まえがき

  最近、LinuxとFreeBSDに代表されるフリーのUNIXの人気が高まっています。この本 を手にされた方の中にも、「ウチのパソコンの上でも動いているよ。」という方がい らっしゃるに違いありません。

  私の場合、「仕事は?」と聞かれて、「大学や研究機関を中心に使われている、ネッ トワーク機能に優れた、特別なコンピュータに関するドキュメントを書くこと。」と いう風に答えていた時代が長いので、今のUNIX人気をとてもうれしく思っています。 そして、UNIXになど興味がないと思っていた人から、「Linux (あるいは FreeBSD)を インストールしたよ。」といった言葉を聞くと、とたんに夢中になってしゃべり始め てしまう傾向にあります。

「日本語変換には何を使っているの? 私が好きなエディタはね…。」

  自分が話したいことをひと通り話し終って気がつくのは、「LinuxやFreeBSDをイン ストールした。」という人の中には、その上でツールを使い込む以前の状態でストッ プしてしまっている人がいるという事実でした。最初から、「ネットワークのサーバ としてしか使わない。」というポリシーを持っている人ならいいのですが、「気軽に 使えるなら、使ってみようと思ったんけどね・・。」と言葉を濁される方も意外と多 いのです。

  そう言われてあらためて考えてみると、LinuxやFreeBSDというのは、日本語の入力 環境一つとっても、環境を整えるには苦労する場面が多いように思います。企業や大 学でUNIXワークステーションを使う場合には、環境を設定してくれる管理者がいる ケース多いために、環境設定の部分は知る人ぞ知るの知識となってしまっています。 しかし、自分の家でLinuxやFreeBSDをインストールした場合には、すべて一人で設定 しないといけません。私自身にしても、人に聞いたり、雑誌を読んだりして、けっこ う苦労して環境を整えていることが多いのです。

  それは苦痛でもあると同時に、楽しい作業でもあります。何でつまづいていたのか がわかってくると、本当に楽しくなってくるのです。一般的に、どんな作業でも、カ ラクリがわかってくるにつれて、苦痛が減って楽しくなってくるものでしょうけど、 すべてがオープンになっているLinuxやFreeBSDについては、特にその傾向が強いよう に思います。そんなことを背景に、この本は、LinuxやFreeBSDを使うにあたって、 「まず日本語環境を整えないといけない!!」という、重い宿命をせおった(?)、日本人 ユーザに、「なるほど。そういうカラクリなのね。」と、納得しながら読んでもら えるような内容の本にしようというのが、著者たちの考えでした。そうすれば、環境 構築の作業がどんどんと楽しくなるに違いないからです。

  したがって、この本の主な対象読者は、「インストールを終えて、さぁ使おう!」 としている方々ですが、すでに環境の構築がある程度終っている方にも、「なるほど。 そういうことだったのか。」と、興味深く読んでいただける内容に仕上げたつもりで す。

  具体的には、「日本語の表示」「日本語の入力」「日本語の印刷」という3本柱を 中心に、その前には概要を置き、その後ろには関係するツールなどの紹介を置いてい ます。そして、付録の最後には、「日本語の文字コード」の説明も加え、付録CD-ROM の中には、環境構築に役立つツールを多く揃えています。

  なお、2人の著者のおおまかな執筆分担は、私が「日本語の入力」の章と付録を担当 し、佐渡秀治さんが「日本語の表示」、「日本語の印刷」を担当され、残りの章は、 2人で相談しながら執筆していきました。(より詳しい分担は、「あとがき」参照。)

  この本が、多くの Linux/FreeBSD ユーザーの手元に届き、愛されることを願って います。Linux/FreeBSD の日本語環境は、偉大な方々のおかげで手軽にインストール できる状態になって配布されています。ボランティアとして活躍してくださっている、 多くの方々に感謝しています。特にPJEの制作メンバーの方には、大変お世話になりま した。そして、この本の執筆、編集作業を応援し続けてくださったすべての方に感謝 したいと思います。

#でもきっと、私が一番感謝しないといけないのは、この本の共著者の佐渡秀治さん と、編集の渡辺淳子さんなんでしょうね。お疲れ様でした。& ほんとうにいろいろと ありがとうございました。

1997年12月
よしだともこ


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