       (3)「理科においてのインターネットの活用例」
          広島市立基町高等学校教諭  池本 博司
    4. これからのネットワーク活用のために
       (1)「インターネットの歩き方」
          広島市立井口明神小学校教諭  杉浦 透
       (2)「校内ネットワークはじめの一歩」
          広島市立吉島東小学校教諭  前田 真理
       (3)「学校にサーバを置く三つの理由(わけ)」
          広島市立鈴張小学校教諭  玉井 基宏
    5. 閉会行事 広島市教育センター指導主事  板敷 憲政
詳しくは次のサイトを参照のこと。
http://www.csi.ad.jp/school/gansu/seika/index.html
http://next1.yasuda-u.ac.jp/nagatuka/gansu/

コラム2 前田先生から届いたメール

前田先生からは'98年に、次のようなメールをいただいて以来、メールを交換するようになった。
「UNIX USERはここ2年半の読者ですが、毎月、まず「ルート訪問記」から読んでいます。


 このプロジェクトには、広島市立大学前田香織先生や広島大学工学部4年(当時)石川真由美さん、そして私と3名の女性が参加してます。サーバーOSはFreeBSDでLinuxではありませんが、女性が頑張っているということで、ぶしつけにもお知らせしたこと、お許しください。
 小学校全体の6割を占める女性教員が、ネットワークを積極的に活用するようになるかどうかが、子供たちに大きな影響を与えます。私もささやかですが、子供たちにネットワークの楽しさを伝える環境を生み出すよう頑張っていきたいと思います。


これからもルート訪問記の記事、Webの方を楽しみにしております。そして、女性ユーザーを励ます活動をどんどんなさってください。」

注1 教室がインターネットにつながる日

「中国・四国インターネット教育利用研究会」の活動内容は、1998年に北大路書房から発行された、書籍『教室がインターネットにつながる日』(編者:深田昭三・玉井基宏・染岡慎一)に、詳しくまとめられている。実際の学校での活用例とネットワークの基礎の両方が分かる書籍として、小・中・高校でのインターネット活用を模索する先生方の必読書となっている。今回は、その書籍のタイトルをそのまま使わせていただいた。

注2 ネットdeがんす
「ネットdeがんす」は、広島地域における初等中等教育インターネット利用研究プロジェクトの名称。
http://www.csi.ad.jp/school/gansu/参照。
「がんす」とは、広島県の一部地域で使用される方言で、「です」または「でございます」に相当する。が、最近では、広島県でも、あまり耳にしなくなったそうだ。

注3 合計9組織の研究協力校
広島市教育センター、広島市立長束小学校、広島市立吉島東小学校、広島市立井口明神小学校、呉市立三坂地小学校、広島市立古田中学校、広島市立牛田中学校、広島市立基町高等学校、広島県立呉工業高等学校。

注4 広島市立鈴張小学校
広島およびその周辺地域では、 '94年に広島市立鈴張小学校が「中国・四国インターネット協議会(CSI)」へUUCP接続したのが、小・中・高校の中で最初だといわれている。

注5 プロキシ(キャッシュ)サーバー
Webサーバーとクライアントとの間に設置され、クライアントがWebサーバーにリクエストしたデータを中継するとともに、そのデータをハードディスクに記憶しておくシステムである。インターネットへのトラフィックを軽減できる。Squidがその定番ソフト。

注6 DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)
TCP/IPを利用して通信する場合には、IPアドレスやゲートウェイのIPアドレスなどを設定しなければならないが、DHCPを用いることでこれを自動化できる。あらかじめDHCPサーバー上にIPアドレスやデフォルト・ゲートウェイのIPアドレスを登録しておくことで、クライアントは起動時にDHCPサーバーへアクセスし各種設定を取得する。

注7 順調に動き出したのは'98年度の後半
開催された主なミーティングは、 '98年8月に2回、10月、12月、 '99年1月、 '99年3月、そして、6月の成果発表会の実施である。

注8 インターネットの利用の試みがスタート
日本の小・中・高校の公立学校のうち、 '97年5月の時点で9.8%、 '98年3月では18.7%、 '99年3月では35.6%が、インターネットに接続されたという調査報告がある。

注9 「100校プロジェクト」
通産省と文部省とが協力して全国111の学校などに必要な設備を置き、インターネットを学校教育に活用しようとした試み。情報処理振興事業協会(IPA)と、財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)が主催団体。当初、2年の予定でスタートしたが、その後、「新100校プロジェクト」に引き継がれ、 '98年度をもって終了した。詳細は、http://www.edu.ipa.go.jp/100school/参照。
鈴張小学校はこのプロジェクトに参加して、IP接続となった。

注10 「こねっと・プラン」
「こねっと・プラン推進協議会」は、21世紀を担う子供たちが国際感覚を持ち、創造力に富んだ人材に育っていくことを願い、その趣旨に賛同し協賛する民間企業・団体、個人の共同社会貢献事業として実施されている。具体的には教育現場におけるインターネット接続環境構築を支援するとともに、学校教育におけるインターネットの利用促進に貢献することを目指している。

注11 PANIXという名前のPC UNIXでした
ちなみに、 '95年当時名前をよく耳にしたPC UNIXは、次のものであった。OpenServer、Solaris for x86、UnixWare、NeXTSTEP、PANIX、BSD/OS、Linux、COHERENT、NetBSD、FreeBSD、386BSD(98)、MachTen、NetBSD/mac68k。

注12 株式会社ジェプロ
ジェプロ(JEPRO)は、Japan Educationsystem PROductsの略である。ネットワークを教育に活用するソフトウェアを開発している京都の会社。詳しくは、 http://www.jepro.co.jp/参照。

注13 BoxQun
BoxQunは、ジェプロが開発した学校向けインターネット・サーバー。PC UNIX(FreeBSD)を利用し、その上に各種のネットワーク管理用のソフトウェアをパッケージ化している。イーサネット・カードを2枚差しにしたマルチホーム・マシンなので、1台目をファイアウォール役にして、2台目をその内側に設置するという使い方もできる。
BoxQunについては、 '99年3月号のルート訪問記で詳しく紹介している。

注14 その環境を活用して、より質の高い教育を実現すること
成果発表会では、呉市立三坂地小学校の 小川雅史先生、広島市立古田中学校の渡邉俊二先生、広島市立基町高等学校の池本博司先生が、それぞれ、今回構築した「専用線+LAN環境」の環境を使って実施した教育の成果を発表された。

注15 あっさりつながり
そのときの様子が、Webページで紹介されている。
http://next1.yasuda-u.ac.jp/gansu/ce2moto/

注16 事務局のお仕事、お疲れさま
成果発表会の会場となった基町高等学校も研究協力校の1つ。基町高等学校は広島城の目の前で、教室やトイレの窓の真ん前がお城だった。そして、歩いて数分の場所に広島球場があり、広島の中心街からも徒歩の距離であった。
この高校の教諭 難波 太先生が「ネットdeがんす」プロジェクトの一員で、発表会当日は、事務局の仕事に活躍されていた。お疲れさまでした。

注17 前田先生も積極的に活動されている
前田真理先生は、前述の書籍『教室がインターネットにつながる日』の執筆者のお一人でもある。私はこの本を見て、京都にある北大路書房に「私たちもインターネットの本を出してほしいんですけど……」と交渉し、北大路書房から8月に『学校で教わっていない人のためのインターネット講座』を発刊できた(http://www.tomo.gr.jp/Internet/参照)。
 また、 '99年8月8日に、群馬県前橋市で開催された「ネットデイサミットin群馬」では、前田真理先生が「ネットdeがんす」プロジェクト代表としてパネル・ディスカッションに参加された。

注18 ネットワークに詳しい保護者の方とも連携して
アメリカなどでは、趣味でPC UNIXのネットワークを自宅に構築しているような保護者が、わが子の通う学校のネットワーク構築にひと肌脱ぐのは珍しいことではない。自分の子供が通っていなくても、地域の学校にボランティアで協力する住民も多いという。

注19 人と人が結び付くことで発展
何かをきっかけとして、同じことに興味を持つ人どうしが結び付くことは多いが、その1つが、毎年8月に北海道の稚内北星学園短大で開催される「サマースクール in 稚内」の受講者を中心としたコミュニティであろう。受講者を教師に限っているわけではないが、8月という開催時期と、学生と小中高の教員は受講料が半額になるため、何度も参加する方も多い。筆者も'96年に受講・取材し、受講者のメーリングリストに参加している。

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Last modified: Mon May 21 14:47:32 JST 2007 by Tomoko Yoshida