「Linux女性ユーザの会」(LLUG=えるらぐ)のメンバとして、 以下の文章を書きました。


1995年当時の、私とLinuxの関係

Written by よしだともこ(1998.7.20)

『Linuxの進化の早さ、恐ろしや…』

今でこそLinux大好き人間の私ではあるが、Linuxと出会った当時の印象は、 決してよいものではなかった。

最初に私にLinuxのすばらしさを語ったのは、佐渡秀治氏だった。 それは1995年の夏、私がUNIX USER誌の連載『ルート訪問記』の取材で、 佐渡氏を訪問した時だった。当時、私の身近な人の中には、不思議なほどに、 Linuxユーザーがいなかったのだ。ちなみに私はその頃、 386BSD(すでにちょっと時代遅れになっていた)の入ったノートパソコンで、 原稿を書いていた。

佐渡氏との事前のメールでの打ち合わせで、「Linuxのことを話し合いましょう。」 ということになっていたというのに、Linuxのことをまったく予習せずに、 佐渡氏の前に現れてしまった私は、結局、 Linuxの歴史からLinuxの現在の状況までの何から何までを、 教えてもらうことになってしまった。熱心なLinux教徒である佐渡秀治氏は、 私があまりにLinuxについての基本的な質問しかしないので、たぶん、 あきれていたに違いない。

その後、その取材記事をまとめたのであるが、先に急いで掲載したい記事が、 別にいくつかあったため、実際に、その記事を雑誌に掲載できたのは、 それから半年近くも後の、1996年2月号(1996年1月8日発行)であった。 (偶然にも、この記事の版下がUNIX USER編集部から私のところにFAXされた日、 1995年12月*日、その時、来日されていたLinusさんが、 UNIX USER編集部を訪れていた。)

この記事の中には、以下のような文章があった。

『Linuxの長所は、「導入のしやすさ、サポートの早さ、軽さ」ですね。逆に、 短所は、ネットワークのパフォーマンスが悪いことでしょう。たとえば、 NFSの性能をFreeBSDと比べると、数分の一のパフォーマンスになると思います。』
雑誌が発売された直後から、この文章に関して、「そんなことはない。 それは昔の話で、今は、ネットワークのパフォーマンスは、FreeBSDと比べても、 遜色はない!」というメールが、Linux Userの方々から、 私の元にバンバン届きはじめたのだった。

佐渡氏にそれを連絡すると、「Linuxの進化は早いですから、当然でしょう。 取材に来られたのは夏で、その時からは、半年の年月が経っていますから。」 との返事。『「半年経てば、状況が変わって当然」と言いきれるなんて、 Linuxの進化の早さ、恐ろしや…』とか思いながら、私は、 次のような訂正記事を次号に出してもらうことにしたのだった。

『2月号の記事の中で、「Linuxはネットワークのパフォーマンスが悪い。 たとえば、NFSの性能をFreeBSDと比べると、 数分の一のパフォーマンスになると思います。」と書きました。しかし、 Linuxは、それを支える多くの信者たちによって飛躍的な進化を続け、 いつのまにか商用UNIXをしのぐ性能と安定性を得ています。 ネットワーク回りについても同様で、 すでにLinuxは性能面においてBSDと肩を並べるまでになっています。ですから、 これからLinuxを導入する人は、 ネットワーク回りのパフォーマンスをあまり心配する必要はありません。

また、LinuxのNFSのバッファ・サイズは、デフォルトでは1Kバイトですが、 mountオプションで、

size=8192,wsize=8192
のように、バッファ・サイズを指定すれば、大きくすることができます。 そうすれば、当然、パフォーマンスも上がります。』
今思えば、私のLinuxとの出会いは、その後、 多大な影響をあたえられることになる、佐渡氏との出会いでもあった。

しかし、当時の私は、『Linuxの進化の早さ、恐ろしや…』ついでに、 『Linuxユーザの方々、恐ろしや…』という印象を持っただけで、 その後しばらくは、Linuxのことをほとんど忘れた日々を送ったのであった。 が…。

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Tomoko Yohsida, Aug.5, 1998

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